売り込み先行、試験後送りのつけが今・・・
更に550億円の追加開発経費を要求へ
7日付米国メディアが一斉に、飛行中の米海兵隊F-35で兵器搭載庫から火災が発生したと報じ、事故が2週間以上前の10月27日に発生していたと報道しています。また11月に入り、米国防省がF-35開発経費の更なる増額を要求することが明らかとなり、議会から厳しい声が上がっています
幸い、当該機は母基地である南加州のBeaufort海軍航空基地に無地たどり着き、パイロットも「長引く怪我はない:no injuries sustained」との事ですが、「原因究明中」で「分かり次第お知らせする」と海兵隊航空団の報道官は語るに止まっています
一方で同機が所属し、20機のF-35Bを保有する「第501攻撃訓練飛行隊」は、この火災事案後も飛行や訓練を継続している模様であり、日本の安全感覚からすると良く理解できない状態です
火災による機体へのダメージも精査中のようですが、米海軍の安全部局は本事案を2億円以上の損害が発生した場合に当たる「Class A mishap」に分類しているようです。
米海兵隊のF-35Bは、来年1月に岩国へ海外初展開を計画しており、先日は順調な着艦試験の様子をご紹介しましたが、無理矢理運用開始宣言のドタバタの余波か、不穏な事案が発生しました
垂直離着陸型のF-35Bでの火災は初ですが、空軍型F-35Aは原因未確定の9月23日のエンジン始動時の火災事故のほか、全機が飛行停止になった2014年の事案など、それなりに前科を抱えており、特に9月23日の機体尾部からの火災は、全く続報無しの不可解な状況が1ヶ月以上続いており、プンプン臭います。
F-35に関連する火災事案
●2016年9月23日
日本の1号機の受領式典が行われていた当日、別の基地で飛行訓練のためエンジンを始動したF-35A型機が尾部から火災を起こし、パイロットが慌てて脱出。けが人等無し。米空軍参謀総長は10月4日、「事故調査チームを派遣し、しっかり原因を究明する。まだ調査過程にある」と発言したが、その後1ヶ月経過しても全く追加情報無し
●2014年6月
F-35A型が離陸発進準備中に火災を発生。全てのF-35を飛行停止にして事故調査を行う。調査の結果、エンジンのローターの構造に問題が発覚し、対策実施中。将来的にはエンジンの設計変更も視野に
更に約550億円が開発&試験に必要
4日、米国防省F-35計画室の報道官が、F-35開発の飛行試験や評価試験(IOT&E)のため、更に約550億円の経費が必要だと明らかにしました。既にF-35計画は当初の開発経費を5割上回っており、物議を醸しています
同報道官は、なるべく他のF-35経費から流用して国防省予算への影響を局限すると言っていますが、試験の終了時期も従来固守すると言い続けてきた2017年末から数ヶ月ずれ込むと言い始めており、マケイン上院議員等から厳しい非難が巻き起こっています
まずF-35計画室の報道官は
●2017年度予算に経費は発生しないが、2018年度と2019年度予算に飛行試験や評価試験(IOT&E)経費を追加要求する必要が出てきた
●約550億円の追加経費の半分は、2014年のエンジン火災対処やソフト「3F」開発の遅れに必要な予算で、約170億円は過去数年の間に明らかになった新要求事項で、残り110億円は2年前に削除した分のSDD(System Development and Demonstration)予算である
●このSDDは2017年末までに終了できると考えているが、3~4ヶ月遅れるリスクも出てきた。
マケイン上院軍事委員長は国防長官に書簡を
●更なるSDDの遅れと1000億円は超えると予想されル経費増に、心の底から落胆させられた。そして国防省リーダー達の最近の行動や発言に、更なる疑問を呼び起こすことになった
●F-35計画室長のBogdan中将は4月に、SDDは予定通り終了するといい、追加経費も必要ないと断言していた。それなのにこの始末だ
●更に問題なのは、SDDについて米国防省内の試験評価局長は早くから、どんなに早くても2018年中旬頃までかかると予言しており、この見積もりの方が正しいことが証明された点だ
●カーター国防長官には、以下の10個の質問への回答を求める。SDDのスケジュールや追加経費、他の優先事業への予算的影響、将来のF-35計画への影響等に関する質問である
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11月1日に鮮やかな揺れる艦艇へのF-35垂直着陸映像を配信しながら、10月27日の飛行中火災事故を隠蔽していたことは、高等なメディア戦略だったのでしょうか。
「見事な着艦映像」は多くの方にご覧頂いていますが、火災隠蔽を耳にして、何となく着艦が大したことなく思えてきました
海兵隊と空軍F-35
「海兵隊F-35が見事な着艦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-05
「空軍トップ:火災原因未だ不明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-06
「9月23日の火災」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-24
2014年6月のF-35エンジン火災
「火災メカニズム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-04
「当面の対処と設計変更」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-29
「問題は軽易ではない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-08