T-38後継T-Xにボーイング製を選定

T-X  Boeing2.jpg9月27日、ボーイング社は昨年12月に提案要求書RFPが示され本格化していた米空軍次期練習機の機種選定で、米空軍がボーイングとSaab共同チーム案を採用を決定したと発表しました
米空軍が50年以上使用している420機のT-38後継として、少なくとも351機とシミュレーター46台、最大で475機と120台を導入する大きなプロジェクトですが、米空軍が2.2兆円を予期していたところ、ボーイングチームは1兆円も安い額($9.2 billion)で落札したようです
T-X  Boeing3.jpgこの機種選定には、RFP発出直後に撤退を決めた「Northrop Grumman/ BAE」チームや「Raytheon, Leonardo and CAE」チームのほか、最後まで戦った「ボーイングとSaab」チーム、「Lockheed Martinと韓国KAI」チームのT-50練習機改良型、そして詳細は不明だが「Sierra NevadaとトルコのTAI」チームが参戦したいましたが、ボーイングチームのみがベース機の無い新型機を提案していました
最後の3チームの中では、ボーイング案が最も有利とみられていましたが、最近ボーイングは、初の艦載無人給油機MQ-25Aや米空軍ICBMサイト警備監視ヘリUH-1後継機も落札しており、低価格で他社を蹴散らすその猛烈な営業姿勢が注目されています。
特にUH-1N後継機では、米空軍が約4500億円を予期していたところ、約2500億円で落札したと発表されており、米空軍は競争入札の効果だと自画自賛しているところです
27日付Defense-News記事によれば
●米空軍の提案要求書によれば、ボーイング社らは、2023年に最初のシミュレーターを納入し、2024年末までに初期運用体制を確立することを求められている
T-X compe.jpg●ボーイングチームは、当該機体のベースとなる機体はないが、最新の信頼できる技術やF-16で運用実績がある脚を使用することで開発リスクは十分低減できると自信を持っている
●また、訓練生が搭乗する前席の様子を後席の教官が目で確認できる構造のコックピットになることや、維持整備費が削減できることをアピールしている
●ボーイングは、F-15やFA-18を製造しているセントルイスの工場でT-Xを製造する予定だが、仮にT-X契約を獲得できなければ、同社は小型機ビジネスから撤退し、同工場も閉鎖する方向だった
●27日、米空軍のWill Roper調達担当次官等は、あくまでも約1兆円の総経費は全てのオプションを米空軍が行使した場合だと説明し、当初2つの生産ロットは経費インセンティブ付きの契約となるが、それ以降のロットは基本的に固定経費契約にする計画だと説明した
●また、同次官らは、敗れた企業が選定結果に不服を申し立てることがないよう、選定作業開始時から意思疎通を図ってきたと力説した
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TX-Boeing.jpg依然もご紹介したように、T-Xは米空軍が取り組む調達改革の試金石とも言える調達事業です。
米空軍が掲げる「早い段階からの企業との情報共有」、「コストと性能のトレードオフを精査」等々の指針に沿い、通常より1年近く余裕をもって2015年3月に要求性能案が公開され、企業とじっくり検討した後に提案要求書(RFP)が決定、昨年12月30日に発出されたところです。
とりあえず、GAOに対する選定に対する不服申し立てがないことを祈念いたします・・・
ボーイングチームは、F-35導入国を中心とした諸外国にも高等練習機としてT-Xを売り込みたい(売り込める)と考えており、強気の価格で応札したと考えられています。
現在ボーイングは米空軍の次期空中給油機KC-46A(固定価格契約)で、3300億円以上の自社持ち出し状態にあるのですが、その強気の背景が単に企業規模なのか、どこかで挽回するのか気になるになるところです・・・
T-X関連の記事
「T-X選定から候補が続々脱落」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-02
「T-X提案要求書発出」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-01
「ボーイングがT-X候補発表」→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-16
「T-X要求性能の概要発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-23-1
「シミュレーターが重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-21

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