具体策というより取り組み方についての提言
シンクタンクFDD(Foundation for Defense of Democracies)
29日、シンクタンクFDD(Foundation for Defense of Democracies)が短いメモを発表してDefense-Newsもこれを掲載し、9月に行われたサウジ石油施設への巡航ミサイル攻撃を米国は真摯に受けとめ、米本土が直面するこの深刻な脅威に対し、まず取り組むべき事項として3点を提言しています、
提言ではまず、9月のサウジ石油施設への巡航ミサイルや無人機による攻撃を、米国ではサウジの脆弱性を暴露した事案として扱われているが、サウジが保有している、又はサウジに展開している米国製航空システムが対処に失敗した事実を無視した誤りだと指摘しています
そして、現在の米本土防衛が弾道ミサイルに対する防衛に焦点を当て、限定的な数量のICBM等に対処する体制整備が進む一方で、米本土の都市を巡航ミサイルが攻撃した際の防御を念頭に置いていないことを問題視しています
また、高高度を弾道を描いて飛来する探知追尾しやすい弾道ミサイルとは異なり、低高度を飛翔する巡航ミサイルは地上配備レーダーで探知困難であることから、北米コマンド司令官(前太平洋空軍司令官)も「米本土は聖域ではない」「米国民と米国が危機にさらされている」危機感を訴えている所ですが、提言はまず米国防省に巡航ミサイルの探知追尾体制構築を求めています
とりあえず3つの提言を簡単にご紹介します
(29日付Defense-News記事より)
●まず第一に担当責任者を定めよ
—まず国防省内で米本土を巡航ミサイルから防御する責任者を明示し、関連するセンサーや迎撃手段、指揮統制システム等に関する意思決定が可能な立場を与えよ
—この責任者任命により、弾道ミサイル防衛と巡航ミサイル防衛の融合を促進することが出来る
●第2に、米議会は探知用宇宙配備センサー配備を支援せよ
—米議会は、米本土に狙いを定める先進の巡航ミサイルや他のミサイルを探知・追尾、そして究極的には破砕するための宇宙配備のセンサーを、遅滞なく展開配備できるよう支援せよ
●最後に、積極的に同盟国を巻き込め
—米国防省は、遅滞なく最新の巡航ミサイル防衛システムを米本土及び米軍展開地域に配備するため、優れた同盟国等とのパートナー関係構築を積極的に追及すべき
—これまでも「Five Eyes agreement」により情報共有で特別な関係を築いてきた英、加、豪、NZは、機微な技術情報を共有して装備開発を協力推進する候補として有力だろう。巡航ミサイルを開発協力のスタートとすればよい
—イスラエルも有力候補だ。既にミサイル防衛システムアローやDavid’s Slingの米との共同開発を通じて、その技術力は証明済みであり、実戦経験もある国であることからも重要な国だ
●巡航ミサイル対処は、これまでも専門家の間で困難だと指摘されてきたが、今回のイランによるサウジ攻撃はその脅威を現実のものとした。これを見たロシアや中国は、米本土や海外の米軍展開基地への巡航ミサイルでの奇襲攻撃が有効だと理解し、巡航ミサイル攻撃を企てる可能性が高まったと考えるべきだ
●米国防省は本年年初に発表した「Missile Defense Review」で、「先進型巡航ミサイルは米本土の対する脅威になりつつある(are on the horizon)」と表現していたが、サウジへの攻撃の成功で、脅威はより近づいたと考えるべきだろう
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同盟国の部分で、日本の名前が出て来ませんが、技術的にも、政策面でも、やる気の面でも、期待できない国だとの冷徹な判断でしょうか。日本にとって極めて大きな脅威だと思いますが・・・
米議会が宇宙配備センサー群に予算をつけて協力し、同盟国の英知を結集して巡航ミサイル防衛システムが構築可能になったとしても、巡航ミサイル1発を迎撃するために、その10倍100倍のコストが必要な気がします
提言をまとめたのは、FDDの中堅研究者(Bradley Bowman氏とAndrew Gabel氏:写真上)とお見受けしましたが、この辺りはどのようにお考えなのでしょうか?
コスト面の議論は後の話で、サウジへの攻撃を「他人事」のように受け止めている米国の雰囲気への警鐘と捉えるべきでしょうか・・・・
FDDの関連webサイト
→https://www.fdd.org/analysis/2019/10/29/3-ways-america-can-fix-its-vulnerability-to-cruise-missiles/
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