Defense News主催のインテルと安保サミットで
情報公開促進で敵の情報工作・誘導工作に対処
9月4日、Defense News主催の「2019 Intelligence and National Security Summit」が開催され、インテルに係る現役幹部から企業関係者まで、様々な人物が講演やパネルディスカッションに参加し、情報戦やハイブリッド戦について議論しました
ハイブリッド戦の中の情報&広報戦や誘導工作は。ロシアが2014年のクリミア半島実質併合でその威力を示し、「安価で低リスク」で有効な手法として西側の脅威となり、特に欧州諸国が対策に力を入れているところですが、このサミットでは米国関係者が議論しています
事柄の性格から断片的な内容ですが、前中央軍司令官の対テロにおける情報戦の要改善事項と併せ、ご紹介しておきます
4日付Defense News記事によれば
●ハイブリッド戦のパネル討議で、DNIの副部長であるKaren Gibson陸軍中将は、同盟国を含めた西側情報コミュニティーは、ハイブリッド戦に対抗するため、情報分析手法や分析結果についてよりオープンに公開する方向に向かうべきではないかと訴えた
●ハイブリッド戦は物理的戦力を使用せずに戦略目標を達成する有力な手段になりつつあると述べ、「我々は、情報が戦勝のための道具として、かつてないほど有効活用される様子を目の当たりにした」と脅威認識を表現した
●そして同中将は、「ITシステムにより我々はより密接につながるようになり、結果として、敵は作為した情報をSNS等を通じて正確に目標とするグループや人々に与えることが可能になった」、「今後AIの成熟により、この危険な傾向はますます加速する」と述べた
●また「敵は作為した偽情報を真実だと証明する必要はなく、疑念や疑いを拡散するだけで良い」、「一方で我々は、一般国民や同盟国に、我々の情報が正しいことを確信させる必要に迫られている」とも表現した
●このような困難な環境に対応するため、同中将は、西側情報コミュニティーはより情報の秘密指定解除に取り組み、一般の公開情報伝達手段を活用し、一般社会への情報伝達能力を強化すべきであると主張した
●そして「ワシントンDCの情報関係者の間には、より秘密程度が高く、使用に制約が多い情報ほど、優れた情報だと見る文化があるが、この文化と戦うため、情報関係者は、一般社会に情報を知ってもらってこそ大きな利益が得られることを肝に銘じるべきである」、「何のために分析レポートを書いているのか自問自答すべきだ」と訴えた
●更に同中将は、情報や分析の正確性追求と提供のタイミングのバランス考慮し、適時適切な情報提供により着意すべきだと強調した
●次の統合参謀本部議長が上院で主張した敵に混乱を与えるような情報戦ツールへの投資の必要性や、陸軍サーバーコマンド司令官が常々隷下部隊指揮官に指揮官に呼びかけている「情報戦関連部隊の名称変更」などの手法について、同中将は推奨すると述べた
中央軍や特殊作戦軍司令経験者の改善要望
退役したばかりの前中央軍司令官で特殊作戦軍司令官でもあったJoseph Votel退役大将は、中東での作戦経験を基に、改善すべき情報活動について以下の4分野を挙げて同サミットで述べた
Open source intelligence
●対ISIS作戦では、Open source intelligence(公開情報)の活用や配分に苦闘した。特にSNS上にある情報を活用することが難しく、タイムリーに前線兵士に届けることがいつもできなかった
●地域の常識を踏まえた情報の真偽の見極めなど、公開情報の収集活用の改善が必要である
Sharing intel with partners
●同盟国等との情報共有をより容易にする必要がある。我々だけ作戦することはなく、パートナーと共に行動するのが基本である。その際、誰の権限で情報を共有するかが課題になることがある
●信頼できるパートナートの情報共有については、現場指揮官により大きな裁量の余地を与える事が必要だ
Managing big data
●米軍の情報収集能力は目を見張るものがあるが、前線兵士が活用できるように処理分析することに大変苦労している。処理分析配分を戦いの速度に上げることが重要な観点である
●有志連合から集まってくるイラクやシリア関連情報も膨大で、これらを処理して活用できるようにするのもチャレンジングな課題である
Boosting human intelligence
●地域担当メジャーコマンド司令官にとって、地域の人々が何を考え、どのような視点で物事を見る傾向があるのかを知ることは極めて重要であり、その点で「人的情報」は極めて重要である
●より多くの人的情報を入手することで、必要兵力の量を削減することが可能になる。現在のHUMINT部隊はその規模でよく頑張っているが、より強化することが期待される
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敵のハイブリッド戦に於ける情報工作や誘導工作に対処するため、出し惜しみせず、従来秘密情報扱いになっていた情報も、一般メディア等を活用して一般民衆に伝えて「工作」に対抗すべき・・・とは、なるほどの考え方です
そのためには「情報コミュニティー」の文化を変える必要がある・・・との指摘にも納得です。情報分析の担当官や組織は、オタクっぽい性格を帯びて閉鎖的になりがちですから、正反対の広報部隊と連携してみるのも面白いかもしれません
白髪のGibson陸軍中将はオタクっぽい見た目の女性ですが、発想は素晴らしいと思いました
米大統領選挙や英国のEU離脱国民投票を始め、多様な事例や各国の取り組みを紹介する良書
「ドキュメント誘導工作を読む」
→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-22-1