国防費削減を巡り大統領VS両院軍事委員長&マティス

11月30日 両院軍事委員長がWSJに「国防予算削るな」投稿
12月1日  国防長官「財政と国防は両立する」
12月2日 トランプ「軍拡競争予算はCrazyだ」
12月4日  国防長官と両院軍事委員長が大統領と議論
Trump-NATO.jpgトランプ大統領が中間選挙前の10月16日に、世論の動向から財政健全化に「突然変身」し、全閣僚に2020年度予算案は前年度5%カットで持ってこいと指示し、国防費についても当初計画の$733 billionから$700 billionだと言い放って1月半。両院軍事委員会の委員長とマティス国防長官が巻き返しに動き始めました
11月30日付WSJ紙に両院の軍事委員長(今はともに共和党議員)が「Don’t cut military spending, Mr. President」とのタイトルの寄稿を行い、「国防予算を少しばかり削減しても財政赤字への影響はわずかだが、軍事力とその装備に与える影響は手痛いものとなる」と訴え、更に「最優先事項は前線兵士たちである。今後の国防費カットは、(過去2年間の国防費の伸びから)意味のない後退である」と主張しました
翌12月1日、両軍事委員長の主張を引き継ぐ形で、マティス国防長官が主要な国防関係者と軍需産業関係者が集まった「Reagan National Defense Forum」で講演し、「財政的な主権維持と戦略的な主権維持は両立しうる」、また「国防予算カットは我が兵士と米国民を危険にさらすものだ。米国はその生存に必要な予算を支出することが可能な国だと皆が知っている」と大統領の攻防費削減指示を批判的に表現しました
mattis senate2.jpg一方で講演後の質疑でマティス長官は「らしく」、「大統領が議会に提出する予算編成過程における正常なやり取りだ」、「大きな課題だが、必要以上の国防費を使いたいとはだれも考えていない」と述べ、更に「大統領には国防長官からの助言を行う。そして助言を公言する前に、大統領に直接伝える責務を負っている」とその律儀な姿勢を保っています
しかしトランプ大統領はこれらの声に反応したのか、全く関知していないのか定かではありませんが、2日にはツイッターで「軍拡競争による国防費の増大はばかげており、習近平やプーチンと遠くない将来議論したいと思う。今年の軍事予算$716 billionはCrazyだ」とつぶやき、脅威対象と手を組んでも国防費を削減したいとの意気込みを(?)を表現しました
そんなガチンコ対立の中の12月4日両院軍事委員長とマティス国防長官がホワイトハウスを訪問し、トランプ大統領に国防費カットを思いとどまるよう訴えに行きました。国防費を巡るこの協議後の両院軍事委員長や国防長官からの発言をご紹介します
4日付Defense-News記事によれば
Inhofe.jpg●4日に会談が行われることをワシントンポスト紙が最初に報じたが、訪問した3名の戦略は、トランプ大統領がしばしば批判するオバマ大統領を持ち出し、オバマの誤った過去の国防費削減を取り戻すべきだと訴えるものだったようだ
下院軍事委員長の補佐官は会談後、「まずオバマ政権時の予算削減が米軍に与えたダメージをレビューし、一方でトランプ大統領就任後は、選挙時の約束を守ってオバマ時代のダメージ修復と軍事力復活に継続して取り組んできたと確認した」と様子を説明した
●会談後に上院軍事委員長は「国家安全保障目標に関する率直で建設的な意見交換ができた。我々は国家防衛戦略NDSを遂行するため、オバマ時代のダメージを修復し、米軍を再構築する必要があるとの目標を共有した」と述べ
Thornberry4.jpg●更に「会談を通じて大統領は、我が国を強くし米軍に適切に投資し続ける決意をしたと確信している」、「今後もトランプ大統領及びペンス副大統領と協力していくことを楽しみにしている」とのステートメントを発表した
●ただし来年、下院軍事委員長は現在の共和党議員から、民主党の国防費削減を訴えてきたAdam Smith議員に交替する。
●また上院でも、有力な軍事委員会委員であるJack Reed議員が、「国家安全保障は国防費だけで論ずることはできない」と訴え続けており、「国務省も、FBIなどなども含め、効率的に総合的に国家安全保障を考えるべきだ。現状は効率的でも効果的でもない」と述べた
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Smith A2.jpg簡単にトランプ大統領が国防予算だけ例外にするとは考えにくく、財政赤字に敏感な民意を意識しての「方針転換」ですから、国家予算全体の5%カット路線が動くことはないでしょう
更に両院のねじれ状態もありますし・・・
次は日本に何を売り込んでくるのか・・・
米軍への態度豹変 トランプの姿勢
「トランプが閣議で次年度予算5%カット指示」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20-2
「前線部隊を激励訪問しない大統領」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-23
トランプに困惑の現場
「相手の核を削減させるのが上策」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-16
「サイバー戦略がもたらすもの」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-02

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