陸軍軍団が各地域を分割担当している現状から
「統合戦域司令部」を5つ設け、海空軍人トップの可能性も
10日、台湾国防相が議会で、2022年1月から台湾軍組織を改編し、陸軍中心から統合を重視した体制や、より各地域司令部に権限を委譲して被害下でも作戦遂行が可能な態勢を追求すると証言しました
また報道によれば、この改編を契機とし、数で圧倒する中国軍に対抗するため、非対称な戦いを追求する体制を強化するとも言われているようです
17日付Defense-News記事の専門家は評価するコメントをしていますが、先日ご紹介した米中経済安保評議会に登場した米国の専門家は、硬直的で改革に消極的な高級台湾軍人を厳しく批判しており、装備なども含め、本当に改革が進むのか今後とも注視する必要があるでしょう。
現在の台湾軍の指揮統制体制をよく把握せず、台湾より更に硬直的な日本人が、偉そうに批評できる立場にはありませんが、学べるところは学んでいきましょう
17日付Defense-News記事によれば
●10日、台湾のChiu Kuo-cheng国防相は台湾議会で、2022年1月から、これまで台湾各地域を担当指揮してきた陸軍の澎湖、華東、第6、第8、第10軍団が、台湾西部の澎湖諸島、台湾東部、北部、南部、中部の各地域を担当する第1から第5からなる各戦闘地域司令部に改編されると説明した
●同国防相はまた、各戦闘地域司令部司令官は担当地域に所在する陸海空軍部隊の連携に責任を持ち、統合運用体制を強化するとともに、平時の災害対処から有事の本格紛争対処までをコーディネートすると説明したが、これにより各戦闘地域がより独立的に作戦行動を遂行することが可能になると考えられる
●国防相は、現在は台湾を地域分割する各軍団司令官に陸軍人が就任しているが、新たな各戦闘地域司令部司令官には海軍や空軍幹部が就任する可能性もあると説明した、
●台湾国防研究所のSu Tzu-yun氏はこの発表を歓迎するとともに、台湾本島東部と台湾東部海域の島々を担当する第2戦闘地域司令部司令官には、地域の特性から海軍や空軍人が就任する可能性があるとコメントしている
●また同氏は、陸海軍の統合作戦遂行が容易な態勢になることで、数で圧倒する中国軍から被害を受けて中央からの指示が得られない中でも、粘り強く作戦継続することが可能となると評価し、更に非対称戦を追求する台湾の「Overall Defense Concept」とも方向性が一致していると見ている
●一方で、現在は陸軍軍団から独立した立場を与えられている、中国本土と台湾の間に存在する金門と馬祖島の防衛司令部にどのように影響するかは不明。
●また、陸軍軍団から独立している陸軍の航空および特殊作戦軍が現在の状態を維持するのか、再編後に別の戦闘地域司令部の管轄下に入るのかは不明
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Chiu Kuo-cheng国防相は元陸軍人で、元統合参謀長です。国防相には2月末に就任したばかりで、その前は台湾情報機関のトップでした。
台湾政府だけではなく、米国や各方面の専門家からも改革を迫られている「誇り高き台湾軍」ですが、これを積極的な改革姿勢の一つと見るのか、仕方なくひねり出した言い訳の改革案と見るのか微妙なところです
でも日本にとっては参考にするところ大でしょう。
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