空自が戦闘機部隊増強を持ち出しへ!?
21日付産経新聞は、防衛省が航空自衛隊が保有する戦闘機部隊を、平成25年「防衛計画の大綱」レベルから1個増強し、14個飛行隊とする検討に入ったと報じています。
そして増強する1個の飛行隊は、垂直離着陸型F-35であるF-35Bを新たに導入する部隊で、宮崎県の新田原基地への配備が有力視されていると紹介しています。
なお航空自衛隊が既に導入を決定し、間もなく三沢基地に初号機が到着するF-35は通常離着陸のA型で、B型は米海兵隊が導入を開始して岩国基地にも配備が始まっているタイプです
この戦闘機部隊増強計画は、平成25年「防衛計画の大綱」の年内見直しの焦点の一つだと記事は述べ、中国軍航空機の活動活発化やパイロットの訓練時間確保を戦闘機部隊増強の理由に防衛省は上げているとしています
どこまで記事が本当か不明ですが、ため息が出ます・・・。狭い日本に脆弱な戦闘機を増やしてどうするのでしょうか? 何を考えているのでしょうか航空自衛隊は・・・
まず21日付産経新聞記事の紹介から
●航空自衛隊は平成25年に策定した防衛計画の大綱で、戦闘機部隊を現行の12から13に増やすことを打ち出した。
●空自が導入を決めている空軍仕様のF35Aを42機調達し、F2戦闘機の飛行隊を1個だけの三沢基地(青森県)にF35Aの2個飛行隊を配備することで1個部隊を増強し、現在の12飛行隊から13個にする計画が既に決まている
●ただ、この計画のままでは、全国7カ所の戦闘機部隊拠点のうち、新田原基地だけがF15飛行隊を1個しかない態勢が続く。
●戦闘機部隊は対領空侵犯措置(緊急発進=スクランブル)の任務にあたりつつ、訓練時間を設けてパイロットの技能を向上させることが不可欠だが、拠点基地に置く飛行隊が1つだけだと訓練時間を捻出しにくい弊害がある。
●新田原基地に2つ目の飛行隊を置く場合、空自が新たに導入を検討するF35Bの配備を視野に入れる。
●F35Bは短距離の滑走で離陸し、垂直着陸も可能なため短い滑走路での運用に適している。新田原基地に配備すれば中国による南西方面の離島侵攻に迅速に対応でき、滑走路の短い離島の民間空港を拠点に運用できるほか、平時の警戒監視にも活用しやすい。
●防衛省は海自最大のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」をF35Bの離着艦可能な「空母」に改修することも検討している。いずもが新田原基地から飛来するF35Bを搭載して東シナ海に展開し、離着艦訓練を行えば中国への抑止力と対処力の一層の強化につながる。
米空軍の西太平洋での動きを確認
●米国防省高官が昨年10月、一箇所に戦闘機を集中配備する現状から、第5世代戦闘機を分散して運用する新コンセプトACE(Agile Combat Employment)を西太平洋で進めていると記者団に語り、
●「在日本の米軍最新戦闘機は、(有事に)地域の島々の10-15の未整備な緊急展開基地に分散させる」、「このコンセプトでは、分散した不便な展開場所でも最新戦闘機が作戦可能なように、迅速に兵たん支援も分散支援体制を整える必要がある」、「米空軍は最近のArctic Ace演習などで、燃料の緊急配分訓練をすでに開始している」と説明
●また昨年12月には太平洋空軍司令官も、戦力を分散して柔軟性と強靭性を確保するACEコンセプトに言及し、従来の巨大基地が敵攻撃に対して脆弱だと背景を語っていたところです
●またその背景を同司令官は、、「太平洋空軍の作戦環境は信じられないペースで困難さを増している」と語り、米側が想定していたよりも遥かに速いペースで周辺国の軍事力強化が進んでいると危機感をあらわに語っていたところです
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米軍は、第一列島線上の航空基地など有事に敵攻撃により一瞬のうちに機能を喪失するから、膨大で複雑な地上インフラに依存する戦闘機の運用など不可能だと判断し、グアム周辺のサイパンやテニアン、豪州北部の基地などを含めた航空戦力分散を前提としています
そして分散した航空戦力への燃料支援や整備力支援の態勢をどうするかを検討し、演習を通じて確認を進めています。完全には不可能でも少しでも何かしなければの姿勢で・・・
日本が今更戦闘機を増加することは、税金の無駄遣いと申しあげておきましょう。戦わずして、飛び上がる前に戦力として去勢されてしまうのが落ちでしょう。今まだ散々訴えてきたのですが、こんな方向に進むのでしょうか?
対領空侵犯措置(緊急発進=スクランブル)など、既に中国やロシアに足元を見られており、何の効果もないと申し上げても過言ではないでしょう。空自パイロットが飛行手当を維持するための「お手盛り」とも言えましょうか・・・
4世代機レベルの低価格なお手頃戦闘機で形だけやればよいでしょう。5世代機を導入しても、有事に役に立たなないでしょうから・・・
トランプ政権による「米国製装備買え圧力」もあるのでしょう・・・でも米国装備を買うのなら、日本の脆弱な軍事環境を踏まえ、非対称能力強化や泥くさい戦術に役立つ投資に向かうべきです。戦闘機投資は愚の骨頂です
逆にもしかして、防衛省内でも心ある官僚が戦闘機の無駄を指摘し始めたため、空自の戦闘機命派が13飛行隊体制維持を「落としどころ」に見据え、とりあえず14個飛行隊を打ち出したとの深読み邪推も提示しておきます
米空軍の西太平洋対策
「担当空軍司令官がACEを語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-10-1
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「再度:嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
「嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-23-1
「中国脅威:有事は嘉手納から撤退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13
グアム島の抗たん化対策
「被害復旧部隊を沖縄から避難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-28-1
「テニアンをグアムの代替に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-16-1
「グアム施設強化等の現状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-30-1
「グアムの抗たん性強化策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-30-1
「グアムで大量死傷者訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-08-1
「グアム基地を強固に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-12