14日、マティス国防長官が上院予算委員会国防パネルに出席し、4月から開始されて年末に大統領への提出を求められている「核態勢見直し:nuclear posture review」について、取り組む姿勢などの視点から証言しています
もちろん、まだ具体的な方向性が固まっているわけではありませんが、今後話題になりそうな論点や視点が幾つか議員から質問され、またマティス長官の説明振りから姿勢も感じられますので取り上げます
老朽化著しい核兵器や関連施設の更新や近代化には、ざっくり「130兆円」が必要と言われているようです。
でも、全く性格の異なるサイバー空間での戦いが出現し、「究極の抑止兵器」であった核兵器の存在にも、様々な問いが投げかけられる時代です。「130兆円:$1.2trillion」に一言言いたくなる気持ちはよく分かります!
15日付米空軍協会web記事によれば
●マティス国防長官は議会で、核態勢見直しを通じ、将来の核兵器の役割や、それら兵器が決して使用されることが無いように強いる抑止のあり方について検討している最中だと表現した
●そして、最も効率的でコスト意識の高い形で核抑止を成立させるような、核兵器3本柱のあり方を再検討していると証言した
●マティス長官は今週、米空軍のICBMは破棄すべきと主張するWilliam Perry元国防長官や、国務省で軍備管理担当次官も務めていたRose Gottemoeller元NATO副事務総長と、「軍の核兵器部隊を学ぶ事から始めるため」会談している
●民主党のDianne Feinstein議員は国防長官に、米空軍が提案しているLRSO(long-range standoff weapon:空中発射巡航ミサイルAGM-86Bの後継)の必要性を問いただしつつ、総額で130兆円とも言われる核兵器や関連設備の更新&近代化経費に関し、何を優先するかや、ロシアとの薄氷の合意であるINF全廃条約へのLRSOの影響について質問した
●国防長官はLRSOについて、「LRSOはロシアとの関係を不安定化し、軍拡競争を招く恐れがあるとハッキリ述べておく」と証言し、一方で国防省としては爆撃機の残存性を保つ必要性とスタンドオフ兵器の必要性を吟味する必要があると語った
●また長官は、ロシアによるINF条約違反の可能性と、ロシアがオープンスカイ条約からの離脱を決定した場合の影響についても、核態勢見直しの中で検討していると説明した
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経費枠の問題、3本柱の維持是非と優先度の問題(ICBMと戦略原潜の後継検討、加えてLRSO是非)、INF全廃条約やLRSO導入是非、ロシアとの関係全般等まで幅広い論点がアリ、これに加えて、サイバーや宇宙ドメインでの新たな戦いを踏まえた新しい抑止議論も前提となる今回のNPRです
別の観点として、議論の最中にトランプ大統領の仰天ツイートや発言が飛び出す可能性もアリ、混戦&乱戦&場外乱闘何でもありの展開が予期されます。
北朝鮮問題との関連では、三浦瑠璃さんが「米軍による日本への核兵器持ち込みを容認すべき」との立場を表明されていますが、日本としてはこの議論を持ち出すのであれば今がそのタイミングでしょう!
21世紀の抑止概念を目指す
「米戦略軍も新たな抑止議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-11
「21世紀の抑止と第3の相殺戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-03
「相殺戦略特集イベント」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-1
「期限を過ぎてもサイバー戦略発表なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-25
NPR(核態勢見直し)関連
「トランプ政権NPRの課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-09
「2010年NPR発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-07
「NPR発表3回目の延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-02
「バイデンが大幅核削減を公言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-19
米新政権の国防予算を考える
「規模の増強は極めて困難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-10
ロシアのINF条約破り
「ハリス司令官がINF条約破棄要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-29
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15
「ロシア巡航ミサイルへの防御なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06
戦術核兵器とF-35記事など
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06
ICBM後継に関する記事
「初のオーバーホールICBM基地」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-15
「ICBM経費見積もりで相違」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-26
「移動式ICBMは高価で除外」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-16
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1
オハイオ級SSBNの後継艦計画関連
「次期SSBNの要求固まる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-08-2
「オハイオ級SSBNの後継構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-25-1
「SLBMは延命の方向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13
「RAND:中国の核兵器戦略に変化の兆し」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-19
三浦瑠璃女史の北朝鮮と核持ち込み
→http://lullymiura.hatenadiary.jp/entry/2017/04/24/000359