防衛省局長のレターを米軍事メディアが入手
日本はトルコの抜けた穴を狙うのか
パンドラの箱を開けたくない米国は断る方向
29日付Defense-Newsがトップ記事で、日本の防衛省整備計画局長が19日付レターで米国防省Lord兵たん担当次官に対し、現在は単なるF-35購入国である日本が、F-35の今後の改修計画を定め、部品製造などを優先して担う「F-35パートナー国」に加わることが可能か、またその条件等を質問してきているとの記事を掲載し、日本からのレターの内容を詳細に報じています
また米国防省側の対応として、日本は米国に次ぐF-35の大量購入国であるが、2002年に締め切っている「パートナー国9か国」参加の門を特例で日本に開くようなことになれば、同じF-35購入国レベルである韓国やイスラエルもパートナー国入りを要求してくる可能性があることから、日本の問い合わせに「No」回答をする方向だと紹介しています
ただ専門家は、米国に次ぐ数の147機を購入し、かつ米英に続き垂直離着陸型F-35Bと空軍型F-35Aの2タイプを運用する重要な同盟国である日本には、パートナー国入りには「No」でも、何らかの特権を与える可能性も指摘しており、この辺りが落としどころなのかもしれません・・・(邪推です)
仮にパートナー国になれるとしても、他のパートナー国9か国が支払い済みの開発協力金を日本も求められるでしょうし、F-2後継機の国産を狙う防衛省の姿勢に横やりや影響が避けられないとの見方もあり、猛暑の中のぼんやり頭では目が回りそうですが、とりあえず論点満載の鈴木敦夫・防衛省整備計画局長からLord次官へのレターと関連議論をご紹介しておきます
29日付Defense-News記事によれば
●Defense-Newsが入手した19日付鈴木局長のレターは、「日本はパートナー国になるオプションがあると信じているが、Lord局長は可能性があるとお考えか伺いたい」、「またパートナー国の責務と権利、また必要な経費負担、更にパートナー国になる条件や手続きや必要な時間についてご教授いただきたい」、「ご教授いただいた諸条件を検討し、パートナー国になるための手続きを進めるか最終判断をしたい」と要望している
●またレターは「パートナー国に加わることで、今後の開発や部品供給プロセスに参画することに加え、国民への説明責任を果たすための安全に関する情報を(迅速に)得るニーズに対応可能と考える」、「国防省F-35計画室への防衛省からの人員常駐派遣による情報へのアクセス確保」にもつながるとも記し、日本でのF-35墜落事故に際し、パートナー国に対するよりも情報提供が遅れた可能性を示唆している
●米国防省のF-35計画室を配下に持つEllen Lord兵たん担当技官は、29日の週に日本側関係者と面談する予定があり、本レターに関しても話題になるとみられているが、日本側にとって良い回答は得られないだろう
●公式にはLord次官から回答がなされるが、実務を取り仕切るF-35計画室報道官は、2002年7月15日にパートナー国募集は締め切っており、オリジナルの投資国であるパートナー国9か国(Australia, Canada, Denmark, Italy, the Netherlands, Norway, Turkey, the United Kingdom and the United States)に変更はないと語り、2007年に9か国が署名した覚書でも、開発フェーズに参画したパートナー国のみが、製造、維持、近代化改修フェーズにも参画できると明確に規定している
●元F-35計画室勤務者は、トルコが露製S-400導入でパートナー国から除外され、トルコの部品製造分担契約が来年春には終了する中、147機も購入する日本がパートナー国入りを要望するのは自然な動きであり、過去の経緯を見直す良いタイミングだと語っている
●また航空専門家は、日本に三菱や川崎重工やスバル等が存在することを考えれば、部品供給を担っても大きなリスクはないとみている
●一方で状況を知る関係者は、ペンタゴンは日本に特例を与えることが「パンドラの箱」を開くこととなり、日本にライバル心を持つ韓国や、米国とのパイプが太いイスラエルが同様の要求を持ち出すこととなり、今後の機能向上や部品製造分担議論や複雑混迷になることを懸念している。なお現在の購入国はIsrael, South Korea, Belgium、日本で、これにFinlandや Singaporeが加わる可能性がある
●航空専門家のRichard Aboulafia氏は、日本が2013年から稼働させているF-35最終組み立て施設FACOを2022年度で閉じる決断をし、なおかつレターで「パートナー国が既に多大な経費分担をしている」事に触れ、パートナー国入りのための経費負担を覚悟している様子から、部品製造割り当て確保より、「Block 4」など将来のF-35能力向上に積極的に関与したい思いが強いのではないかと推測している
●更に同氏は、日本がF-2の後継機として2030年代運用開始の国産機開発に着手しているが、F-35計画への参画により、F-2後継機開発に生かせる情報を得ようとしているのではないかと日本の狙いを推測している
●元F-35計画室関係者は、「これは国防省がプレーする必要がある、極めて興味深い政治的フットボールだ。大きな政治的決断を迫るものとなる」とコメントしてくれたが、日本のパートナー国入りを認めることによる「パンドラの箱」オープンのリスクは負えないことから、米国防省に可能なのは、日本に購入機数に応じた何らかの特権を提供する程度で、他国(韓国やイスラエル)に壁を示すことだ
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日本が名古屋三菱のFACO(最終組み立て検査工場)の運用停止を決断したのは、名古屋のFACOで組み立てると、いろいろ追加経費が必要で、米国直輸入より価格アップになるからです。
従来の40機程度の購入であれば耐えられたが、追加で100機購入を判断したタイミングで国内FACOをあきらめたのはコスト増に耐えられないとの判断ですから、これをもって日本が部品製造に興味がないとは判断できないと思います
19日付のレターへの返事が、これだけ重い問題で今週のLord次官と日本関係者の会談で得られるのか不明ですが、日本が本当に「亡国のF-35」と心中する覚悟を固めたような雰囲気ですので、とりあえずフォローしておきます
細部は、鈴木敦夫・整備計画局長にお尋ねください。
それから、当日Defense-Newsのもう一つのトップ記事も日本関連で、「批判の中でも日本のイージス・アショアは引き下がらない」でした・・・。
F-35の関連記事260本
→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/archive/c2302846744-1
亡国のF-35記事いくつか
「米国はトルコをF-35計画から除外へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-17
「F-35能力向上で次世代戦闘機選定に名乗り」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-22
「米空軍F-35の維持費削減は極めて困難」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-03
「ALISは依然大きな障害」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-02