重大不具合指定:KC-46ブームでひっかき傷

米空軍が「Category One」不具合に指定
ステルス塗装への影響を懸念
KC-46-2.jpg1日付Bloomberg電子版は、既に開発が1年以上遅延している米空軍のKC-46A空中給油機が給油ブーム(給油用の管)を給油相手の航空機に接続する過程で、相手機体に「scrapes:ひっかき傷」を想定以上に生じさせている問題について、米空軍が最重要な不具合と認定してボーイング社と対策を検討していると報じています
KC-46AはB-767旅客機をベースに開発された空中給油機で、それなりに成熟された技術を活用することから、「経費固定契約」(国側は開発経費超過分を負担しない契約)の初ケースとして注目を集めたプロジェクトで、179機を約5兆円で調達する予定のF-35とB-21と並ぶ国防省3大プロジェクトと呼ばれています
しかし実際の開発過程では、機内配線のトラブルや給油配管の処理に誤った化学薬品を使用するなどのトラブルが相次ぎ、最初の18機を納入する期限2017年9月は2018年10月に遅延し、その経費も米空軍推定で1600億円超かの7000億円、ボーイング推定でも6500億円に膨らむ予想で、当初計画分の4400億円を超える部分はボーイング負担となっています
1日付Bloomberg電子版記事によれば
KC-46 Boom2.jpg●米空軍はこれまで、KC-46Aで5つの機種に合計1000回以上の空中給油試験を行っているが、これまでの試験結果分析を踏まえ、給油を受ける機体の受け口(receptacle)外周辺に「scrapes:ひっかき傷」が多数見つかったことから、米空軍は5月1日に「Category One」不具合レポートを発出した
●給油機のブームが相手の受け口周辺と接触することは他の空中給油機でも発生することであるが、その頻度が他機と比較して大きいことから、米空軍はこれを事象として明示して対処することにしたものである
●米空軍は、給油ブームと受けて機体との接触により、例えばF-22やF-35のステルス塗装が損なわれたり、給油ブーム内にステルス塗料や表面材が混入して当該給油機の運航停止につながる可能性を懸念している
●米空軍報道官は、「当該ひっかき傷が誤りや事故により引き起こされたとは見ていないが、接触により各種要求性能値に影響しないかを更なる分析で確認する必要がある」とコメントしている
KC-46 Boom3.jpg●また同報道官は「米空軍とボーイング社は必要な分析を行い、根本原因を追究する」、「分析結果を受け、問題解決策を導出する」と語った
●ボーイング社報道官は「米空軍と共に、懸念事項の解明に当たる」、「他の空中給油機との違いを究明する」、「給油ブームの操作性については、検査官から極めて良好の評価を得ており、操作システム設計については自信を持っている」とコメントしている
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なぜ5月1日提出の「Category One」不具合レポートが今報じられたのか不思議ですが、それ以前から問題が認識されていながら、9月に入った段階の今でも原因や解決策に言及がないことも気になります。
KC-46 Boom4.jpg以前の給油機は機体後部の窓に向い腹ばいになって直接相手機を見ながら給油ブームを操作する方式でしたが、KC-46は、操縦席後方でモニター画面上の相手機を見て操作する仕組みに変わっており何となく素人的には「気合が入らないんじゃないか?」と疑いたくなります
1000回以上の給油実績から導かれた統計データですから、「有意な差」があると誰もがそんなに心配していなかったKC-46A開発にしてもこの状態。つくづく航空機開発とは難しいものなんですねぇ・・・
ちなみに、航空自衛隊も購入することになっています
米空軍の空中給油機ゴタゴタ
「空中給油機の後継プランを見直しへ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-22
「KC-46ブーム強度解決?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-15
「納期守れないと認める」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-01
「Boom強度に問題発覚」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-03
「予定経費を大幅超過」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-21
「韓国はA330に決定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-01
「KC-X決定!泥沼回避」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25

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