一応、米海軍が空母定期修理遅延の対策検討

最近では4年の修理が6年に延びる惨状
コロナで労働者散逸&サプライチェーン混乱で部品遅延
長期作戦行動で艦艇酷使で不具合続出の空母

Newport6.jpg7月6日付Defense-Newsが、米海軍担当コマンド報道官からの聞き取りを交え、空母の原子炉燃料交換を伴う空母寿命50年の中間に行う4年計画の大修理が、直近の事例(空母George Washington)で2年超過の6年もかかっている問題を取り上げ、造船所の能力低下やサプライチェーンの混乱、更に空母の長期作戦投入による船体疲労からくる修理箇所の増加等々の根深い問題を紹介しつつ、

調達リードタイムが長期間となる部品の計画備蓄や、大規模修理前の事前艦艇チェックを早期&入念に行って修理計画や物資調達をより早期かつ綿密に行うなどの対策、更に艦艇修理を期間を計画通りに進めることによる契約面でのインセンティブや、各修理フェーズ毎の計画の正確性をフィードバックする契約手法等に米海軍が取り組む様子を紹介しています

最近や近未来の空母大修理の状況
空母George Washington(当初2017年夏~2021年夏予定)
Newport5.jpg●現実には2023年5月23日に2年遅れで修理完了。遅延の背景には、コロナによる操業率低下、サプライチェーン混乱による部品入荷遅延、空母船体酷使からくる想定外修理箇所生起、コロナによる熟練作業員の早期退職等による現場技量低下にも関連する作業ミス手戻りなどあり
●米海軍全体では、新規潜水艦建造を遅らせてまで空母の修理を優先したが、それでも約2年の遅延

空母John C. Stennis(当初は2021年1月~2025年春予定
●造船所の能力限界から、空母Washington修理との重複を極力避けるため、修理開始を2021年5月まで遅らせ、終了を2025年8月に修正した計画で作業開始

Newport4.jpg●しかし結局空母Washingtonの修理が2年超過し、約24か月も空母Stennisと重複したことで造船所の対応が追い付かず、現時点で既に数か月の遅延が出ており、また推進装置に大きなトラブルが見つかったこともあり2025年8月終了計画は再検討を迫られている状況
●米海軍は本空母修理契約に際し、発生経費ベースの費用契約から、修理スケジュール遵守状況により評価するインセンティブ提供の考え方を含めた契約に変更している

空母Harry S. Truman(2025年5月~2029年春予定)
Newport3.jpg●この空母との契約については、空母Stennisの契約より更に契約方式を深化させ、作業段階ごとの契約や、困難な修理項目や確保に時間が必要な部品の必要性について早期に察知して計画に反映することへのインセンティブ等を含めることを米海軍が検討している
●また調達にリードタイムが長期間必要な大型バルブ、発電機関連部品、タービン関連部品などの交換履歴を分析し、将来需要予測をより精緻にして備蓄を増やす検討も行われている

空母Ronald Reagan(2029年から予定)
Newport2.jpg●定期修理に6年要した空母G Washingtonとの交代で2015年に横須賀に展開し、その後は海外派遣状態が続いている極めてまれな空母がReaganで、横須賀派遣の交代空母が派遣予定の2024年まで活動を継続すると、異例の9年間連続派遣運用を経た空母となる
●米本土配備の空母は、通常3年で訓練、実戦運用、修理のサイクルを回しており、その間に半年間以上のドック修理期間が組み込まれ、燃料交換時の大規模修理項目の削減につながっているが、このパターンを踏んでいない空母Ronald Reaganは、燃料交換修理に臨む前の事前点検で空母の状態確認が予定されているものの、本番修理は長期化が予期されている
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Newport.jpg空母だけでなく、一般艦艇や潜水艦の修理施設が労働者の質や数を維持できず、今の時代に若者を引き付ける職業でもないことから、労働力面での回復は難しい状況ですし、修理予算自体の確保も難しくなっているのが「何をやってもダメな米海軍」の現実でしょう。日本が米艦艇の修理を横須賀等で受け入れることで合意したようですが、どの程度の効果があるのか気になるところです

修理に計6年を要した空母Washingtonは、来年2024年横須賀に派遣され空母Ronald Reaganと交代する予定で、6年近くの空白を埋めるべく、同空母搭乗員は2022年夏から同空母で準備を開始していますが、同空母で海に出ていない期間が6年あるのは紛れもない事実です。例えその間に他の空母に臨時勤務し、必要な部署資格を維持してきたとは言え・・・・

米海軍の艦艇建造や修理能力が危機的状況
「耐震強度不足で4ドック使用停止」→https://holylandtokyo.com/2023/02/03/4234/
「米空母と潜水艦修理の75%が遅延」→https://holylandtokyo.com/2020/08/27/534/
「空母故障で空母なしで出撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-16
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24

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