検討結果は2018年に発表(publish)する
全体のステルス性は求めないかも
弾道&巡航ミサイル探知用センサーも!?
10日、米空軍協会主催のイベントが開催され、米空軍の次期制空アセットPCAを検討するチームECCTのリーダーや主要メンバーがパネル討議を行い、その検討コンセプトを語りました。
昨年6月にチームECCT(Enterprise Capability Collaboration Team)は、PCA(penetrating counter air)の前提となる「Air Superiority 2030」とのレポートを発表し、空中戦を中心とした航空優勢のイメージを否定し、戦闘機(Fighter)との用語の使用を禁じ、ネットワークを重視し、航続距離や搭載量を速度や旋回性能より重んじる方向を打ち出していたところです
その後その考え方をチームリーダーAlexus Grynkewich准将が講演する様子をご紹介しましたが、その後フォローしていませんでしたので、久々に同検討の状況をご紹介致します
11日付Defense-Tech記事によれば
●Grynkewich准将のほか、ECCTでコンセプト開発担当のTom Coglitore大佐、そして分析担当のJeff Saling氏が登壇してパネル討議を行った。本チームECCTは来年にPCAの要求性能に関する提言をまとめて発表することを求められている。
●現在は様々な角度から、種々の要求性能のトレードオフや最新技術動向と活用可能性について検討しているが、F-22やF-35戦闘機より航続距離が長く、爆撃機のように特定任務に特化したモノでは無く、ステルスコーティングは航空機全体に要求しない可能性があると彼らは言及した
●Grynkewich准将は「ハイエンド脅威環境下で突破型の攻勢及び防御が可能な次世代アセットに求められる能力を議論している」、「検討を進める中で、我々は戦闘機(Fighter)との用語が不適当だと考え使用を禁じた」と語った
●検討では、ますます厳しさを増し予想困難な厳しい脅威環境に備え、最新第5世代機の不足能力を見極める事から始まっている
●同准将は「もはや航空戦は空中戦だけで語れるモノではない。ネットワークを構成提供するPCAは、航続距離、在空能力、生存性、破壊力等の観点で必要な特性が検討される」と語り、
●Coglitore大佐は「有人か無人か、航続距離、搭載兵器などなどをどうするかについて、分析を行っており、来年検討結果をまとめることになっている」と語った
ステルス性、レーザー、兵器について
●例として同准将は、「米空軍はしばらくの間、ステルス機であれば大丈夫だと他の要素をあまり考えてこず、ステルス性が高ければ高いほど良いと考えてきた。(しかし全体でのトレードオフを考慮し、)生存性を検討するとき、各要素を比較して、電子戦能力や速度との関連も含めて議論することが可能だ」と表現して検討事項を説明した
●そして「ステルス性は当然考慮する(price of entry)が、速度など他の特性を活用した脅威対処も含めて総合的に効果を検討する」と説明した
●更に同准将は、「私にとってはセンサーがより重要だ。例えば、弾道ミサイルや巡航ミサイルを探知する長射程センサーは、PCA自身だけでなく他アセットからのスタンドオフ兵器にも情報を提供できる」と語った
●またレーザーなどエネルギー兵器も当然検討の選択肢に入っているとECCTメンバーは一様に語り、その急速な技術進歩に注目していると語った
●一方でレーザーについてJeff Saling氏は、期待は極めて高いが、航空機に搭載するにはまだ多くの課題が残されている。防御か攻撃か、いずれに使用するかにもよるが・・・と語った
●Coglitore大佐は、レーザーに対する公式な要求はないと言及し、A2AD環境での生存性向上に寄与できるかにかかっていると語り、「他の要素と比較しながら見て居る」と表現した
●Grynkewich准将はまた、「兵器や弾薬も進化早く、脅威の変化に応じ、兵器の進化にも追随可能である必要がある」との論点も提示した
///////////////////////////////////////////////////////
「もはや航空戦は空中戦だけで語れるモノではない」(Air combat is not all about fighter aircraft dogfighting anymore)との言葉を、日本の戦闘機命派に捧げます。
また、ステルスコーティングは航空機全体に要求しない可能性、ステルス性と他要素とのトレードオフ、弾道ミサイル探知用の(航空機搭載)遠距離センサーなどの言葉も、戦闘機数と戦闘機飛行隊数維持しか眼中にない(これを聖域化することも同罪)に凝り固まった者達に供します
A-10など破棄したい旧式装備を議会の反対で破棄できず、航空戦力全体の練度向上や近代化が進まない米空軍ですが、せめて卓上の研究だけは理想を追求して頂きたいものです
米空軍の次期制空機PCA検討
「次期制空機検討は2017年が山!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-12
「次世代制空機PCAの検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08
「CSBAの将来制空機レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15-2
「NG社の第6世代機論点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-17
「F-35にアムラーム追加搭載検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-28