12回目の演習に日本が初めて参加
FVEYに加え、独仏と日本が・・・
11月25日付朝日新聞デジタル版が、10月9-19日にアラバマ州の空軍基地で開催されたサイバー宇宙机上演習「Schriever Wargame」に、日本が初めて参加し、自衛官だけでなく、防衛省、外務省、内閣府、内閣衛星情報センター、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などのメンバーがチームとして課題に取り組んだと報じています
このサイバー宇宙机上演習「Schriever Wargame」は、ICBM開発や宇宙活用に貢献したシュリーバー退役空軍大将の名を冠し、官民一体となって宇宙空間での戦いを想定した状況対処に挑むもので、米軍の宇宙関連の部隊や米政府機関からの約350人のほか、日本を含む7か国(米英加豪NZ仏独)が参加しました
本演習が官民一体型で多国間協力を重視するのは、宇宙ドメインのプレーヤーが多岐にわたり、各プレーヤーのアセットや能力を総動員しないと、何が起こっているかの状況把握さえも難しく、更に級の周り全周の宇宙状況を把握するには、地球の裏側の国と協力せざるを得ないからです
また宇宙アセットへの敵の攻撃や我の行動は、衛星通信等を通じて金融やメディア等々の活動への影響も大きく、軍や官だけで作戦判断を下すことが難しいからです。
まぁ演習の性格上、その細部は不明なのですが、日本ではめったに見られなく極めて珍しい複数の政府機関が参加した祈念すべき第1回の参加ですので、ここに至るまでの関係者の努力に敬意を表し、朝日新聞の記事をご紹介いたします(有料記事でさわりだけですが・・・)
11月25日付朝日新聞デジタル版記事によれば
●米アラバマ州マックスウェル空軍基地内の一室。米国、英国など国ごとに仕切られたブースの一つで、日本の防衛省、外務省、内閣府、内閣衛星情報センター、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの職員が机上のパソコン画面を見つめていた
●今年で12回目。NATO加盟国の一部が加わった年もあったが、多くは軍事情報収集の世界で「Five Eyes」と呼ばれる米、英、豪州、カナダ、ニュージーランドの5カ国を中心に続けられてきた。そんな「極めて秘匿性が高いインナーサークル」(自衛隊幹部)の演習に日本が招待を受け、今年、初めて参加したのだ。
●演習の内容は「機密」扱いだが、複数の政府関係者によれば、想定はこんなシナリオだったという。
●想定シナリオ→→2028年。太平洋からインド洋の東側までを担当する米インド太平洋軍の管内で、米国の偵察衛星や通信衛星が「ある競合国」から攻撃や電波妨害を受け、軍事作戦に欠かせないGPSシステムもダウンした・・・
●演習では、シミュレーションが繰り返されたという。衛星が使えなくなった米軍が作戦を続けるために、欧州の測位衛星システム「ガリレオ」や「日本版GPS」と呼ばれる準天頂衛星「みちびき」では、どんな支援ができるのか。
●米軍が他国の暗号コードを使うための技術的な課題やそれぞれの国の国内法上の制約は何か。各国で対応を検討し、米国と調整を重ねた。もはや日本も無縁でなくなっている。
●背景にあるのは、現代戦における「宇宙」の比重の大きさだ。新たな防衛大綱の策定に関わる政府関係者はこう話す。
●「弾道ミサイル発射の兆候も含めて情報収集や警戒監視、通信、測位、気象観測……。陸海空の作戦と装備は、宇宙に深く依存している。相手の宇宙インフラを使えなくすれば、死傷者を出さずに陸海空の戦いで圧倒的に有利になる。だから、現代の戦争は宇宙とサイバーから始まる。宇宙を制する者は現代戦を制すだ」
●宇宙政策に詳しい鈴木一人・北海道大学大学院教授は「南シナ海で米中の軍事的衝突の恐れが高まった時、最初に狙われるのは宇宙システム。米国の衛星が攻撃を受けたときに、同盟国と連携して被害を最小限にとどめ、リスクを分散し、機能を維持していけるのかを探るのが演習の狙い」と解説する
●宇宙を舞台に「米VS.中国・ロシア」という対決の構図が鮮明になりつつある。一方、人工衛星やロケット開発で生じた大量の宇宙ゴミは、各国共通のリスクだ。防衛省・自衛隊は、後者の解決への協力を窓口に、宇宙への関わりを深めようとしている
ご参考
米軍のアジア太平洋エリアでの宇宙作戦の問題点
●中東戦域での様々な作戦要求に対応するため、運用要領や戦術や人員配置を改革してきたが、その代償としてアジア太平洋地域への対応準備が不十分。
●アジア太平洋戦域での宇宙管制任務は、極めて難しいものになる。そして大きな課題の一つが技術的なもので、マルチバンド周波数の必要性関連で、太平洋域の厳しい軍事環境では周波数ホッピングが求められるが、単一バンド周波数対応の現在の受信機にはその能力がない
●更にそのような厳しい環境下で任務遂行するための最先端の訓練が不十分で、また部隊体制も整っていない
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いつまでたっても日本はこの重要な演習に関われないで情けない・・・と、このブログでボヤいていたら、ツイッター上で読者の方から、「まだ公にはなりませんが、着実に前進しています」といった趣旨のアドバイスを頂いたことがあります
「外圧」もあるのかもしれませんが、あまり仲がよさそうとも思えない、防衛省、外務省、内閣府、内閣衛星情報センター、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共に参加したということですから、素晴らしい1歩とお伝えしておきましょう・・・
防衛省はどんなメンバー編成で参加したのでしょうか? 航空総隊に宇宙空間担当部隊を新編するとの予算要求のニュースも耳にしましたが・・・
宇宙での戦いに備え
「同盟国にも訓練を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-21-2
「アジア太平洋での宇宙作戦が困難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-10-1
「米高官が不審な露衛星を」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-15
Schriever Wargame関連の記事
「米国が日本を誘う・・・」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-3
「日本は不参加:米軍宇宙サイバー演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-14-1
「欧州を主戦場に大規模演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-11
「Schriever Wargame」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-19
「サイバーと宇宙演習の教訓1」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-01
「サイバーと宇宙演習の教訓2」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-02