2020年代に米国は西太平洋への戦力投射不能に
11月21日、シンクタンクCNASのPatrick Cronin氏が 「Breakthrough on the Peninsula:第3の相殺戦略と韓国防衛の将来」とのレポートを発表し、「第3の相殺戦略」を柱にした関係国の国防力強化を訴えつつ、特に米韓の指揮統制や部隊融合の重要性を指摘しています。
また、朝鮮半島の問題は北朝鮮問題に止まらず、究極的には中国によるA2ADにどのように対処するかの問題であると述べ、韓国と日本に強く国防努力を求めて独自の「相殺戦略」を企てるべきだと主張しています。
CNASは現在の米国防省と関係が深く、トランプ次期政権はヘリテージ財団と近くなるのでは・・と噂が飛び交っていますが、どのシンクタンクが見積もっても、各種兵器技術の拡散や西太平洋の地理的環境から、中国の軍拡により米国の軍事的活動の自由度は低下する方向にアリ、日本や韓国への自助努力要求は高まる方向にあると改めて認識する必要があるでしょう
22日付米空軍協会web記事によれば
●朝鮮半島における米軍戦略を考える上で最も緊要な要因は、中国の動向であろう。
●米国は「第3の相殺戦略」を柱として北朝鮮の核開発や恫喝に対抗してことになるが、長期的には、米国の当地域への戦力投射能力に挑戦するのは、北朝鮮のミサイルではなく、中国のA2AD能力である
●現実問題として、2020年代には(中国のA2AD能力により)米国は当地域に戦略投射出来なくなる可能性が高いことから、米国は「第3の相殺戦略」を推進するに当たり、同盟国等との2国間や多国間の共同研究や開発による「第3の相殺戦略」推進を真剣に考えるべきである
●一方で、アジア太平洋の同盟国等にも米国が認識している脅威への対処能力構築努力を行わせるべきでアリ、例えば韓国が北朝鮮の核兵器無効化のため、「高出力マイクロ波兵器」や「EMP爆弾」に取り組んでいるような努力である
●中国のA2AD能力が、米軍の西太平洋における行動を制約し、抑止し、打破する可能性がある中、韓国や日本には確かな抑止力や国防能力を確保させるため、それぞれの国の相殺戦略を実行させるべきである
米韓の軍事同盟については
●朝鮮半島におけるパワーバランスを米韓同盟に有利に保つためには、「第3の相殺戦略」が鍵となる。同戦略は技術開発と関係付けられてイメージされる事が多いが、同時に国際協力や統合レベルでの相互運用性でA2ADに対抗することである点も重要だ
●特に北朝鮮対処では、ハイレベルでの政治的結束、緊密な両国間の指揮統制、システムや人材の融合等が強く求められる
●そして米韓同盟に最も求められる「第3の相殺戦略」関連の施策は、北朝鮮と対峙する韓国北部に「連合の戦闘師団:combined combat division」を編制することである
●他方、韓国の国会が戦いの趨勢左右する新たなシステムへの投資に消極的だと非難し、韓国に対し先進技術への投資増を要求する
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韓国の現状は、細かな国防政策を詰めようもない混乱ですが、「トランプ氏が次期大統領だから」とか、「韓国の新体制がどうだから」とかではなく、大きな「脅威の変化」を見極め、「腰を据えた安全保障議論」が必要な時です。なので本レポートの概要の概要をご紹介しました
韓国が「高出力マイクロ波兵器」や「EMP爆弾」開発に取り組んでいるなら気になりますし、「連合の戦闘師団」の中身も興味をそそられますが、ご興味のある方は、以下のCNASサイトをご覧下さい
→https://www.cnas.org/publications/reports/breakthrough-on-the-peninsula
第3の相殺戦略関連の記事
「CSISが特集イベント」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-1
「相殺戦略を如何に次期政権に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04
「CNASでの講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-15
「11月のレーガン財団講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-15
「9月のRUSI講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-12
「慶応神保氏の解説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-26
「第3のOffset Strategy発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-06-1
カーター長官の技術革新促進
「SCOが存続をかけ動く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-10
「ボストンにもDIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-27-1
「技術取込機関DIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
「米陸軍もRCO設立」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-01
「次期爆撃機の要求検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-07
「謎のRQ-180」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-09
「謎の宇宙船X-37B」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-12
Cross-domain能力を追求
「ハリス長官がcross-domainを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-05
「副長官が米空軍の尻を叩く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-28
無人機の群れ関連
「無人機の群れ:艦艇の攻撃や防御」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-10
「海軍研究所の滑空無人機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-04
地上部隊にA2AD網を期待
「再びハリス司令官が陸軍に要請」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16
「尖閣防衛に地対艦ミサイル開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-14
「ハリス大将も南シナ海で期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-06
「陸自OBが陸自で航空優勢と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-12
「CSBA:米陸軍をミサイル部隊に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14