英国のEU離脱が決定した日に、米空軍がアクションを起こしたのは偶然でしょうか? 気になります・・・
24日付Defense-Newsが独占スクープとして報ずるところによれば、同日、米空軍省の調達担当幹部であるArnold Bunch中将が国防省F-35計画室に対し、問題解決が遅れている英国製の射出座席の代替として米国製を採用した場合の価格や計画全体への影響を問うレターを出した模様です
同中将はあくまで、今後の試験で現英国製座席に追加の問題が発生した場合を想定すれば、代替座席にした場合の影響を把握しておくことは自然で必要なことだとの姿勢で、単に質問レターを出しただけだとの態度ですが、現在問題になっている安全や操縦者のリスク低減を重視していると語っており、相当の思いが背景にある模様です
英国「Martin-Baker製」射出座席の問題は、体重約62kg以下の操縦者が低速で緊急脱出した場合、余分な回転で操縦者の首に危険な力が加わることで、昨年10月に試験で発覚しました。
現在、ヘルメットの重量軽減や操縦者の頭を支えるプレートを追加する等の対策が検討実施中ですが、座席本体への対策に英国企業があまり積極的でないことに、大口顧客の米空軍は不満なようです
もうひとつのイライラ原因は、米空軍のA-10s, F-15s, F-16s, F-22s, B-1s、B-2sに座席を提供している米国の「United Technologies社」が、英国製で発生している問題対策がなされている「ACES 5」座席を提供できるのに、F-35製造のパイを英国にも与えるため英国製座席が選ばれたような「節」があるからのようです
同中将は現時点で何もお話しできることはなく、具体的に米国製座席の使用承認を求めたり、機体の変更を求めたりは決してしていないと強調していますが、質問への回答が国防省F-35計画室から得られたら、なんらかお話しすると語っています
英国はF-35製造の15%を担っており、24000名分の仕事を生み出しています。仮に米軍だけが米国製座席を使用することになれば、他国のF-35価格は上昇し、仕事を失う英国は何らかの補償を求めるだろうと専門家は見ているようです
いくつかBunch中将の発言をご紹介
●米空軍は国防省F-35計画室に、米国製座席の承認を求めたわけではなく、機体仕様の変更を求めたわけでもない。価格や必要な期間や計画全体への影響についての情報を求めただけである
●今後英国製座席への試験の中でさらなる問題が発覚し、別の道へ進みたいと考えた場合に備え、米国製の「ACES 5」座席を承認するのに必要な期間や価格を把握しておきたいのであり、穏当な行動だと信じている
●米空軍はF-35の最大の利用者であり、質問レターを出した理由は安全とリスク低減のためである。我々はすべての条件をカバーする射出座席を持たねばならない。すべての操縦者をカバーし、脱出できるものを操縦者に提供したい
●英国製座席にどれだけ試験が残っているかを把握していないが、追加で問題が発生した場合のために必要な情報は把握しておきたいし、前進するために検討の材料が必要だ
●(なぜ今になって質問レターを出したのかとの質問に対し、)もっと早くできたかもしれない。指摘には反論しない。しかし、潜在的なリスクに備えるため、今の時点で行動をとるのは自然なことだと思う
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もう一度・・・英国のEU離脱が決定した日に、米空軍がアクションを起こしたのは偶然でしょうか? 気になります・・・
まだ24日金曜日に始まったばかりのゴタゴタですが、英国のEU離脱とかも絡んで、ますます波乱含みのF-35計画です
英国のEU離脱の激震に比べれば、F-35問題など小さな事象でしょうが、一つの切り口として、また日米同盟の行方とあり方を考える「ケーススタディー」として、今後も生温かく見ていきたいと思います
F-35の射出座席問題
「座席対策は2018年までか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-09-1
「責任譲り合い:F-35射出座席」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-17
「F-35軽量操縦者が飛行停止」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-02
F-35の主要問題や課題一覧
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17