専門家「中国軍が太平洋空軍戦力を殲滅するのは簡単」
米軍既存の防空能力では対応不可能
20日、米太平洋空軍司令官Charles Brown大将がAFA航空宇宙サイバー会議で講演し、中国軍の攻撃から航空戦力を守るため西太平洋の各地に戦力を分散させても、現状では中国の多様な攻撃兵器から航空基地や所在戦力を守る能力はなく、また米軍内部の任務分担(roles and missions)も再検討する必要があると語りました
米軍は太平洋軍作戦エリアで、「作戦面で打たれ強く、地理的に分散し、政治的に持続可能な」体制をスローガンに、少なくとも5年以上取り組んでおり、「地理的分散」のためグアム周辺のサイパンやテニアンなどの活用訓練を進め、最近ではエスパー国防長官が新たな基地基盤の設置にまで言及しています
一方で、「政治的な持続可能性」は中国への経済依存が進む西太平洋地域で難しい状況にあり、「作戦面での打たれ強さ」は、グアム島米軍事施設の抗たん性強化等が行われていますが、中国の弾道・巡航ミサイルや長距離爆撃機、超超音速兵器開発などの急速な発達により、「弱さ」が増している状況にあります
更に言えば、サウジの石油施設がドローンやミサイルで「あっさり」大被害を受けた事例を見るまでもなく、大規模で複雑な地上システムに依存する航空戦力や航空基地は、残念ながら広大な中国大陸に配備され増強されている兵器を前に無力感が増しているのが現実です
20日付米空軍協会web記事によれば
●20日、AFA航空宇宙サイバー会議に参加中のBroun太平洋空軍司令官は記者団に、今後アジア太平洋地域で戦力を分散させて運用する方向にあるが、分散先の設備不十分な簡易基地の防衛について米軍全体で任務分担を再調整する必要があると語った
●そして、小型無人機から弾道・巡航ミサイル、更には超超音速兵器にまで至る様々な脅威から基地を守る部隊を保有する必要があると訴え、このための議論を全米軍を巻き込んで始まっており、特に同様の兵力分散モデルを考えている海兵隊が防空能力に関する問題意識が高いと説明した
●また、現在の米軍内の任務分担は1947年の「Key West agreement」に基づくもので、陸軍が地上部隊の防御を、空軍が経空脅威を担うことになっているが、当時は巡航ミサイルも無人機も脅威の想定に含まれてはいないと現状にも触れた
●同会議の別のパネル討議では、太平洋陸軍幹部と米空軍司令部幹部にミッチェル研究所のMark Gunzinger氏が登壇し、長距離精密誘導兵器に対しては聖域はなく、防御は米本土においても必要で、防御手段を保有する必要を指摘した
●陸軍と空軍幹部は、「Key West agreement」を過去のものとして再構築し、現在はまだ存在しない統合の指揮統制要領をもっと積極的に議論する必要があると述べた
●Gunzinger氏は、中国軍がアジア太平洋の米空軍基地を攻撃して戦力の大部分を殲滅するのは容易なことだと断言し、少数の基地に戦力を集中している点や、戦力を分散する準備も出来ていない点を厳しく指摘した
●また同氏は、米陸軍には米空軍基地を防御する能力はないことから、米空軍がその役割を担って備えるべきだと主張し、Brown司令官も米陸軍現有の防空システムはTHAADにしてもペトリにしても大きく重いことから分散先への空輸が容易ではなく、展開しても設置に時間を要すると問題点を指摘した
●これらを踏まえBrown太平洋軍司令官は、輸送に負担のない「高出力microwave」や他のシステム導入を検討し、我々の考え方を変える必要があると述べた
●一方で同司令官は新防空システムの導入検討の予定について言及を避け、「全ては予算の問題だ」と空軍首脳部で予算は配分に関する議論が行われていると説明した
●そして太平洋空軍は米空軍研究所AFRLと協力し、空軍「Warfighting Integration Center」の如何に基地防衛を改革していくかとの検討の今後について検討していると述べた
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Brown太平洋軍司令官から、「maybe high-powered microwave or other systems that don’t need a lot of lift」との新兵器への言及がありましたが、そんなものが近未来に実現できるとは考えにくく、米空軍が戦闘機や戦闘爆撃機や爆撃機に拘り続ける限り解決法はないような気がしてなりません
空母を中心に据える米海軍にも言えることかもしれませんが、このままでは、「ゆで蛙」になってしまいますよ・・・・
自衛隊の皆様に置かれましては、上記の米空軍幹部や専門家の話を契機として、真摯な気持ちで戦闘機中心の防衛力整備について改めて再考いただきたいと思います
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