中国によるグアム攻撃に備えた第1歩
7日、米空軍がグアム島アンダーセン基地の代替地として、テニアン国際空港を正式に指定すると発表しました。今後、様々な米軍機の受け入れが可能なように関連施設や兵士用の施設整備を公式に開始する模様です。
公式には、米太平洋空軍機等の「目的地変更に備えた取り組み:Divert Activities, Exercise Initiative」と呼ばれ、「Record of Decision」との文書に米空軍が7日署名したそうです
何度もご紹介してきたように、中国は米軍による西太平洋地域への戦力投射を阻止するA2AD能力を強化しており、米側の数少ない当地域での拠点であるグアム島を無力化するための装備開発や訓練に注力しています
中距離弾道ミサイルDF-26や最新型H-6爆撃機に搭載した長距離巡航ミサイルCJ-10等がこれに該当し、沖縄本島と宮古島の間を通過して太平洋に進出する中国爆撃機の訓練は、グアム攻撃を模擬したモノだとも考えられています
そんな中、グアム島周辺の北マリアナ連邦に属するテニアン、ロタ、サイパン等の飛行場は、グアム島アンダーセン基地の代替候補として今年2月に選定されていましたが、環境影響調査等のプロセスを経て、テニアン国際空港の「North Option」が公式に認定されたモノです
今後、サイパン等やロタ島やグアム島の国際空港が後に続くのか不明ですが、住民への説明等、種々の手続きが行われているのかも知れません
8日付米空軍web記事によれば
●この取り組みの目的は、当地域での訓練活動や人道支援/災害対処における、代替拠点基地を設置する事であるが、同時にグアムのアンダーセン基地や西太平洋地域の拠点がアクセス不能や制約を受けた場合に備えて、任務遂行のためのニーズに応えるためでもある
●7日の決定により、今後テニアン国際空港には、輸送機、空中給油機等のアセットや関連要員の活動を支えるインフラや施設が整備されることになり、西太平洋地域における代替拠点や演習拠点として利用可能になる
●太平洋空軍司令部の作戦計画部長Craig Wills准将は、「テニアンの代替基地としての役割は、アンダーセン基地へのアクセスが緊急事態や災害で限定又は不能になった場合を考えれば、極めて重要だと証明されるだろう」、「この決定は太平洋軍の統合作戦能力強化に重要なステップである」と同決定を語った
●北マリアナ連邦との交渉を担当した米空軍省の施設環境担当次官補代理Richard K.Hartley氏は、「米空軍は北マリアナ社会の皆さんと緊密に協議し、この選定プロセスを慎重に進めてきた。地元の方々の支援と協力に感謝したい」と述べている
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航空自衛隊C-130輸送機などは、米空軍や豪空軍との共同訓練「Cope-North Guam」の一環として、既にテニアンで人道支援/災害対処訓練を行っていますし、陸上自衛隊も着上陸訓練で北マリアナ連邦の島で日米共同訓練を行っており、「訓練場整備」の名目で日本の予算も計上されていたように記憶しています
グアム基地の代替施設建設は、もっと進んでいるのかと思っていましたが、地元との関係もあり時間がかかっているようです。でも喜ばしくあるべき姿への進展をお喜び申し上げます
また米軍は、沖縄等に所在する航空戦力の有事避難訓練も粛々と行っています。これまた極めて軍事的合理性に沿ったモノで当然と言えましょう
一方で、グアム島より遙かに中国大陸に近い日本は、中国のA2AD対処に何を行っているでしょうか?
有事における有効性が低く、しかも極めて高価な戦闘機だけに優先投資し、その根拠基盤基地の強化や代替地確保に何も手を付けていません。
制服組の中には、それは政治や文民の仕事で我々は手を出せないと言う航空自衛官(パイロット)が居ますが、心の底では、「基盤基地の脆弱性を主張して代替基地の要望をすると、有事における戦闘機の有用性問題に波及し、戦闘機への投資を削減される恐れがあり、機数やパイロット数を削減されかねないので、隠して黙って定年を迎えたい」と願っているのです。
そんな操縦者が牛耳る組織だから、サイバーや宇宙や電子戦、弾薬や維持整備予算のことは口先だけでしか語らず、スクランブル回数が増えて大変だとしか語れず、脅威の変化を浅薄にしか知らず、同盟国米国内の安全保障議論にも興味を示さず、落日の英国軍戦闘機に乗って喜んでいるような人間を育ててトップに据える組織になってしまうのです
「対中国に5世代機を活用する前提条件」
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