次期空軍調達担当次官:F-35の維持が最大の懸念
18日、次の米空軍省の調達担当次官候補であるWilliam Roper氏が、上院軍事委員会の承認を得るため同委員会で質疑応答に登場し、同氏が同次官職に就任した場合の一番の懸念事項がF-35の維持計画とその経費だと証言し、同次官に就任したらまず再確認したいと語りました
William Roper氏の名前に覚えがある方は相当の「通」だと思いますが、国防省の鳴り物入り組織である(あった?)「戦略能力緊急造成室:Strategic Capabilities Office」の初代室長を現在務めている人物です。
このSCOは、鈍重な国防省官僚組織の調達システムをすっ飛ばし、最新の技術を生かした装備品を迅速に実現して前線に投入する特別組織で、カーター前国防長官の肝いりで発足した組織です。
つまりRoper氏は、国防省調達の問題点を知り尽くした人物というわけです。
国防長官直属のSCO室長として、同じ国防長官直属であるF-35計画室の状況は「反面教師」として自然と耳にしてきたと考えられますが、そんな中でのF-35維持体制と維持経費への問題意識です。是非拝聴しておきましょう。
19日付米空軍協会web記事によれば
●18日、上院軍事委員会に次の米空軍調達担当次官候補として証言に臨んだWilliam Roper氏は、もし承認されたら、米国防省最大の購入装備品であるF-35とB-21爆撃機について、その計画と維持計画を詳細に吟味する必要があると所信を述べた
●そしてWilliam Roper氏は、最大の懸念事項はF-35の維持コストであり、仮に米空軍が維持コストを管理できずに低下させられなかったら、押し寄せる維持コストの荒波に次ぐ次と襲われ、米空軍保有の装備体系をも脅かしかねず、最終的にはF-35を計画調達数を下げなえればならなくなると述べた
●またB-21爆撃機についてRoper氏は、まず必要機体数について再検証したいと語り、昨年末に発表された国家防衛戦略NDSや2月に発表予定の核態勢見直しNPRを踏まえた精査が必要だと語った
●そして上記2つの戦略文書を踏まえ、米空軍は爆撃機戦力全体の構成を再検討すべきだと語り、現在3機種(B-1、B-2、B-52)で175機保有している体制の将来像検討が必要だと主張した
●ちなみに、米空軍の元情報部長で退役中将のDave Deptula氏(ミッチェル研究所長)は、120機のB-21爆撃機を含め、爆撃機全体は282機必要だと主張している
●Roper氏は調達担当次官の業務の進め方として、「human-driven」アプローチを提唱し、組織の前線レベルや下層レベルに決定権限を委譲し、プロトタイプによる検証を求めていくと語った。しかし同時に、特定の装備品調達には従来のやり方が必要だとも語った
おまけ:米国防省がベルギーへのF-35輸出承認
(まだベルギーが購入を決定もしていないのに・・・)
●19日、米国務省はベルギーに対し、34機のF-35A型を約7500億円で売却することを承認すると発表した。ただしベルギー政府は正式にF-35購入を決定していない
●相手国が購入を決定していないのに輸出を承認するのは極めて異例だが、最近ではカナダへの18機のFA-18輸出を、カナダが決定すする前に承認している。ただ、カナダのケースでは、貿易紛争からカナダ側が米国の輸出承認を無視する姿勢を見せている
●ベルギーは54機保有するF-16戦闘機の後継機を検討しており、F-35のほかにも仏のRafaleや、Eurofighter Typhoonを候補機として検討が行われている
●しかし、既にグリペンやボーイングはこのレースから撤退を表明しており、業界関係者の中には「実質上F-35で決定している」と語る者もいる
●欧州のF-16保有国は相次いでF-35を後継機にする決定を行っており、既にオランダ、デンマーク、ノルウェーが決めており、ベルギーが採用を決めれば4か国目となる
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無人機の群れ活用を強く主張し、SCO室長として精力的に動き回ってきたWilliam Roper氏に期待いたしましょう。
なお同氏は無人機の群れに関し、米空軍が極めて消極的であると強く批判していたことを紹介しておきます
近く、三沢基地に航空自衛隊のF-35が到着し、部隊建設が本格化するようですが、ため息の出るような労力と人材が投入されるのでしょう・・・戦術で勝っても戦略で負けることが見えているのに・・・
William Roper氏の関連記事
「無人機の群れ第7世代」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-26
「国防省幹部:空軍はもっと真剣に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-30
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