2月28日と3月1日、現在の米サイバーコマンド司令官Mike Rogers海軍大将と次の司令官候補者(現陸軍サイバーコマンド司令官)Paul Nakasone陸軍中将が、上院軍事委員会で証言し、米軍のみならず米国が直面しているサイバー脅威の最新動向について語りました
2014年から同司令官を務めるRogers大将は現状の組織課題も含め、次期司令官候補のNakasone中将は承認を得るために広く脅威認識を語っています。
サイバー分野はなかなか細部の具体的説明が出てこない抽象的な話が多いのですが、2名の米高官の証言がまとめて聞ける機会ですので、概要をご紹介します
現司令官Mike Rogers海軍大将は
●米国のインフラに対するサイバー脅威認識は良く浸透してきたが、対処の程度は分野によりまちまちである。よくやっている分野もあれば、そうでない部門もある
●(サイバー攻撃による)データ操作data manipulationが大きな問題になってきており、事態は深刻化している。理由はそれを重要分野と戦略的に位置づけているロシアが参戦してきたからである
●一方で非国家プレーヤーに関しては、私が予期していたほどには活動を深化させてはおらず、少し驚いている。犯罪組織は相変わらずだが。
●過去4年間の成果としては、サイバーコマンドが他の主要コマンド(中央軍、特殊作戦軍、太平洋軍など)との作戦融合を進めた事で、ゼロからの開始でゆっくりだったが、始めたことが重要だ
●今後さらに進めたい点は、サイバー兵器や能力開発であり、各軍種や他コマンドの用途に合ったものの協力開発である
●後任者への助言としては、サイバー組織の再検討である。現在の組織は10年前の世界に適応したもので、サイバードメイン活動が活発化した過去10年の教訓をもとに見直す必要がある。
●特に民間組織との協力や、契約企業との役割分担や協力関係の在り方である。またサイバーコマンど外の組織との融合作戦の在り方検討である
次の司令官候補者Nakasone中将は
●米国の敵対者は、米国に対するサイバー攻撃の結果やリスクをほとんど気にしていない。米国にサイバー攻撃を行っても、彼らに跳ね返りがあるとはほとんど考えていない。彼らは米国を恐れていない。
●そして、米国が行動を起こさないでいることを長く続ければ続けるほど、敵対者は自分勝手な規範を確立して好き放題を長く続けるだろう
●米国に対するサイバー脅威は級数的に増大し、柔軟な対応力も増しており、ネットワーク侵入、SNSによる偽情報の拡散、破壊的攻撃などが拡大している
●一番の懸念は、米国インフラへの脅威で、ネットワークでなくデータへの脅威も大きな心配である。データが悪意を持って操作され、それが経済や国防システムだったら、兵器内のコードや設定値だったら、如何に危険かをご理解いただけるだろう
●人工知能AIや量子コンピュータ技術の出現が、脅威となりえることも想定すべきで、米国よりもこれら技術を相手が手にしたら、それは「game-changer」になるだろう
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現場を預かる司令官の立場からすると、「もうそろそろしっかり反撃しておかないと、敵になめられてますよ!」と訴えたいのでしょう。シビリアンコントロールの社会を考えれば、精いっぱいの要求表現だったと思います
「データ操作data manipulation」との懸念が両将軍から語られています。痕跡を残さず、相手兵器を無効化しておく、または発射したら自分に向かって飛んできた、その場で爆発した・・・なんて漫画のようなことを恐れる時代になったということでしょうか・・・
民間ハッカーにチェックを依頼
「米空軍ネットをハッカーがチェック」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-23
「発展版Hack the Pentagon」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-16
「米国政府サイバー予算の9割は攻撃用!?」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-31