「米空軍予算案にF-15Xは入っていなかったが・・」

「米空軍の意思決定ではない」
20年以上も米空軍は新造旧型機購入を拒否してきたが
「F-35維持費が4世代機並みになると想定するのは非現実的」
F-15 upgrades.jpg2月28日、毎年恒例の米空軍協会主催の航空戦シンポジウムでの記者会見でWilson空軍長官とGoldfein空軍参謀総長は、3月中旬に国防省が議会に提出予定の2020年度予算案でのF-15Xの扱いに言及し、「予算案に含まれている」、「しかし米空軍は希望していなかった」、「F-35が欲しかったが、維持費等を含めたトータルコストが高くできなかった」と苦しい説明に終始しました
このシンポジウムは、米空軍応援団である軍需産業関係者や空軍OB、更には関連メディアや専門家が一堂に関する大イベントですので、新造の旧型機を購入するという過去20年間無かった米空軍の「タブー」を犯すに至った経緯を、厳しい予算枠と「外圧」の2方面から「本音も交えつつ」「どっちつかず」の説明になったのでしょう。
F-35 3-type.jpgメキシコとの国境の壁予算等を巡り、例年2月下旬だった予算案発表を、3月中旬まで遅らせている中で、フライングで「F-15Xが含まれている」と認めざるを得ない背景には、F-15Xに大反対の軍需産業やシンクタンク等に多数存在する米空軍OBからの厳しい突き上げがあったものとも邪推できます
しかし、原因は明確です。F-35の導入初期費用や維持費が高すぎ、将来も下がる見通しがないからです。
F-15Xの機体価格が不明確で、F-35より高いと言われる中ですが、明白なのは、第4世代機の2~3倍と言われるF-35の維持費に加え、F-35受け入れのために基地施設改修費や人材養成費、ステルス維持整備施設の新設費など、言い訳のできないコスト増がF-35には付きまとうからです
空軍長官、参謀総長、ACC司令官の発言より
空軍長官は、米空軍はF-15Xを望まなかったが、国家防衛戦略NDSが必要としする戦力量を確保するため、他組織の力でF-15Xが予算案に付け加えられたと述べ、同時に今の段階では維持費が高すぎ、F-35で必要機数を調達することができないとも説明した
Wilson6.jpg●長官は、「自分が望むなら、他人に任せてはだめだとの格言があるが、今回の予算編成は大物が割り当てられてられた後に、残り部分を空軍内で議論するようなことになっており、空軍の意思決定で無いものが含まれている」と語り、「大統領の予算案に国防省案が巻き込まれている」とも表現した
●長官はまた「米空軍の当初案には第4世代機など含まれていなかった」、「旧世代機を新たに調達することなど過去20年間無かった」とも述べた。一方で「空軍作戦機の若返りを図るため、年72機を調達したい」とも表現した
空軍参謀総長は、「3000もの膨大なパターンの戦力組成でシミュレーションを行ったが、明確になったのは、戦闘コマンドの要求に答えるには規模を現状より大きくする必要性であった」、「F-35はクォーターバックとしての役割を将来航空戦で果たす」、「しかし戦いの勢いを維持するには、戦闘機体制の容量も必要だ」とも語った
Goldfein112.jpg●参謀総長は「72機全てをF-35でまかなうことは予算上できない」と述べ、F-15はF-35より安いのかとの質問には、「分からない。どのようなF-15が提示されるのか知らないが、機体価格は評価の一側面に過ぎない」と説明した。
●空軍長官がすぐに補足し、機体価格の直接比較は行わなかったが、「機体価格だけの話ではなく、ライフサイクルコストの評価である」と述べ、参謀総長は「F-35を購入する国は全て、ステルスや電子装備維持が複雑で高価なことを承知している」、「F-35維持費が第4世代機並みに低下すると想定するのは非現実的だ」と本音ともいえる発言で説明した
●更に空軍長官は自動兵站情報システムALISの現状について、基準時間を毎週10~15時間も超過して残業しないとならない状態だと整備員から不満が続出しており、国防省F-35計画室とは別にロッキード社と直接協議を始めていると、問題の根深さを示唆した
●空軍戦闘コマンド司令官(戦闘機族のボス)Holmes大将は、年72機を毎年の調達目標にするのが空軍機若返りには良いし、その全てを5世代機にすべきというのが米空軍の立場であると述べ、F-15X購入については、「空軍の考え方も、国防省の見方もある。そして議会が最終的な予算案審議権を持っている」と表現した
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米空軍としてNDS実現のために必要な規模を健全な若さで確保するには、年間72機調達が必要だが、爆撃機や練習機や給油機や核兵器システムや宇宙やサイバー投資もあり、年72機も維持費等が膨大で下がる見込みのないF-35を購入できない・・・。
F-15 upgrades4.jpgそんな明確な現実の中で、自らF-15Xを購入すると言い出せない米空軍に代わって、誰かに「F-15Xを予算案に入れろ」と言わせ、「外圧」を理由に収めようとしている・・・感が漂っています
もちろん、国境の壁など、トランプ政権の出たらめな政策で予算を吸い取られる国防省は「ご愁傷様」なのですが、F-35への固執で自己矛盾を増幅させている米空軍幹部の様子は哀れにも見えます
それと・・・F-35は本当に「亡国のF-35」です・・・破壊的です・・・
F-15X関連の記事
「参謀総長F-15Xを強く示唆」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-31-1
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「米空軍がF-16延命へ:F-15C退役に弾み?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-13
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