性能&価格から極秘JATMと「high/low mix」を企業が推奨
射程延伸、妨害対処力向上、地対空ミサイルとしても
NGAD不透明化で注目のF-22能力向上にも貢献可
9月10日付米空軍協会web記事は、約30年間空中戦ミサイルの世界標準(42か国14機種で使用中)として空を制してきた空対空ミサイルAIM-120 AMRAAM製造レイセオン担当幹部が記者団に、AIM-120の後継的位置づけで超極秘開発&製造(?)が進むロッキード製AIM-260 JATM(Joint Advanced Tactical Missile)が存在するも、改良&進化を続けるAIM-120への需要は衰えることを知らず、様々な可能性を秘めていると語った内容を紹介しています
AIM-120(最新型射程約150㎞)より射程距離を延伸し、中国のPL-15空対空ミサイルとの空中戦でも対抗可能な能力獲得を目指すAIM-260 JATMは、射程200㎞越え、飛翔速度もAIM-120のマッハ4に対しマック5、電子妨害対処力強化等を目指すと言われていますが、その開発状況等は全く闇の中で、2022年に初期運用能力IOC獲得とか、ユタ州のHill空軍基地に極秘保管庫設置とか、260導入で120は2026年で製造中止とか、真偽不明の情報が多数流布している状態です
2023年5月に「ウクライナ紛争で需要が大爆発AIM-120の現状」をご紹介した際は、初期のA型からB→C→D型と進化を度げ、D型でもD1→D2→D3と3ステップの改良性能向上を果たし、GPS利用航法やデータリンク能力向上、ネットワークや誘導装置能力向上をお伝えし、更に「D3」型の輸出版「C8」の審査完了も間近で、世界42か国(14機種)に搭載されるだろうとご紹介したところでした。そんなAMRAAMの現在位置を製造企業幹部は・・・
レイセオン社のJohn Norman担当副社長は
●継続的に改良が進む最新AMRAAMの射程距離は、米空軍がAIM-260 JATM開発に要求してきたレベルに近づいており、またJATMは電子妨害対処能力で優れた能力を保有しているが、米空軍との機密脅威データの共有を含む開発改良努力を経て、最新のAMRAAMはこれら全ての要素で驚異的なパフォーマンスを示している
●JATMは「ドアを蹴破る、非常に高価な兵器」となるが、AMRAAMは「手頃な価格の証明済み実戦兵器」で、この2つのミサイルは相互に補完的な役割を担えると考えている。最新のD3型AMRAAMには脅威に対抗できる能力がある
●最新のD3型AMRAAMの具体的特長は、第1に航続距離と飛行時間の延長で、以前と比較し約2 倍になっている。推進力は変えずに、長距離射撃の飛行方法を変えたことで実現した
●敵の電子妨害対処に関しては、処理速度が従来の4倍にもなった最新回路カードを搭載し、先進的なデジタル無線周波数変調(DRFM)妨害技術を導入した。
●同じAMRAAMでこれだけ性能が進化すると、使用する作戦立案者やパイロットにその新たな能力をよく理解してもらうことが重要で、米空軍の「weapons school」「Air Warfare Center」「Test and Evaluation Squadron」のほか、米海軍の関連部署や世界42か国のユーザーも回って説明している
●AMRAAM はNASAMS (National Advanced Surface-to-Air Missile System) から発射することでSAMとしても利用可能で、多くの国がウクライナのNASAMS用に古いAMRAAMを寄贈し始めている。中には製造後30年経過したミサイルも含まれていたが、発射有効率95%の驚異的な信頼性を維持している
●これまで当社は年間450~650発AMRAAMを生産してきたが、これが昨年1,200発まで急増しており、米空軍・国防省・国務省と他国での生産可能性を協議中(日本が有力候補)。ただ新たな製造ライン立ち上げには、安定的な需要、それも年間2,000発程度が必要となる
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推定価格が1機約450億円とのドン引きレベルで「再検討」状態となった次期制空機NGADは、「a family of systems」で必要能力を確保する方向で再精査再検討が進み、具体的には要求性能を「下げて」存続させる方向の模様ですが、そうなると「a family of systems」の重要ピースである空対空兵器にも注目が集まります
AIM-260 JATMが高価格で数を確保しずらいとなれば、比較的低価格で性能向上が著しいAIM-120 AMRAAMへの需要は衰えず、防空兵器SAMとしての需要と相まって、日本での生産ライン立ち上げも現実味がありそうな気がします。次期制空機NGADに再検討は、戦闘機命族の栄枯盛衰だけでなく、色々と周辺への波及が大きそうです。
AIM-120(AMRAAM)と後継AIM-260 JATM開発
「2026年製造中止のはずが大増産中」→https://holylandtokyo.com/2023/05/17/4556/
「超極秘開発のAIM-260 JATM」→https://holylandtokyo.com/2022/04/04/3088/