17日付Defense-Newsが「日本は東シナ海監視を拡大」とのタイトルで記事を掲載し、駐ワシントン防衛駐在官へのインタビューを行っていますのでご紹介します
新たな事実が明らかになったわけではなく、記者の理解が間違っている部分(誤った説明をした可能性も)も有るように思いますが、米国駐在とは言え防衛駐在官の発言が直接配信されることは極めてまれで、しかも現役制服組にとっては「地雷が一杯」の尖閣や東シナ海に関する発言と言うことで、「声援」の意味を込めご紹介したいと思います
インタビューに答えているのは「山本まさし大佐」で、「Col.」との表記になっており、陸上自衛隊をアピールしているので陸自の方かも知れません
3月28日に与那国で活動を開始する陸自部隊や、2013年に承認された南西諸島方面での「multi-step Japanese response」についても語っています
17日付Defense-News記事によれば
●17日、在ワシントン日本大使館に勤務する駐在武官(military attaché)の山本まさし大佐は、日本は尖閣諸島周辺の東シナ海で監視ネットワークを拡大し、新たなレーダー監視基地を3月28日に接続すると語った
●同大佐は「この付近は力の空白エリアだ」、「北朝鮮の活動や、中国による頻繁な領海侵犯を受け、日本がより良く対応するため、情報収集能力を強化する必要があると考えている」と語った
●山本大佐は、尖閣周辺の領海12マイルを中国艦艇は侵犯していないが、たびたび200マイルのEEZ内で活動していると述べ、「中国の沿岸警備隊である海警が継続的に尖閣諸島周辺海域に侵入している」、「中国側は活動限度の敷居を見極めているのだと思う」とも語った
●また、今のところ中国海軍や「海警」が尖閣諸島への上陸を試みる兆候はないが、漁民を装う海上民兵に言及しつつ「漁民が上陸したことはある」と説明した
●尖閣諸島の南にある与那国島に新たな監視基地が設置され、配備されるレーダーや光学センサーにより約200マイル日本の監視網を拡大し、これまでの九州・沖縄・宮古島のラインを延伸することになる
●山本武官は、与那国等の施設が恒久的なもので、兵士のための宿舎等も設置されていると語った
●また日本は、本島と沖縄の中間にある奄美諸島への兵力展開を進めており、「将来は約600名規模の部隊が配置されるだろう」と同武官は語った。しかし尖閣諸島に部隊を配備する計画はないとも付け加えた
●尖閣諸島への部隊配備に関し「もし日本がそうすれば、緊張を高めることになる」と山本大佐は述べ、「エスカレーションは望んでいない。しかし与那国島には約1800名の住民がおり、また尖閣を監視するネットワークを拡大してくれる」と説明した
●山本大佐は緊張状態が高まった場合の対処について、2013年に承認された「multi-step Japanese response」を説明し、「Phase Zero」が上記の監視ネットワークでの警戒だと述べた
●緊張が高まった際の「Phase One」対処として、陸上自衛隊の歩兵中隊、迫撃砲中隊、新型戦闘車両中隊で構成される緊急展開部隊の編制をあげ、
●島が敵に占領された「Phase Two」では、領土奪還のため船舶で着上陸部隊を派遣する計画だと山本大佐は述べた
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記事は「Yamamoto noted that Chinese ships have not crossed the 12 nautical mile territorial limit around the Senkakus」と書いていますが、山本大佐は恐らく、中国海軍艦艇は領海侵犯していないと言ったのだと思います。
また、「2013年に承認されたmulti-step Japanese response」とは、平成25年に閣議決定の新防衛大綱で示され、平成30年度末までに新編される予定の「水陸機動団」や「即応機動連隊」を活用した対処を表現したものと思われます
更に「この付近は力の空白エリアだ:This is kind of a power vacuum area」は、同じく新大綱の表現「自衛隊配備の空白地帯となっている島嶼部」を表したものと考えられます
ほとほとさように、海外に対する日本からの正確な国防関連情報発信は難しく、不足している状況です。最前線の皆様には頑張って頂きたいですし、「東京の郊外より・・・」で海外軍事情報の流れを感じて頂き、巧みな「情報発信」にご活用頂きたいと思います
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「海上民兵について」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-04
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「外務省顧問が尖閣問題を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-31
RANDの研究「尖閣に米国は手を出さない方が賢明」
→http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45849