地中海、中東、インド洋、南シナ海、台湾を経て日本へも
米英の悲しきWin-Win関係とも見えるのですが・・・
5日、英海軍の新型空母エリザベスが、米海兵隊F-36Bを10機と英海軍F-35Bを8機搭載し、地中海、中東、インド洋、南シナ海を経て日本へも立ち寄る初の作戦航海に出港しました。
そしてこの英米F-35Bを混合搭載した新型空母は、米海軍のアーレイバーク級イージス駆逐艦Sullivansと行動を共にし、空母戦闘群として行動することが今年1月に英米国防大臣から大々的に発表されていたところです
米海兵隊F-35Bと英空母エリザベスの一体運用は少なくとも2019年頃から議論され、2020年秋には10機の米海兵隊F-35が空母エリザベスに展開し、同空母に最大負荷をかけての戦闘能力点検を共に突破して連携を深めてきました
米英両国はこの一体運用を強固な同盟関係のシンボルとしてアピールし、英空母が南シナ海や東シナ海などアジアにも展開して中国ににらみを利かせることから、日本でも大きく報道されています
ただ何回かご紹介しているように、英軍は空母エリザベス搭載用のF-35Bを十分な機数調達できず、米海軍と海兵隊は「虎の子」のF-35B搭載可能強襲揚陸艦Bonhomme Richardを昨年7月の放火火災で失っており、偶然かもしれませんが、英米間の「悲しきWin-Win関係」が成立しているわけです
ただ注意が必要なのは、英国はスウェーデンと組んで次世代戦闘機「Tempest」の共同開発を国内軍需産業保護の観点から強力に進めており、独仏チームに対抗し今後4年間で3000億円の開発費を投じる方針を発表しており、約130機調達予定だったF-35の調達数を半減させる方向だと報じられており、「疑心暗鬼含みの悲しきWin-Win関係」とも言えそうです
5日付Military.com記事によれば
●米海兵隊の10機はアリゾナのFighter Attack Squadron 211から派遣され、英軍の617 Squadron 「The Dambusters.」と共に行動することとなった
●James Heappey英国軍相は「この出港は、英国軍が世界の同盟国と共に、世界の脅威と対峙する覚悟を示す実例である」、「世界に冠たる英国が行動する姿である」と出港に際して語った
●Yael Lempert駐英米国大使は、「英国ほど緊密な同盟国はなく、我々は共に共有する価値を守るため、インド太平洋地域などの安保問題に関与し、同時にNATOへの強固な関与を改めて示す覚悟である」と語っている
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地中海からアラビ海でシリア・イラン・そして米軍が撤収を開始したアフガンににらみを利かせ、シンガポールでアジア同盟国からたっぷり補給を受けて南シナ海に進出し、台湾東岸を通過して横須賀に入る行程ですが、機材トラブル等なく航海が進むことを祈念いたします
しかし、このコロナ禍に大変な任務です。ワクチン接種など準備万端でしょうが、初作戦行動にしてはあまりにも荷が重いような気がします
英空母エリザベスの悲しき現実
「英新型空母と米駆逐艦が空母攻撃群を編成へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-22
「コロナ下で800名乗艦で最終確認試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-01
「英空母エリザベスは米軍F-35B部隊と一体運用へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-26-1
「英海軍と英空軍共有のF-35Bが初任務」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-27
「米海兵隊F-35が英空母へ展開へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-09
「米軍F-35Bを英空母に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-16
「英空母が航空機不足で米軍にお願い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-03
「英国の138機F-35購入計画は多くて60-72機へ!?」
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-24
F-35搭載改修終了直前の惨事(放火)
「強襲揚陸艦Bonhomme Richard火災の衝撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-15