欧州次世代戦闘機開発もう一つの極 FCAS
仏ダッソー社と独エアバス社が覇権を争い混沌
今独は EuroFighter で英と組むが仏に乗り換える難局
仏が離脱まで示唆し、完成 2045年以降に後退(GCAPは2035年)
末尾の過去記事等でご紹介しているように、欧州での次世代戦闘機開発には、紆余曲折を経て現時点で、「独仏スペイン」のFCAS(Future Combat Air System)グループと、「英伊+日本」の GCAP (Global Combat Air Programme)グループが存在しています。
その中の「独仏西」で構成される FCAS グループは、仏ダッソー社と独エアバス社、更にスペインのインドラ・システマス社が各国を代表する企業として参画し、プロジェクト発足時の取り決めで仏ダッソー社がリーダーとなっていますが、独エアバス社は実質スペインのインドラ社を配下に置いており、投票すればエアバス社が3票の内 2票を握る状態で、これを嫌う仏ダッソーがエアバス側と様々に対立して今日に至っているようです
最近仏ダッソーCEOのEric Trappier氏が「ダッソーがプロジェクトのリーダーだ」と強調する発言を行ったことを念頭に、17日の会見で独エアバス社担当責任者Jean-Brice Dumont氏が、「本計画には任命されたリーダーである仏ダッソー社がいるが、各国の負担分に相当する割合が、各国に確保されているべき」と反論するなど、
両社は公の場で、対立を隠さず批判しあう状況となっており、一部報道によれば、仏ダッソーCEO はプロジェクトからの完全撤退の可能性も示唆しつつ、「平等に分担された作業は技術の劣化を招く」とまで発言している模様です。
独エアバス社のDumont 氏は、現在運用中の EuroFighter 戦闘機で同社が英 BAEやLeonardo 社と提携関係にあることから、将来戦闘機開発プロジェクトで EuroFighter のライバル機を売り込む仏ダッソー社と組む難しさを指摘し、現在の知的財産権を守りながら、新プロジェクトで将来は全てを共有することに移行しなければならない微妙さが、緊張の原因の一つだと吐露しています。
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ただDumont氏は同時に、「賢明なワークシェア」と「適切な交戦規則」があれば、プロジェクトは依然として可能だとも語っている模様です。残念ながら、このような中核たる仏独企業の対立表面化で、FCAS機の完成時期は、当初の2040年から 2045年以降に延期され、ライバルの英伊日 GCAPが2035年頃の前倒しを狙い、米の第6世代機F-47開発が既にデモ機の初試験飛行済で、2029年導入開始を狙う中にあって、出遅れ感が香めません
同時に、ウクライナやイスラエル軍が「安価なドローン」を巧みに活用した作戦を鮮やかに成功させる事例が続いており、有人戦闘機開発への巨額投資は、今後ますます「冷たい逆風」にさらされることになるのでしょう。
【ご参考:欧州の戦闘機開発2グループ】
●「独仏スペイン」の FCAS(Future Combat Air System)
→独 Airbus, 1 Dassault, スペイン Indra、仏 Thales, 1 MBDA and 仏 Safran など
●「英伊十日本」のGCAP (Global Combat Air Programme)
「TEMPEST」計画とも呼ばれる
→英BAE、英ロールスロイス、日MHI、伊Leonardo など
仏独スペインの FCAS開発
「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」→https://holylandtokyo.com/2018/04/11/7020/
「ベルギーが関与希望か」→https://holylandtokyo.com/2023/06/26/4766/
英伊+日本のGCAP 開発
「No2の伊代表が語る」→https://holylandtokyo.com/2025/06/13/11826/
「陰然な雰囲気の GCAP」→https://holylandtokyo.com/2025/01/24/10678/
「英が踏みとどまる」→https://holylandtokyo.com/2024/11/12/6529/
「英伊が日本恫喝:逃げるな」→https://holylandtokyo.com/2023/02/14/4299/
「イタリアも参加へ」→https://holylandtokyo.com/2019/09/12/66471
米国のF-47 戦闘機開発
「行動半径は F-22の約2倍」→https://holylandtokyo.com/2025/05/20/11601/
「口社反論せず F-35 改修追求」→https://holylandtokyo.com/2025/04/25/11392/
「海軍 FA-XXや同盟国との関係」→https://holylandtokyo.com/2025/04/22/11201/
「F-47は予算枠外だった」→https://holyandtokyo.com/2025/04/03/11185/
「ボーイング F-47 に決定」→https://holyandtokyo.com/2025/03/24/11099/

