米空軍作戦機や輸送機の稼働率が異常低下

F-22Hawaii2.jpg​3月22日の下院軍事態勢小委員会用に米空軍が提出した資料より、米空軍の作戦機と輸送機(combat and mobility aircraft)17機種のうち16機種が健全な水準の稼働率を下回っていることが明らかになりました。
作戦機と輸送機(combat and mobility aircraft)17機種の内訳が報道からは確認できませんが、断片的な報道には、戦闘機、爆撃機、輸送機の機種名が含まれており、主要な米空軍戦力を対象にした統計と考えられます
単純に維持整備予算の不足が原因ではなく、将来を見据えた計画的な稼働率低下もあるようですが、装備老朽化や人手不足など短期的に解決が難しい問題も明らかになっており、米空軍の「足元」を覗き見る機会ですのでご紹介します
3月30日付米空軍協会web記事によれば
B-2takeoff.jpg米空軍の維持整備課長であるMichael Lawrence大佐は、米下院軍事態勢小委員会に提出した資料について米空軍協会の取材に応じ、米空軍の作戦機と輸送機(combat and mobility aircraft)のほとんど全てが健全な稼働率レベルより低い状態にあると語った
●「稼働率」とは、当該機種の何%の航空機が飛行可能で任務遂行可能状態にあるかを示す数値で、その機種の健全性を示す指標と考えられている
●同統計に資料によれば、2016年度最終四半期において、米空軍の主要な17機種のうち、16機種が健全性を示す基準レベルの稼働率を下回ってい
●基準レベルを下回っていても、ある範囲内であれば一時的な変動や誤差として「許容範囲内」とみなされるが、その「許容範囲内」にある機種も16機種中で6機種にとどまっている
●Lawrence大佐は基準レベルを下回った理由は背景には、機種ごとに様々な理由があり一様ではないと説明したが、大きく大別すると3つのタイプに分類されると語った
B-1やB-2爆撃機、さらにF-15Eストライクイーグルは、前線部隊には我慢を強いているが、本格的な敵対者に備え、能力向上や延命対策を行っていることで稼働率が低下している
F-15E-Afgan.jpg2つ目の理由は、米空軍の保有する作戦機の平均年齢が高くなり、各航空機の整備に必要な時間が増え、修理施設で非稼働状態になる時間が増えているためだ
F-22は新しい機体だが、機体表面のステルス措置工程が主原因で、最も低い稼働率46%となっている
●そして3つ目は、整備員の不足である。
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これ以上の細部は不明ですが、「航空機の老朽化」はF-15、F-16、A-10、B-1、B-2、B-52等々の25年以上使用している航空機が依然中核であることから来ています
「整備員不足」は、A-10を全廃してベテラン多数を含む整備員を、F-35や他機種に配分して整備体制を整える計画だったものが、議会等の強い反対でA-10全廃がとん挫したことが等々の影響が出ていると考えられます
また、民間でも航空需要が拡大しており、パイロットと同様に給与や勤務環境面で魅力が高い民間航空会社に人材が流失していることも考えられます
Pentagon2.jpg以上は「足元」の現状ですが、米軍全体、全米政府機関は5月1日以降の予算が不確定で、「2013年強制削減」の悪夢の淵に再び立たされています。米空軍は現在、強制削減状態になった場合に備え、どの予算を削減するかの検討を行っています
現在の暫定予算が切れる4月末までに、議会で強制削減を回避する何らかの措置や妥協が行わなければ、空軍では飛行時間の大幅削減、施設修理の極限、文民職員の雇用停止、各種プロジェクトの中断等々の「2013年強制削減」の悪夢がそこまで迫っているわけです
「米海軍FA-18の2/3が飛行不能の惨状」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-07
米空軍が整備員確保で苦悩
「整備員不足対処案も苦悩続く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-03
「F-35整備員確保の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-14
「A-10全廃は延期へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-22
「航空業界全体で人手不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-29
5月1日から再び強制削減の悪夢か
→https://www.dodbuzz.com/2017/03/25/air-force-cut-flying-hours-math-problem/

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