米国がサウジにTHAAD提供へ!?

Trump Saudi.jpg30日付Defense-Tech記事は、米国防省のFMS監督部署の文書を元に、20日のトランプ大統領サウジ訪問時に発表された、約12兆円の国防装備品の内容について説明しています。
これまでも報道で、沿岸戦闘艦4隻やヘリ150機などが断片的に報じられていましたが、公式文書を元に、THAADやP-8を含むより具体的な中身が語られていますので、ご紹介したいと思います
トランプ大統領最初の海外訪問国で、次がイスラエルとのインパクト大の訪問で、対イラン姿勢明確とか、イスラエルには説明できるのとか、色々議論がありましたが、装備品の中身から考えたいと思います
30日付Defense-Tech記事によれば
MMSC.jpg完全に固まったわけでは無いが、20日にトランプ大統領がサウジを訪問して発表した約12兆円の兵器取引には、THAADや開発中の最新沿岸戦闘艦が含まれているようで、共にLockheed Martin製である
●トランプ大統領が会見時に、「米国の素晴らしい企業が製造した装備を、サウジの友人が良い条件で入手出来るよう手助けする。この合意はサウジ軍が、より大きな安全保障の役割を担えるよう支援するものだ」と語っていた「a good deal」の事である
米国務省が許可した武器売却FMSを国防省で管轄するDSCA(Defense Security Cooperation Agency)がまとめた、今回の合意に関する「fact sheet」では、「70年育んできた米サウジ関係を極めて大きく拡大するもの」と表現されている
●そして更にトランプ大統領のご意向に配慮してか、「米国のサウジへのコミットメントを示すと共に、米国企業の当地域での事業機会を拡大し、潜在的に米国内で数万人の雇用を生み出す可能性がある」と合意の意義を表現している
●DSCA文書によれば、現在Lockheed Martin社が開発中の「MMSC:Multi-Mission Surface Combatant」提供に国務省が許可を出し、FMS契約でまとまる可能性がアリ、関連部品や兵站支援を含めて約1.3兆円の規模が見積もられている
●この新型艦MMSCは、現在のフリーダム型沿岸戦闘艦LCSの発展型で、高機動性と破壊力に優れた沿岸から海洋での作戦に適した多用途水上艦艇で、フリーダムLCSのディーゼルガスタービン推進システムを活用する艦艇である
THAAD2.jpgTHAADに関しては、ミサイル防衛システムも含まれると覚書きに記載されているとDSCAは説明している
●また合意には、オバマ政権が民間人への被害拡大を恐れ、激しさを増すイエメン過激派組織との戦いにに従事するサウジやUAEに提供を停止していたJDAMも含まれている。
●更に、150機のSikorsky製ブラックホールヘリやボーイング製のP-8哨戒機が含まれている
●DCSAのJoseph Rixey長官は、「これらの武器売却で米とサウジの軍事協力を深化させ、地域の安全保障に貢献する」述べ、更に武器輸出だけでなく、「装備品維持整備訓練だけでなく、戦略やドクトリン研究を行う機関の立ち上げ支援なども合意で取り組んでいく」と説明している
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THAADに関する表現が微妙ですが、全体にはおとなしめの防御兵器が並んでいる印象です。
Trump Saudi4.jpgメディアの中には「サウジとの多額売却合意で、イスラエルが技術優位を犯されることを懸念するのでは」との論評もありましたが、オバマ政権へのサウジの不満を利用し、地域への刺激の少ない武器を大量に売ることに成功したトランプ大統領の成果と見るべきではないでしょうか
イスラエル訪問でも、地域の盟主サウジとの関係を立て直した後に、米大統領として初めて嘆きの壁を訪れ、大使館のエルサレム移転意図を臭わせ、パレスチナ側に強気の姿勢をちらつかせたのではないかと推測しています
週末のアジア安全保障会議(シャングリラダイアログ)で、マティス国防長官が中国や北朝鮮問題に対し何か新機軸を打ち出すとは考えにくいのですが、中東ではトランプ色が打ち出され始めたと思います。
色々考える記事
「中国がサウジで無人攻撃機の製造修理へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-29
「米イスラエル関係の転機?:軍事援助を巡る攻防」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-26
「中東でF-35はイスラエル独占?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-13

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