カーター長官が議会で議会を大批判

2016-9-22.jpg22日、カーター国防長官とダンフォード統合参謀本部議長が上院軍事委員会で証言し、10月1日から開始の2017年度予算が未成立で、8年連続暫定予算になりそうな状況を嘆き、不毛で行政の混乱を招いているねじれ現象で党派間の妥協が出来ない議会を、皮肉たっぷりに厳しく批判しました
カーター長官も各軍種のリーダー達も繰り返し述べてきたことですが、強制削減を暫定措置(continuing resolution)の繰り返しで凌いでいる予算状況では、長期的な計画が立てられず戦力の維持向上に大きな支障をきたしている点や、議員の選挙区防衛のため基地の統廃合が進まない点等を訴えています
同席のダンフォード議長も厳しい脅威に立ち向かう部隊の人員不足や訓練や装備開発費の不足を訴えましたが、ロシアが一番の脅威とか、ISILが米軍等に対し「化学兵器砲弾」を打ち込んでいる状況も証言しています
カーター長官は3つの問題を指摘
2016-9-222.jpg●米軍が「空虚な軍」とならないよう、議会には超党派的な合意により強制削減の問題を解決して欲しい
●2017年度予算開始まで8日間となった現状では暫定措置にならざるを得ないのが現実だが、暫定措置の繰り返しで対処している現状は、長期計画を妨げ、同盟国等との関係を妨げ、敵を増長させ、軍需産業の非効率を招く。
●議会が我々を助けるために出来ることは3つある。1つはこの予算の不安定さと見通しの無さを解消すること、2つは細部への介入と過剰な規制をなくすこと、3つ目は必要な改革を妨げないことである
●(予算の中で優先する項目は何かとの議員からの質問に対し、皮肉たっぷりに、)強制削減に向かうような措置や超党派の合意を遠ざける予算措置を支持することは出来ない。また、国防省行政の安定性を犠牲にするような措置や前線兵士の必要なものを削減する措置にも賛成できない。更に、優先度の低いことに予算を付けることも困る
●強制削減に突入するようなことは、これら全ての支持できない事を招くと繰り返し繰り返し証言しておく(again and again and again)
ダンフォード議長:ロシアが一番の脅威
Dunford2.jpgロシアが最大の問題を提示しており、かつ潜在的にも米国の安全保障にとって最大の脅威である。また、ロシアの核戦力、サイバー戦能力や水中戦能力からそう考える。またウクライナやグルジアでのロシアの作戦形態も我々を懸念させる
●(ロシアのシリアでの活動に関して、)19日にシリア内で国連関係者の車列を爆撃したのは間違いなくロシア軍である。
●(シリア内での活動に関するロシアとの協力について、)我々にはロシア側と情報共有する意志は全くない
ISILが米軍にマスタード化学砲弾を使用
20日にISILが、イラク北部に所在していた米軍に対し、マスタードガス弾を用いた。びらん剤系のマスタードを砲弾に詰めたものであったが、投射手段が適当でなく、我が方にけが人等はなかった
ISILがマスタード砲弾を米軍やイラク軍やクルド人に用いたのは初めてではないが、それほど深刻な懸念材料ではない。9月12日には、ISILの化学兵器保管庫を米軍が攻撃して破壊したところである
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以前オバマ大統領は、「シリアで化学兵器が使用されたら・・」と敷居を設けて米国に対応を変えると発言し、化学兵器が使用されても動かずに非難を浴びましたが、今では米軍に化学兵器が使用されても「対ISIL戦線異状なし」の模様です
congress.jpgお役目とは言え、文民統制下のダンフォード議長は、マスタードガス弾を「moderate level of concern」と評価せざるを得ない辛い立場です。
議会による国防省改革に関する勝手な動きや過剰な規制、ホワイトハウスやNSCによる軍事作戦への細部介入をなくして欲しいと「公言」し、議会には議員の私利私欲や選挙区への利益誘導による「基地の統廃合」や「不要老朽装備の破棄」が進まないストレートに訴えています。
カーター長官の発言は、政権交代が5ヶ月後で、自身の任期もそれまでとの「悟りの境地」とは言え、あまりにも直接的な発言です。最近は、何でもありな米国社会です。
関連の記事
「議員の国防省改革案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-30
「先制攻撃:国防長官の改正案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-06
「長官が2017年度予算案説明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-03

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