25日、Facebook創立者のMark Zuckerberg氏が母校(中退)の卒業式で約30分の講演を行い、その全文を 倉本圭造さん(経営コンサルタント・経済思想家)が日本語訳されて26日付ブログに掲載されました。
素晴らしいです・・・。若造のIT長者くらいに見ていましたが、大学在中から始めたFacebookをこれまでにした経緯やその過程で学んだことを基礎とし、年齢が10歳ほどしか変わらない卒業生を同世代として語り掛け、同世代の「目的」や使命を訴えかけています。
そして彼らの世代の「目的」として、「自分の人生の目標を見つけるだけでは不十分」で、世代の課題は「誰もが目的感を人生の中で持てる世界を創り出すこと」、「すべての人たちが、人生に意義を感じられる目的感を持てる世界を作ること」だと、世界の情勢や様々な経験を交えて語っています。
訳された倉本さんは、聞く人の立場によっては「偽善」に見えるかもしれないが、「超弩級に徹底した揺るぎない偽善」は、それ自体を多くの人が「善なるもの」として必要としているメカニズムというのもあるだろうというぐらいの迫力だ・・・と表現していますが、ぜひご自身で倉本さんの全訳をご覧いただきたいと思います
倉本さんのブログ「「覚悟」とは「犠牲の心」ではない」より
→https://keizokuramoto.blogspot.jp/2017/05/blog-post_74.html
IT関連起業家の卒業式講演では、Appleのスティーブ・ジョブズ氏によるスタンフォード大学講演がよく知られ、「東京の郊外より」でも取り上げ(http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-19)、キーワードであった「Stay hungry, stay foolish」の由来を推測してご紹介したことがあります
ドットをつなぐと、振り返るとき道ができているものだ・・・と語り、ひたむきな努力の大切さを説いた死期迫るジョブズの講演もディープインパクトでしたが、優秀な頭脳とあり余るほどの資金を有する若手起業家が、世界と社会を真正面から見据え、正確な分析と的確な表現でビジョンを語る様子に、圧倒される思いです
以下では、倉本さんの全訳から、いくつかの部分を抜き書きで紹介しようと思うのですが、スピーチ全体で主張を生み出しており、一部を切り取り紹介することが不適切だと、つくづく感じながらの作業でした。
それでも、以下の「一部切り取り」を見て興味を持っていただき、ぜひ約30分間の講演の全文を映像と合わせてご覧いただきたいと思いから、「つまみ食い」をいたします。改めて倉本さんに感謝です
ハーバード大学提供の講演映像
Zuckerberg卒業式講演より「つまみ食い」
●ケネディ大統領がNASAを訪れた時のエピソード。ホウキを持ってる門番にケネディが何をしてるのかと訪ねたら彼はこう答えた。「大統領、私は人類を月に送る手伝いをしているのです」 「目的」というのは、僕ら一人ひとりが、小さな自分以上の何かの一部だと感じられる感覚のことです。自分が必要とされ、そしてより良い未来のために日々頑張っていると感じられる感覚のことなのです。「目的」こそが本当の幸福感をつくるものなのです。
●今は、テクノロジーと自動化技術が沢山の仕事を消し去っていっています。コミュニティへの所属感も消えてきている。多くの人が取り残され、抑圧されていると感じ、その空白感をなんとか埋めたいとあがいている。この社会を前に進めること、それが僕ら世代の課題です。新しい仕事を作るだけじゃなくて、あたらしい「目的感」をも作り出さなくちゃいけない
●Facebook創業から数年たって、ある大きな会社が僕らを買いたいと言ってきた。僕は売りたくなかった。僕はもっと多くの人を繋げたいということだけを考えていた。「より大きな目的感」がないなら、会社を売り抜けることはスタートアップの夢そのものだからです。このことで会社は分裂してしまいました。何年もたって、私は、それは「より大きな目的意識」がない時に起きる自然なことなんだということがわかりました。そういう「目的感」を作れるかどうかは自分たち次第なんです
●僕は世界に「目的感」を持ってもらうための3つの方法についてお話します。
その1・一緒に大きくて意味のあるプロジェクトについて語ること
その2・”平等性”を再定義して誰もがその目的に参加する自由を持てるようにすること
その3・世界規模のコミュニティを創り出すこと
●すべての世代が、「平等」という言葉の定義を押し広げてきました。上の世代は、投票権と公民権について戦った。それらはニューディール政策とグレイトソサエティ政策に結実しました。今、僕らの世代が僕らの世代の新しい社会契約を結ぶべき時なのです。これからは、GDPのような経済的指標だけでなく、どれだけ多くの人間が、意味のあると感じられる人生を送れているか・・といった指標で社会の進歩を測っていくべきです
●そして、そう、あらゆる人にその目的を追う自由を与えることはタダではできません。僕のような人間がそのコストを支払わなくてはならない。そしてあなたがたの多くも、そうすべきだし、実際にすることになるでしょう。
●しかし問題はお金のことだけではないのです。時間のこともある。週に1時間か2時間あれば、誰かに手を差し伸べることはできます。その人がその人の潜在的可能性に到達できる手助けができるのです。
●人類の歴史は、小さい集団からより大きな集団へ、部族から都市へ、そして国へ・・・と多くの人間が寄り集まり、協力しあうことで今までできなかったことを可能にしてきた物語であることを、僕たちは知っています。
●しかし、僕らは不安定な時代に生きています。世界中にグローバリズムに取り残されたと感じている人たちがいる。もし自分が暮らしているホームグラウンドで自分たちがちゃんと良く生きられていると感じていない時、世界のどこか他の場所の人たちのことまで考えるのは難しいです。そういう時には内向き志向の圧力が高まります
●これは僕らの時代の課題です。自由と開かれたグローバルコミュニティと、権威主義や孤立主義、そして国家主義との争い。知と交易、移住する人の流れを促進していく力と、それをスローダウンさせようとする力とのぶつかりあい。これは国同士の争いではなく、考え方同士の争いなのです
●国連で解決できるような問題ではありません。もっとローカルなレベルの問題です。もし人間が自分自身の人生に目的と安定を感じて生きていられれば、その時人類は「他の地域の人たちの問題」についてケアしあうことも可能になるのです。だからこそ最善の対処法は、今ここで、ローカルなコミュニティを立て直すことなのです
●変化はローカルに始まります。グローバルな変化も最初は小さく始まる。僕らのような、僕らの世代において、もっと多くの人を繋ぐことができるかどうか、僕らの最大の課題が実現できるかどうかは、全てこのことにかかっているんです・・・あなたがコミュニティを創り出し、そしてありとあらゆる人が、自分の人生に目的感を感じられる世界を創り出すことができるかどうかにね。
●2017年卒業生の皆さん、あなたがたは、「目的」を必要としている世界へと飛び込んでいきます。それを創り出せるかどうかはあなた方次第なんです。
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やはり、このスピーチは「つまみ食い」が難しいです。
現代の社会や世界を描写する表現や、様々な彼の経験や取り組みも紹介しないと全体のイメージがつかめないのですが、そうするには全文をご紹介する必要が出てきます。
やはり、倉本さんの紹介文と全訳をぜひご覧ください
→https://keizokuramoto.blogspot.jp/2017/05/blog-post_74.html
ジョブズ氏の「Stay hungry, stay foolish」の由来は!?
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-19