中東に米空母なし:トランプ就任時もなし

トランプ就任時、中東に空母なし・・・
Bush-CV.jpg12月28日付defense-Newsが、26日に空母アイゼンハワーが中東戦域での任務を終え母港Norfolkに向かったが、交代予定の空母ブッシュは米本土の母港を訓練不足で出発できない状態にあり、少なくとも2ヶ月間の「空母の空白」期間が生じるだろうと報じています
従って、来年1月20日のトランプ新大統領就任式当日には、トランプ政権が当面の国防省の最重要任務と位置付け、米国防省も最も精力を傾けている対ISILを初めとする中東作戦に、大きな役割を担う空母が存在しない状態になります
米国防省的には、代替手段として米空軍戦力を「ちょい足し」して対応するとの公式見解らしいですが、交代空母ブッシュの定期修理期間が2倍以上の13ヶ月もかかって終了した今年夏から、米海軍は遅れへの対処や今後の見通しについて何も語らず、漏れ聞こえてくる話から海軍内部が大混乱状態にあるような印象さえ与えている状態です
本件については、10月12日の記事で「定期修理が間に合わない」とご紹介しましたが、空母アイゼンハワーの任務期間延長もされず、空母ブッシュの派遣時期も不明確なまま、「空母の空白」が現実のものとなってしまいました
28日付defense-News記事によれば
Bush-CV2.jpg●通常空母の交代は、ペルシャ湾かアラビア海の現場で、双方の空母が見えるような位置になってから実施されてきたが、空母ブッシュは母港Norfolkをまだ出港しておらず、1月20日にはとても間に合いそうもない
●海軍関係者は、空母ブッシュ戦闘群は12月21日に最後の大規模な派遣事前演習を終了したが、少なくともあと1ヶ月は出発までには必要だろうと語った
●空母ブッシュは昨年5月に6ヶ月間の定期修理のためドック入りしたが、間もなく修理期間が8ヶ月必要だと発表があった。この時点では通常必要な準備訓練10ヶ月間を9ヶ月に短縮して対応可能だろうと考えられていた
しかし同空母は今年7月13日までなんと13ヶ月間も定期修理に要し、12月の交代に間に合わすには、4ヶ月間の訓練期間しか確保できないこととなった
●定期修理遅延の理由については、米海軍内の関係する複数のコマンドが様々な説明を行っているが、原子炉、搭載システム、搭載兵器等々の各関連部署の説明は複雑に絡み合っており、海軍内の連携の混乱を伺わせている
背景には、修理期間に見つかった要措置箇所への対応計画のまずさ、熟練技術者の不足等々が言われているが、背景には予算削減による人員削減や経費削減があると言われている
Bush-CV4.jpg修理完成後の訓練期間短縮についても、「Fleet Forces Command」の準備の遅れが指摘されており、修理の遅れが明白なのに、訓練計画修正のための関係者会議が8月半ばまで開催もされなかったと複数の関係者が証言している状態である
修理の遅れは空母ブッシュに限った話ではなく、担当の「Naval Sea Systems Command」は問題を認識して対策に取り組んでのに、修理が終了した7月中旬時点で、今後の訓練予定が明確になっていなかったことに疑問の声が上がっている
●これまでもそうだが、本記事掲載の向けて米海軍に今後の予定等についてコメントを求めたが、一切回答はない
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10月12日の記事や原典の米軍事メディア記事は、少し詳しく定期修理ドックの苦しい運営状態を説明し、計約3.5万人の人員で運営され、2013年以降に新規に1.3万人を雇用したが任務増加で追いつかず、また熟練工は急には育たない等の問題を抱えています
また、複雑な修理工程を計画し、突発事態に対応して計画を修正する人材の不足も深刻な模様です。
trump5.jpgなお、なぜ空母アイゼンハワーの派遣期間が延長されなかったのか記事は触れていませんが機材の傷みやクリスマスを遠征先で過ごすことの士気への影響など、なかなか外部からは見えない事情もあるのでしょう。
いずれにしても、「強いアメリカを取り戻す」とは言ってみても、この米海軍空母の状態だけを見ても、その道のりが決して容易ではない事は明白です
米空母の定期修理が間に合わない
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-09
現在規模の維持だけでも年10兆円予算増
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-10
空母関連の記事
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「イラン無人機が米空母撮影」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-01
「新空母フォード級を学ぶ」 →http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-20
「映像:革新的新カタパルト」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-10

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