初代格上げサイバー司令官は日系3世

ナカソネ司令官のご活躍に期待
他省庁とのサイバー協力にも力点
Nakasone.jpg14日、格上げされたサイバーコマンド司令官Paul Nakasone陸軍大将(兼ねてNSA長官)が上院軍事委員会で、最近のサイバーコマンドの取組等について語りました。
ナカソネ大将は3代目のサイバーコマンド司令官で、またサイバーコマンドが2018年4月に大統領直属の「Unified Command」に格上げされて最初の司令官です。
この「Unified Command」とは、太平洋軍や中央軍などの地域コマンド6つと、特殊作戦軍や戦略軍など機能コマンド4つの計10コマンドを指し、隷下に4軍の部隊を戦力として運用し、先に述べたようにその司令官は大統領が直接の上司になる作戦単位の最上位部隊単位です
Cyber-new1.jpg言うまでもなくサイバードメインは今最も関心の高い分野ですが、国としての防衛を考える際、敵が狙うのは軍事目標だけでなく、重要な社会インフラである通信、エネルギー、金融、交通インフラなど国防省が管轄していない目標であることから、その仕切りが民主主義国にとっては悩ましい課題となっています
つまり、多くが民間の商業ベースで運営されていたり、また個人のプライバシーにかかわる社会インフラ分野で、「軍の役割は以下にあるべきか?」という難問が、サイバーコマンドの作戦議論の前に立ちはだかっている状態が続いています。
大前提は国防省のネットワークを担当するのが主任務ですが、国家安全保障を考えた場合、そこで立ち止まっていてはすぐに限界に直面する難しさがサイバードメインの宿命です。
日系2世の父親はWW2で情報将校の陸軍大佐として活躍され、自身も同じく陸軍の情報将校としてキャリアを重ね、将官昇任後にサイバー分野に関わるようになったナカソネ司令官のご活躍を祈念し、サイバーコマンドの状況をご紹介します
14日付米空軍協会web記事によれば
Nakasone cyber2.jpg●ナカソネ司令官は上院軍事委員会で、主要な懸念対象である中国、ロシア、北朝鮮、イランやならず者国家に対応するため、133個のサイバー対処チームを統合部隊として編成完了したが、あくまでこれは初期段階に過ぎず、さらに増強する必要があると証言した
●同大将は「様々な脅威対象への即応体制を考えた場合、現有の戦力はその構成要素であるが、これらに戦略的縦深性を増すため、陸軍の予備役や州軍にもサイバー対処チームを編成する取り組みを始めている」と述べた
133の「Cyber Mission Force teams」は計画よりも編成が少し遅れたが、昨年態勢を整えた。なお、このほかに国防省には、別の攻撃と防御作戦を担うサイバー作戦チームが存在する
●「Cyber Mission Force teams」は約6200名で構成されており、以下の4つの任務区分に分かれている
Cyber national mission teamsは、敵の活動を察知し、攻撃をブロックして撃退する
—Cyber combat mission teamsは、世界中の地域コマンドにサイバー作戦能力を提供する
—Cyber protection teamsは、主に国防省ネットワークの防御に当たりつつ、攻勢的サイバー作戦の準備もする
—Cyber support teamsは、サイバー関連分析を提供し、「national and combat mission teams」の計画支援を行う
いくつかある課題の中で、同司令官は中核となる優秀な人材に触れ、「ソフト開発やマルウェア分析に、通常の兵士の10倍20倍の能力を持つ人材(10 or 20 x type of people):the best of the best」の確保・維持が課題だと述べた
●また司令官は、同司令部幹部が、敵対的行動をとるものに対して官僚機構の制約なくより迅速に対処できるような枠組み整備のため、議会に要望や働きかけを行っているとも説明した
Nakasone cyber.jpg●議会の理解を得て、2019年国家授権法がサイバーコマンドから国土安全保障省に対する支援を迅速に行える枠組みを整えたおかげで、エネルギー関連インフラの安全確保などでの連携が円滑になったと感謝の意を同大将は述べた
●「国防省内に他省庁との協力強化のための先駆的プログラムを立ち上げ、国土安全保障とは定期的な情報共有会議を設け、エネルギー省とは定期的な協議の場を持てるようになった」と進展を説明した
●今後について同司令官は、更なるサイバー関連インフラ、センサー、人材を含む能力強化により、デジタル戦争体制を強化することで米国全体の能力を進展させる必要があるとし、併せて、サイバー衛生環境やソフトセキュリティーの基準設定の重要性についても訴えた
●そして同司令官は「今最も重要なのは、それが米軍内組織であろうと他省庁であろうとも、パートナーを機能できるようにすること(to enable our partners)」で、「国土安全保障省やFBIを例に、near-peer 敵対者に備え、力をつけてもらうことである」と表現した
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まだまだ「定期的な」情報共有なりミーティングレベルと言えばそれまでですが、民主主義国の限界でしょうか・・・。
Cyber-new2.jpg縄張り意識が強く、かつ新たな仕事に消極的な各省庁を動かすのは大統領でありホワイトハウスなんでしょうが、安全保障は「票」になりにくいですから、負担やコストが増しそうな、ややこしそうなサイバーに取り組ませるのは難しいのでしょう。日本などもっと難しそうな気がします・・・
ナカソネ大将のご活躍に期待いたしましょう。日本も巻き込んでくださいね!
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