1日付米空軍web記事が、8月31日までの約2週間、米空軍F-35が過去最大規模の14機でウィスコンシン州に機動展開し、海軍のFA-18やEA-18G電子戦機等と本格紛争を想定した航空作戦演習「Northern Lightning」に参加して所望の成果を上げたと報じています
8月2日、1個飛行隊の僅か12機で堂々と初期運用態勢IOCを宣言した米空軍F-35ですが、「まだ幼児段階:in its infancy」で「まだ改善すべき点が残っている:still has some maturing left to do」と本演習参加の飛行隊長が率直に語っている段階です
また、F-35若手操縦者が第4世代機との空中戦訓練を振り返り、「ステルス機は敵に発見されないからすごい」と素直に驚きを表現しているところは、無邪気で米空軍らしいです。
まぁ、とりあえず米空軍F-35の成長過程をご紹介します
1日付米空軍web記事によれば
●第33戦闘航空団第58戦闘飛行隊の14機のF-35は、Volk Field空軍基地に展開し、約2週間の航空作戦演習「Northern Lightning」に約150名の人員と共に参加した。
●同演習間、F-35部隊は攻勢的制空作戦や敵防空網制圧と破壊、地上部隊支援のための精密爆撃を138回の飛行で行い、24発の誘導爆弾GBU-12を投下し、仮想敵機を110機撃墜した
●同演習にはF-35以外に、米空軍のE-3空中管制機とF-16、米海軍のFA-18とEA-18G電子戦機が参加し、F-35と攻撃パッケージを組んだり、F-35の敵役として行動した
●また整備部隊も、母機地から離れた装備や人員が不十分な環境で、演習間の高い飛行頻度要求に答えて航空機を準備し、弾薬の搭載を円滑に行った
●F-35の第58戦闘飛行隊長Brad Bashore中佐は、「F-35はその支援部隊も含め、まだ改善すべき点が残っている」「F-35Aは既に必要な能力を具備しており、我々の敵の恐怖となるはずだ。まだ幼児期にあるが、演習間に戦闘態勢にある事を示した」と語った
●F-35操縦者のMark Schnell大尉は、「演習によりF-35への信頼が増した。無敵だと信じることは難しいことだが、4世代機を相手に戦うと、宣伝されているように恐るべき能力を発揮する。我々の任務遂行を容易にしてくれる」と語った
●米海軍EA-18G電子戦機の電子戦士官として参加したAustin Kennedy空軍大尉は、「F-35は、4世代機が手に負えない最新の脅威環境下での訓練を可能にしてくれる」、「ステルス性を持つアセットは、電子戦機の電子妨害効果を高めてくれる」と演習を振り返った
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「4世代機を相手に戦うと、宣伝されているように恐るべき能力を発揮する」とはその通りでしょうが、今後米空軍が対中国で向き合うA2AD環境下では、そういう空中戦環境に至らない(中国側が避ける)可能性が高く、また高度で濃密な中国防空網でステルス機も盤石でない点が、米空軍上層部の悩みである点も若手には学んで欲しいところです
「まだ幼児段階」で「まだ改善すべき点が残っている」とのF-35飛行隊長発言は、F-35の海外売り込みに全力投球の米国防省として「許容範囲の限界点」かも知れませんが、現場を預かる責任者の正直で真摯な取り組みを表しているようで好感が持てます
日本側関係者にも、真に日本のことを考えた上での、限界点発言を期待したいものです。
米空軍の将来制空アセット検討
「2028年IOCを現実的目標に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08
「2030年検討の結果発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-02
「NG社の第6世代機論点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-17
「CSBAの将来制空機レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15-2
F-35の主要課題
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17