中国による潜水艦戦に備えた大規模海底調査の実態

過去5年以上の中国調査船の航跡を分析した初の調査結果
併せて中国の各種政府機関や研究機関の発表と照合
西側専門家「調査規模の大きさに率直な驚きと危機感」

3月24日、ロイター通信がニュージーランド企業開発による船舶の航跡収集システム(ship-tracking platform)からの航行記録と、中国政府や海洋大学公開の記録(論文や研究を含む)を照合調査し、42隻の中国海洋調査船の5年以上にわたる航行ルート記録を分析し、これら船舶が太平洋、インド洋、北極海で活動する様子を、複数の西側海洋&軍事専門家と共に検討した結果を公表しました。

この様な規模で、中国調査船が太平洋、インド洋、北極海に渡る膨大な海洋調査と海底地図作成に通じる測定活動を行っている記録が収集整理して報告されたのは今回が初めてであり、海底地形情報を収集するための典型的な船舶航跡である、規則正しく調査範囲を往復する様子が、太平洋、インド洋、北極海の広範囲にわたって明確に図示された結果が、世界中に衝撃を与えています

その航跡を分析した専門家をして、「中国の海洋科学研究の規模の大きさに、率直に驚いている」、「軍事的な重要海域で重点的に行われている」、「単に資源調査に留まらず、中国が潜水艦作戦を中心とした外洋海軍能力の強化を意図していることは明らか」、「中国潜水艦の航行、隠蔽、海底センサーや兵器の配置を可能にする」、「米海軍は海洋戦場知識で優位性を享受してきたが、その優位性を損なう極めて憂慮すべき事態だ」と、警鐘の声を次々と挙げる事態となっています。

【中国による調査の本格化契機】
●2014年に中国海洋大学の呉立新(Wu Lixin)が「透明な海transparent ocean」構想を提案し、特定重要海域の海水状態や流れを把握可能なセンサー群配備を提唱し、これに応じた山東省が約130億円を提供開始して、南シナ海の海洋調査が開始されたのが始まり
●現在までに海洋大学は「深海盆地(deep-sea basin)を網羅する観測システムを構築した」と発表しており、南シナ海の調査後、中国は調査範囲を太平洋とインド洋に拡大した。中国の各機関の記録を総合すると、太平洋では日本東方、フィリピン東方、グアム周辺海域で、水温、塩分濃度などの水質変化検知のために、数百個のセンサー、ブイ、海底アレイを設置完了している

●関連で米海軍情報室長は議会で、「中国は、水温、塩分濃度、海流等の水路情報を収集し、ソナー性能を最適化し、南シナ海のような重要水路の潜水艦を継続監視可能な監視ネットワークを構築」と証言している

【調査の前提となる事項】
●42隻の中国海洋調査船は、国家機関である中国天然資源部や、国営研究機関である海洋研究所や中国海洋大学に所属し、ロイターの中国文献調査(メディア記事、大学発表、政府声明等)から、少なくとも8隻は海底地図作成作業を行っており、さらに10隻は地図作成用の機器搭載が判明
●西側専門家は、調査対象には「漁場」や「鉱物探査契約地域」も含まれ、主目的が民間利用の調査もあるが、調査船の収集データが科学研究目的であっても、習近平の「軍民融合」スローガンのもとに、軍事技術開発や作戦運用活用に融合されることが、中国政府の重要な方針となっている

●米国の同種調査は最近実施手法を刷新し、通常は民間ソフトで監視可能な船舶追跡システムをオフにすることが認められた海軍艦艇で実施している。ロイターによる本調査は、航跡追跡システムをオンの船舶に対してのみ可能であり、中国調査船が追跡システムをオフにしていた間の活動は補足できていない。

【ロイター調査による判明事項概要】
●(ロイター記事が冒頭紹介する典型的調査事例)調査船「東方紅3号:Dong Fang Hong 3」が収集した深海データは、中国潜水艦を効果的に展開し、敵国潜水艦追跡に必要な海底状況を把握する情報である。同調査船は、2024年と2025年に台湾近海と米国の拠点であるグアム近海、そしてインド洋の戦略的に重要な海域を往復航行

●また同調査船は、2024年10月には日本近海に敷設した海底物体を識別可能な中国製海洋センサー群を点検し、2025年5月にも同海域を再訪。また2025年3月には、海上貿易の要衝であるマラッカ海峡への接近ルートである、スリランカとインドネシア間の海域をきめ細かに航行。同調査船は、大学発表や登録では海底泥調査と気候研究目的だが、海洋大学研究者の論文には、広範囲の深海マッピング調査の実施も記録されている

●一般に中国の調査船活動は、フィリピン周辺、グアムやハワイ近海、そして北太平洋のウェーク環礁にある米軍施設近海といった、軍事的に重要な海域で重点実施。なおグアム周辺は米海軍原潜の活動エリア。
●中国調査船は、フィリピン東方の第一列島線沿いエリアで、最も包括的な海洋調査を実施してきた。第一列島線は、中国の沿岸海域と太平洋との間の自然の障壁となっており、西側専門家は「中国は第一列島線に閉じ込められることを極度に恐れている」と見ている

●中国船はグアムだけでなく、ハワイ周辺も測量し、米国が最近アクセス権を得たパプアニューギニア海軍基地北方の海底隆起を調査し、南シナ海と豪州潜水艦基地を結ぶ航路にある豪州領クリスマス島周辺を偵察
●中国はまた、中東アフリカから石油等の資源を輸入する重要航路が存在するインド洋調査にも乗り出しており、専門家は「中国がインド洋で潜水艦作戦を実施する可能性が高いことを示している」と分析している
●調査船は、中国が2030年代までに「polar great power」になる宣言をして重視する北極圏関連では、重要航路であるアラスカの西方と北方の海底調査も行っている。
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繰り返しになりますが、あくまでロイターが観察できたのは「航跡追跡システムをオンの船舶」のみであり、米軍の様に機微な調査海域では「オフ」で航行していた可能性も高く、これが中国調査船活動の全容と考えることは危険です。あくまで広範な重要海域で調査をおこなっている・・・程度に認識するのが良いと思います

ロイター通信が入手した航跡データを分析した複数の西側専門家は、豪州海軍潜水艦隊の元司令官、元同潜水艦幹部の大学教授、元米海軍潜水艦艦長のCNAS研究員、星国RSIS上級研究員、元駐米豪州海軍武官で豪州海軍協会会長、米海軍大学の准教授等で氏名が明示されていますが、記載を省略しています。

また、本ロイター記事は、通常ご紹介している米軍事メディア記事の5倍以上の長さの文書で、読み込みの不足や記載内容に重複がある点はご容赦ください。ご興味のある方は、是非原文をご確認ください。

3月24日付掲載のロイター通信の調査レポート
(様々な海面での調査船の航跡を図示)
https://www.reuters.com/investigations/china-is-mapping-ocean-floor-it-prepares-submarine-warfare-with-us-2026-03-24/

中国による潜水艦戦に備えたセンサー網整備
「対潜水艦用の海洋センサーネットワーク」→https://holylandtokyo.com/2025/11/06/13017/

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