記事の本題である「ホルムズ海峡への海自艦艇等派遣の根拠問題」について入る前に、3月19日の日米首脳会談に関する識者の「X」発信を「つまみ食い」し、ホルムズ海峡や本命台湾問題に関する成果を振り返り、次に会談後のホルムズ海峡関連での日本の立ち位置について確認いたします。
なお、もともと今回の日米首脳会談は、「西半球重視」を掲げ始めたトランプ政権を、如何にアジア太平洋、特に台湾有事の抑止や対処に引き留めておくかを最重要テーマとして、3月末に予定されていた米中首脳会談(5~6週間延期が決定)の前に設定したものでしたが、この点でも台湾当局から成果を讃える声明が出ていることを、決して見逃してはなりません。
【日米首脳会談全般について】
3月20日 細谷雄一・慶應義塾大学教授のX
今回の日米首脳会談は、外交というものが、「即興」ではなく、いかに緻密に、周到に、戦略的かつ想像的に準備をして、実践をすべきものであるかを示すものでした。最悪の帰結も考えられる中、不要な譲歩もなく、考えられる最良の結果だったと思います。
3月20日 秋山信将・一橋大学教授
活用可能なあらゆる資源を組み合わせて、対米関係を切り抜け、さらに国内政治的には、現在の法的な枠組みの変更に踏み込むという機微な点に触れることなく(立場を変えることなく)米国に対して支援するという姿勢を示し、トランプ大統領の満足感を引き出した。
自民党や官邸、外務省のチームは大変に良く練られた戦略を構築されたと思います。
3月20日 山尾志桜里 元立憲衆議院議員
この局面でノーと言わずにノーと言うことに成功した高市外交。引くも進むも難しい局面をよく乗り切った。
米国の行動を日本単独で国際法違反と誹ることはぐっと堪えて、しかし自らは国内法と国際法の一線を守り、トランプ氏との良好な関係を維持し、ひいては日本の国益を守る。
トランプ氏という特異なキャラ率いる米国に依存した日本の安全保障環境という現実に立てば、この判断は正しかったと私は思います。
3月20日 長島昭久・自民衆議院議員
米側発表のファクトシートを読む限り、台湾や北朝鮮をめぐる我が国の主張は首脳間でしっかり共有できたのではないかと確信します。
3月20日 台湾の林佳竜外交部長(外相)
日米首脳が台湾海峡の平和と安定が不可欠だとの認識を共有したことに「心からの歓迎と感謝」を表明(外交部(外務省)発表を共同通信が配信)
なお、同外交部は「米国や日本などとの協力を強めて現状の維持に努め、世界と台湾海峡の平和、安定と繁栄を確保する」とコメント
【会談に併せまとめた欧州+加との対イランの共同声明に関し】←その後20か国に拡大
日本時間3月19日、英・仏・独・伊・蘭・加・日の首脳は、ペルシャ湾においてイランが非武装の商業船舶に対して行った最近の攻撃、石油・ガス施設を含む民間インフラへの攻撃、およびイラン軍によるホルムズ海峡の事実上の閉鎖を、最も強い言葉で非難する共同声明を発出
→https://www.mofa.go.jp/mofaj/me_a/me2/pageit_000001_02807.html
3月20日 佐橋亮 東大教授
今トランプ大統領がもっとも懸念しているホルムズ海峡問題で、今回の首脳会談の潤滑油にもなったと思われるのは、日本が欧州と声明を出したことでしょう。そのきっかけは小泉防衛大臣とヘグセス国防長官の電話会談(3月16日)にあります
3月20日 細谷雄一・慶應義塾大学教授のX
日米首脳会談前に日本が孤立して批判されないような同志国連携のバックアップが望ましい日本、その前提の近年の日英関係の緊密さが生み出した、見事な文章。日欧連携が無意味でないことの証左。
よく練られたバランスの良い(それは米国とイランの双方の間という意味ではなく、明瞭に米国側に傾斜)、外交のプロたちによって起案された文章。若手の外交官にはお手本となるような、案文作成だったと想像します。
【会談成果を受けた今後の対応について】
高市総理は会談後の会見で、ホルムズ海峡対応に関する質問に対し、「日本の法律の範囲内でできることとできないことがございますので、これについては詳細にきっちりと説明をいたしました」と回答
3月20日 山田吉彦・参議院議員·国民民主党
見事な外交。そして日本の今後の課題は「実行」。各国との協調の中に日本の法制度に基づいた立ち位置を築かなければならない。
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3月20日 長島昭久・自民衆議院議員
御意。必要となった場合、「ホルムズ海峡安全確保特措法」(仮称)制定に向け、ご協力の程よろしくお願いします。
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(以下は、19日の日米首脳会談前に作成した記事です)
トランプ大統領は7か国への要求を取り上げましたが・・・
安倍政権が支持率を大きく下げてまで成立させた「安保法制」でも「想定外」
頭の体操として、X上での玉木ー長島リレー配信を振り返る
