史上5回目のB-2作戦任務はリビアのISキャンプ攻撃
オバマ&カーター退任直前に意味深なステルス大型爆撃機使用
19日、前日に退任式典を終えていたカーター国防長官が「サプライズ」記者会見を開き、18日に2機のB-2ステルス爆撃機がリビアにあるISIL訓練基地を約100発の精密誘導爆弾で攻撃し、テロリスト約100名を抹殺したと発表しました
オバマ大統領にも「数日前に了承を得た」との説明もアリ、同大統領が最後に承認した軍事作戦となった模様です。
タイミングといい、滅多に使用しない大型ステルス爆撃機の投入といい、中国やロシアへの警告メッセージの意味合いや、米軍の即応態勢への疑問を示しているトランプ氏へのメッセージだとメディアは指摘しているようですが、カーター長官は当然否定しています
攻撃は2機のB-2と、その後の無人機MQ-9のフォローアップ攻撃で構成されていたようですが、他のアセットのオプションもあった中でB-2を使用した理由については、米アフリカ軍司令官の要望で最適なアセットだった等と、それなりに説明しています
B-2が1990年代に運用態勢を確立後、これまで4つの作戦にだけしか投入されておらず、最近では2011年のリビア攻撃が最後の実作戦だったこともあり、様々な憶測を今後呼びそうな貴重なB-2爆撃ですのでご紹介します
20日付Military.com記事によれば
●カーター長官は、他のアセットの選択肢もあったが、米アフリカコマンド司令官がB-2を最適なアセットとして要望してきたため国防長官として承認し、オバマ大統領にも「2~3日前に」承認をもらったと説明した
●大統領の承認を得た理由を、爆撃を行ったリビアの都市Sirte周辺は、長らくISILに支配され、先月米軍や国連の支援を受けたリビア政府軍GNAが奪還したばかりで、空爆を制限していた地域だからだとカーター長官は説明した
●また同長官はB-2を投入した理由についての憶測を否定し、B-2爆撃機は多量の爆弾を搭載して長時間連続して在空出来ることから、作戦指揮官により作戦の柔軟性を与えることが出来ると判断したからと説明した
●ただ付け加えて長官は、B-2爆撃機を使用するときは、常に何らかのメッセージがそこにあると述べ、ISILに対し、世界中のどこに居ようとも米国の手からは逃れられないとのメッセージだと語った
●当該B-2爆撃機は4万ポンドの兵器搭載能力があるが、今回の作戦では500ポンドのJDAM等精密誘導爆弾を2機で合計100発投下した。そしてB-2の後に、1機の無人機MQ-9が「Hellfireミサイル」で更に攻撃を加えた、と米空軍報道官は説明した
●なお2機のB-2爆撃機は、米本土ミズーリ州のWhiteman空軍基地から飛び立ち、往復34時間の連続飛行を15回の空中給油で行ったとのこと。
●カーター長官は攻撃目標となった2つのISIL訓練キャンプについて、先月リビア政府軍が米軍や国連の支援を受け奪還したSirteの町から非難したテロリスト達が、欧州へのテロ攻撃の準備をしていた拠点だと説明し、「ISILを発見したら、何処であろうとこれを撃破する一連の作戦の一部だ」と位置付けた
●なお米空軍報道官は、B-2が計100発もの爆弾を使用したが、精密誘導爆弾を使用したことから「絨毯爆撃:carpet bombing」ではないと強調した
過去4回のB-2爆撃機投入作戦は以下の通り
*March 1999, Operation Allied Force against Serbia;
*September 2001, in the first strikes of Operation Enduring Freedom in Afghanistan;
*March 2003, at the start of Operation Iraqi Freedom; and
*March 2011, Operation Odyssey Dawn in Libya to topple the regime of Gadhafi.
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リビアの「Sirte」という地中海沿岸の都市は、ISILが占拠して以来、テロリストを欧州に送り込む拠点となっていた場所で、その奪還は有志連合の悲願でした
その悲願の奪還が昨年12月に成功し、逃げ延びた残党退治作戦がB-2爆撃機に託された訳です
長時間敵の上空に在空し、敵を発見次第、その都度精密誘導兵器で攻撃する手法は、B-52も行っていますが、今回はなぜステルス機が必要だったのでしょうか?
75機以上保有するB-52部隊が多忙で、20機しか保有しないB-2爆撃機部隊に任務が回ってきたのでしょうか?
邪推ですが、以下の様に想像します
●中東域に現在米空母が存在しないため、中東に展開する米空軍はシリアやイラクでの対ISILに手一杯。またロシアが最新鋭多用途戦闘機Su-35をシリアに持ち込み、地域の緊張が高まる中、リビアでの作戦に投入する余裕が中東展開部隊にはなかった
●ISILテロリストと関連装備品が集中していた攻撃目標を、一度の機会で徹底的に殲滅したかった。敵が分散避難する恐れがあり、複数回に亘る攻撃は避けたかった
●2011年3月にもB-2を投入したように、旧リビア軍の保有していた対空ミサイルで所在不明となっているモノがアリ、念のためステルス機を投入した
B-2爆撃機関連
「B-2の稼働率」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-05
「2058年まで運用予定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-05
「B-2の20周年記念」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-28
「爆撃機による外交」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-04
「グアムに大型B全機種勢揃い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-12
「B-2がCBPでグアム展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-18
「CBP受入の常設部隊設置へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-13-1
「映像5つの視点B-2爆撃機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-01
「鮮明な飛行映像」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-27-1