退役を前に歯に衣着せぬ本音を連発
国防省に協力せず、中国にAI開発拠点を置く同社を酷評
グーグル幹部と面談し直接議論すると
21日、Dunford統合参謀本部議長がAtlantic Councilで講演し、前週の上院軍事委員会での証言に続き、中国国内にAI開発センターを解説したグーグル社を「間接的に中国軍に米国の最新技術を提供するようなものだ」と酷評し、米国の国益を害する大きな問題だと表現し、直接グーグル幹部と面会してこの問題を取り上げると訴えました。
背景には、米国防省との共同プロジェクトに背を向けたグーグル社への思いもあるようですが、中国国内に拠点を設けること自体が情報流出につながるり米国益に反する、とするとの極めて厳しい主張を、丁寧に説明しながら語るその様子から、夏に退役を控え「失うものは何もない」との思いもありそうですが、「米国の技術優位が保てない」との危機感が相当強いものと解釈しました
それにしても、中国への敵意は相当なものです。講演の中ではロシアについても触れており、特に欧州正面での状況に相当の危機感を訴えてはいるものの、ここ1-2年のシリア周辺での兵力直接対峙の中で、現場レベルでの意思疎通を通じて危機を回避してきた「手ごたえ」や「話はできる」感覚があるようで、また「プーチンが把握している」との認識もあるようで、明らかに中国とは違うとのニュアンスで語っており、中国の異質感を際立たせています
以下では、同講演でDunford議長が中国を表現した部分をピックアップしてご紹介します。強烈ですよ。その通りだと思いますけど。
21日付Defense-News記事によれば
●私の認識では、中国軍を支援するような行為は、米国の国益に反する行為である。グーグルの行為は間接的に中国軍に便宜を図っている
●一般的に、中国国内でビジネスを行う企業には、その現地法人内部に中国共産党の組織を設けることが求められるが、この組織から知的財産が流れ出て中国軍の手に渡るのだ。中国共産党と中国政府、そして中国軍には区別はない。中国から技術を吸い取られることなしに、中国内でビジネスを行うことは出来ない。
●中国国内でAI技術を開発しようとするベンチャー企業は、2つの行為を行っていることになる。一つは中国国民を支配する専制的な中国政府を助ける事。中国政府は国民のためでなく、中国共産党のために存在することを忘れてはならない
●二つめは、米国内で開発された最新技術を、中国軍に利用させる便宜を図ることである。米国では、例えばシリコンバレーでは、最新技術は人々や社会の発展のために開発されているのに・・・(中国では共産党のために利用されている)
●来週にもグーグル幹部と面談する予定である。この面談は、単に私とグーグルの間の面談ではない(米国社会とその技術を中国に横流しするグーグルとの対峙の場である)
●本件についてグーグルとディベートする必要がある。中国でビジネスを行うということは、単にビジネスを行うということではないのである。中国におけるsecond and third-order effects of our business ventures について考えなければならないのだ。
●これが(米中が覇権を争う)AI技術に関することだから、中国にAI開発拠点を設けたグーグルのことだから公の場で取り上げているのだ。中国に拠点を展開するベンチャーが間接的に中国軍に技術を提供して便宜を図り、米国技術優位を脅かすことになっているのだ
●(5G技術の問題についての質問に対し、)AI技術だけが問題になっている訳ではない。中国製の5Gネットワークは極めて重要な安全保障上の課題で、米国だけでなく同盟国と共に対応しなければならない問題だ
●将来の5G関連技術は信頼できるものでなければならないが、信頼できない5G技術の方向に向かっているのではと懸念している。米国企業が5G技術を支配し、米国益に沿うものである必要がある
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中国に進出している企業をすべて敵に回しそうな発言ですが、米軍人トップであるDunford統合参謀本部議長の言いぶりには全く躊躇やためらいはありません。
いくら退役直前とはいえ、ここまでキッパリと個人的意見だけで訴えるとは思えず、米国防省や政府全体の「GAFA」への思いが飛び出したのかもしれません。
遠くない将来、米国内では働く中国人にも厳しい目が向けられるのでしょうか???
ロシアについて語った部分はこちらに
→http://www.airforcemag.com/Features/Pages/2019/March%202019/Dunford-Talks-Russian-Chinese-Threats-During-Atlantic-Council-DIscussion.aspx
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