【まず3月16日の玉木代表のX発信】
●いかなる法的根拠で派遣できるか
・存立危機事態
・重要影響事態
・国際平和共同対処事態
・海上警備活動
・海賊対処
・・・のいずれでも、現在のホルムズ海峡への自衛隊の艦船の派遣は難しい。
●もう一つ考えられるのが、防衛省設置法第4条第1項第18号の「調査及び研究」を根拠にした派遣である。
●しかし、「調査及び研究」での派遣は、武器使用にも制限があり、いわば丸腰での派遣となる。2019年に派遣した際も、「調査及び研究」を根拠にしたが、当時の護衛艦及び固定翼哨戒機による活動の範囲は、
・オマーン湾、アラビア海北部、バブ・エル・マンデブ海峡東側のアデン湾の三海域の公海とされていた。
●実質的に戦闘状態にあるホルムズ海峡やペルシャ湾に「調査及び研究」を根拠に自衛隊を派遣することは困難である。
●他方、アラビア半島南側の三海域の公開に派遣しても、ホルムズ海峡の航行の安全の確保の観点からは意味のない派遣となってしまう。
【以上の玉木配信につなげる形で3月18日に長島議員はX発信し、】
●玉木さんが簡潔に整理してくれました。
●現行法制では、ホルムズ海峡への自衛隊部隊の派遣はほぼ不可能です。とはいえ、我が国のホルムズ海峡への依存度を考えれば、戦争勃発の経緯はともかくとして、航行の安全確保のために積極的な役割を果たす責任があることも自明です。その前提として、一刻も早く停戦を実現するべく外交努力を尽くすことは言うまでもありません。
●その上で、最大の受益国である我が国は、米国から要求されるまでもなく、イラン戦争とは一線を画して、ホルムズ海峡の航行の安全を確保するための国際協力の先頭に立つべきです。その際連携すべき国は、インドです。我が国同様イスラエルともイランとも米国とも良好な関係を維持しているインドと連携して欧州とアジアの同志国に広く呼びかけ、ホルムズ海峡の安全航行を確保する多国籍部隊を構築するのです。
●我が国としては、その先鞭をつける意味から、すでに海賊対処行動でインド洋に展開中の護衛艦と哨戒機を警戒監視活動の一環としてアラビア海からオマーン湾へ進出させると共に、本格的な自衛隊派遣のための特措法の成立させるべきです。2008-09年に海賊対処のために海上警備行動で護衛艦を派遣しつつ海賊対処特措法を制定させた先例に倣うのです。任務には船舶護衛や警戒監視と共に機雷掃海も付与すべきでしょう。
●もちろん、掃海は停戦後です。ミサイルや攻撃型ドローンの飛び交う中で掃海作業を始めることはできません。しかも、機雷掃海には数ヶ月単位を要します。ですから、停戦後間髪入れずに活動できるよう、早めに近傍海域へ展開すべきでしょう。
●いずれにしても、高市総理には、ここまで腹を括り、関係機関に準備を指示した上で訪米し、トランプ大統領に早期停戦を迫ることを期待したいと思います。すべては、国民の命と平和な暮らしを守り、国際秩序を回復して中東に安定を取り戻すためです。日本にはその国際努力を主導する力も世界からの信頼もあります。
3月21日 長島昭久・自民衆議院議員
日本が主導したホルムズ海峡安全確保のための有志連合行動計画(6カ国で始まり、現時点までに20カ国に拡大)には、様々な形態や参加方法が考えられます。全ての国に艦艇を出すことが義務付けられているわけではありません。船舶護衛から、警戒監視、後方支援、機雷掃海など、戦争の推移につれて様々フェーズで様々な関わり方があると思います。
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3月18日の夜に高市首相は米国ワシントンDCに向け出発されたので、長島議員による3月18日朝の発信は、トランプ大統領が要求をひっこめる前の段階で、かつ、首相が離日する前に行われたものです。
安倍総理時代に内閣支持率を大きく下げてまで成立させた「安保法制」で、様々な事態に対応できる法体系を整えたはずの日本でしたが、さすがに今回のイラン攻撃のような、「国連決議」等の国際的合意形成がないままの軍事作戦に対応することは「想定外」であり、致し方ない難しい事態を迎えています。
なお長島議員は、3月10日付YouTube番組「選挙ドットコム」に出演された際にも、「安保3文書改訂のポイント」と併せて本件への持論を説明されていますので、ご興味のある方は末尾掲載番組(54分間)をご覧ください。
この記事をブログ掲載する時点では、3月19日の日米首脳会談の結果が出ているのでしょうが、基本的な現状法体系を理解するためご紹介いたしました。


要求した翌日には取り上げた形のトランプ大統領による「ホルムズ海峡への海軍艦艇派遣要求 to 英仏独伊と日中韓」ですが、本要求が継続していた場合の海上自衛隊艦艇派遣要求に対する日本の対応について、ト大統領が取り下げる前の段階で、3月16日と18日に玉木・国民民主党代表と長島昭久・自民党衆議院議員から発信がありましたので、現在の日本の関連法体系を整理理解するために引用させていただきます。