2019年に台湾との国交を絶ったソロモン
中国軍の活動や施設使用を認める安保協定案
中国がソロモンに守秘義務を求める条項も
3月末、ネット上に中国とソロモン諸島が交渉中と言われる安全保障協定案がリークされ、ウクライナ情勢に世界の注目が集まる間隙を縫い、中国がじわじわと南太平洋に足場を伸ばして、米・豪・日・印による「QUAD」や2021年9月に成立の米・英・豪の「AUKUS」といった中国包囲網に風穴をあける動きに変化がないことを示していると話題です。
ソロモン諸島は、ニューギニア島の南東に大小さまざまな島で構成され、岩手県の2倍ほどの総面積に人口70万人弱の国家で、農業と漁業が主要産業で軍隊を持たず、警察が800名規模で存在する程度です。
立憲君主制で議会もありますが、部族支配が根強く中国マネー政治腐敗が年々激しくなり、貧富格差拡大も重なって若者によるデモや暴力行動が頻発しており、昨年11月のソガバレ首相退陣要求暴動の際には、豪州、NZ、フィジー、パプアニューギニアから平和維持部隊200人が派遣され鎮静化した混乱ぶりで、中国からすれは付け入るスキありありな国です。
実際中国はリークされた「安保協定」以前に、既に警察警務協力に関する協定をソロモンと調印しており、11月の暴動鎮圧には関与していませんが、その後に中国式の暴動鎮圧法を訓練する顧問団や武器供与を受け入れ、今年3月には研修講座も開講したようで、今年3月の民主化活動家取り締まり作戦では、催涙弾やゴム弾を使用する「中国式」の警察行動が見られたそうです
4月7日付福島香織氏のJBpress記事によれば
●3月末、ネット上に流布した「安保協定案」のポイント
・ 中国はソロモン政府の要請に基づき、軍や警察など法執行機関を派遣し、治安維持、生命財産の保護、人道援助、災害救援を行う
・ 中国が求めれば、ソロモンの同意の下、ソロモン側はあらゆる必要施設を提供し、中国艦艇を寄港させ補給を行う。
・ 中国部隊は、ソロモンでの中国人および主要プロジェクトを守るために使用される
・ 中国はその他の任務にも協力し、ソロモンに守秘義務を求めることができ、両国の書面許可がない限り、その情報は第3者に公開できない
・ この枠組みを妨害する議論、争いが発生した場合、当事者同士で相談で解決する。
●誰が見ても「怪しい」内容だが、この協定が成立すれば、警察教育どころか、ロモン諸島に人民解放軍が駐留することも可能になり、それが南太平洋の安全保障の枠組みを根本的に変える可能性がある
●しかし、ソロモン諸島のソガバレ首相は、3月29日に安保協定案があることを認めたうえで、国際社会がこれに批判的なことを「非常に侮辱的だ」と強い不快感を示し、4月1日には国内での中国軍基地の建設は容認しないと述べたる一方で、「政府は軍事基地の建設を受け入れる派生的な影響を意識している」と表現している
●この発言には、米国との関係が深いミクロネシア連邦のパヌエロ大統領が、この協定が結ばれれば、太平洋地域が「米中戦争」に巻き込まれかねないと重大な憂慮を示した
●周辺国の反対を意識し、4月2日に改めてソロモンのソガバレ政権は、「ソロモン諸島に中国の軍事基地を呼び込めば後々に影響を引き起こすことはわかっている。当局の管理のもと、そういうことにはならない」と、ソロモン諸島の中国軍事拠点を否定した
●しかし、ソロモン側が中国の軍事拠点化をどれほど否定したところで、オバマ政権時代の8年の間に南シナ海の軍事拠点化を実現した中国のやり方を世界中が目撃しており、説得力に欠ける
●更に協定案は、ソロモン側が中国が必要とする補給兵站を一切提供することになっているので、豪州が長年ソロモン諸島に安全保障目的で投資・整備したインフラを、中国軍が使用することになる可能性もある
●中国はチャイナマネーの威力で、2019年にソロモンに台湾との断交をさせている。2021年11月の首相退陣要求暴動の背景には、こうした中国との外交戦がソロモン諸島内政に反映した権力闘争があったとされている。
●中国は「一帯一路」構想と海底ケーブル敷設事業を建前に浸透工作を続けていたが、近年になって、中国企業がこの事業に関わることの安全保障上のリスクに各国が気づき始め、中国企業を排除する動きも出てはきている。
●また、ネット上に草案がリークされたということはソロモン諸島の政府や官僚内部にも、中国依存は良くないと考える勢力があるとも考えられる。
●豪州は、パプアニューギニア、フィジーその他の太平洋島嶼国にも豪州の懸念を伝え、ソロモン諸島を説得するように呼び掛けているという。
/////////////////////////////////////////////////////
上記記事の最後の部分は、周辺国の警戒感の高まりや中国に対応する動きを期待する内容となっていますが、どちらに転ぶかは予断を許さないでしょう。本当に中国は油断も隙もありません。
ウクライナ事案で中国へ視線が厳しくなれば良いですが、中国市場や中国マネーの魅力は捨てがたく、裏でうごめく人たちの「欲」は簡単に収まりません。
これを機会に、中国やロシアなどに肩入れする日本国内の人物の特定・見極めを致しましょう
米国の南洋諸島への視線
「日本戦前の南洋諸島進出を学び中国を警戒」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-11-1
「アジア太平洋地域で基地増設を検討中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-28
「対中国で米軍配置再検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-16-1
「アジア認識を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-07