4月にも米国が無人機輸出拡大を発表か!?

MQ-9 4.jpg16日付Defense-Newsが米国務省高官の話として、オバマ政権が2015年に定めた無人機輸出指針を改め来月にも米国の新たな無人機輸出指針を明らかにする方向だと報じています。
昨年8月Defense-Newsが最初にスクープしたトランプ政権による本政策見直し開始は、アメリカ・ファーストである大統領の姿勢を受け、米国製無人機のコピー製品で世界市場に猛烈な売込みを行っている中国や、無人機利用の先駆者であるイスラエルなどに世界市場で劣勢にある中で、米軍需産業からの強い見直し要求があるからだといわれています。
特に米国製をコピーしたかのような中国製無人機が、米国の戦略的パートナーであるUAEやヨルダンやエジプト軍に2016年から導入開始されるようになってからは、一段と米国政府の姿勢に対する疑問の声が高まっていたようです
ただし米国無人機輸出の足かせは、単に輸出許可手続きの鈍重さや米国独自の自主規制だけでなく、国際的な兵器技術管理枠組みであるMTCR(ミサイル技術管理レジーム:Missile Technology Control Regime)の制約を受けている点にあります。
MTCR2.jpgMTCRは主要な西側35カ国が加わる本枠組みで、「搭載能力500kg以上かつ射程300km以上の完成したロケット・システムや完成した無人航空機システムの輸出」を事実上禁止しており、軍事技術の拡散防止の使命を担って、2017年4月に創設30周年を祝ったばかりの枠組みです
米国内には、仮にMTCRの変更に動こうとすれば30カ国以上から賛同を得る必要があるが、単に米国政策の修正であれば容易だとの主張もあるようですが、いずれにしても、特に攻撃用無人機の輸出を極めて厳しく規制しているMTCRの「輸出規制想定:presumption of denial」を、どのように解釈変更するかが課題と言われています。
またMTCR制約の無視や解釈変更は、当然同時に、MTCRの目的である非拡散より、米国は政治的&軍事的利益を優先するとの解釈変更を世界に発信し、国際社会の中での米国の立場変更を宣言することにもつながる重い判断を伴うものです
ご紹介する記事は見直しの方向性を明示しているわけではなく、漏れ聞こえてくる情報を紹介するものですが、最近激動のトランプ政権の行方を占う動きの一つですのでご紹介しておきます
16日付Defense-News記事によれば
MQ-9 5.jpg●16日、国務省のMichael Miller軍政問題担当次官補代理が、来月にも新たな無人機輸出政策指針を明らかにすることになろうと語った。
●同次官補は細部は承知していないとしつつも、現在の方針見直しが進められており、近く公開バージョンの新たなガイダンスが公表されるだろうと語った
●本件については昨年8月に検討開始を報じたが、その際はトランプ大統領の米国製品輸出拡大方針を受け、昨年9月にも新指針が出るとの情報もあった。
●その後、昨年12月には、トランプ政権がMTCR枠組みの変更も検討しているとの情報を入手して報じたところであった
●その際の情報では、MTCRの「category-1」に含まれ輸出が厳しく規制されている「搭載能力500kg以上かつ射程300km以上の完成したロケット・システムや完成した無人航空機システム」の中でも、「速度が時速650㎞以下」の無人機システムを、規制が緩い「category-2」に落とす改正を追及しているとの話があった
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MTCR.jpgロシアや中国やNKやイランが好き放題やる中、創設30周年のMTCRの存在意義に疑問を持ち、INF全廃条約と共に、なくしてしまえ・・・などと考えているまんぐーすですが、トランプ政権が混乱の中でドタバタとその決断をするとなると不安です
記事が報じる方向に米国が進むとすれば、米国が「不拡散」追及から、インターオペラビリティー確保等の名の下に、米国製製品の売り込み&軍需産業の利益優先を宣言するとも解釈でき、西側諸国の足並みまで乱しそうで不安です。
外務省によるMTCR解説
→http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/mtcr/mtcr.html
「米国政府が無人機輸出規制の見直し開始」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-04
中国と無人機
「中国がサウジで無人攻撃機の製造修理」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-29
「中国が高性能無人機輸出規制?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03
「輸出用ステルス機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-27

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