無人ウイングマンCCAの維持整備負担軽減がカギ

研究レポート結果を空軍担当少将にぶつける
Anduril社とGA社には部品共用化努力を指示済とか
ロジ負担軽減、離陸方法、任務割り当てを議論

5月8日、米空軍協会ミッチェル研究所が2月に発表済のレポート「CCA部隊成功のカギは兵站支援体制:Logistics While Under Attack : Key to a CCA Force Design」に関する討論会を開催し、米空軍のCCA(無人ウイングマン機:Collaborative Combat Aircraft)担当でもある空軍司令部将来空軍検討部長(head of Air Force Futures)Jospeh Kunkel少将に、研究結果をぶつけて見解を問う方式で進められていますので、同討論会の公開映像も添付してご紹介します。

レポート執筆者は同研究所のMark Gunzinger研究員(退役大佐で元爆撃機パイロット)で、同研究所がこれまで3回実施したCCA運用を想定したWar-Game結果とWar-Game参加者の所見を踏まえ、CCA作戦運用のカギはCCAの維持整備負担を如何に軽減するかにあると主張し、併せてWar-Game中に参加者が痛感した「CCA離陸方式」や「任務分担」についても所見を披露し、討論の材料としていますので、概要を以下にご紹介します

●執筆者Gunzinger研究員
・CCA運用構想を米空軍が検討する際は、現場での維持整備の効率性を最優先で考慮すべきで、標準部品の使用等で、様々なCCA派生型が前線に混在して部隊負担が増すようなことを避けるべき。
・様々な派生型CCAが混在せざるを得ない場合でも、共通の兵器を使用することで物流負担の軽減を図るべき。
・また前線の維持作業負担を軽減するため、給油装置、その他の地上装備、兵器、積載装置などを共通化すべき

●将来空軍検討部長Kunkel少将
・現在、第1弾CCAを競って試作しているAnduril Industries社とGeneral Atomics Aeronautical Systems社には、同じ推進装置、同じ制御装置、アクチュエーター、タイヤなどなどの使用を検討するよう要請している。
・必ずしも全てが同じにはならないが、部品の多くが同じである必要性は認識している
・またCCAの基本設計思想は、整備員に負担をかけることなく何百時間も飛行を繰り返すことができることを基本的な要件として求めている

●執筆者Gunzinger研究員
・War-Game結果や参加者の所見から、滑走路に極力依存しない垂直離着陸や短距離離着陸可能なCCAがあれば、敵に存在場所を知られる可能性が大きく低下し、米空軍のACE構想遂行にも多いに貢献可能との結論が得られている

●将来空軍検討部長Kunkel少将
・将来的にCCA機数を増加する過程で、ご指摘のような利点から、短距離離陸または垂直離陸CCAの検討必要性を認識している。
・一方で、一般的に滑走路依存を減らすと、搭載量と航続距離を犠牲にする必要があり、そのバランスをどう判断するかが重要となる
・米空軍としては、地上からCCAを発進させるだけでなく、他の航空機から投射することも検討している。必ずしもCCAは滑走路に縛られてはいない

●執筆者Gunzinger研究員
・我々の検討では、CCAは、敵の防空システム内の電子システムを「劣化、混乱、破壊」させる等の「non-kinetic effects:非運動学的効果」を生むための手段として優先活用すべきとの結論である。
・またCCAが、その損耗を想定した低コスト設計や前線での負担が低いことから、主に弾薬や物資を前線に近い展開先まで輸送する重要任務にも適していると判断した

・全体としてWar-Game結果から、CCAは様々な潜在能力を持つが、5世代機やF-47の代替的な役割は果たせない。したがって従来にはない新たな戦闘投入法を考案して特性を生かすべき
・CCAはあくまでも「追加戦力」であり、何かの「代替」として考えるべきではなく、その能力を生かすには有人機以上に兵站面での配慮が必要だ
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約60分の討論会映像記録

日本ではまだまだ馴染みの浅いCCA(無人ウイングマン機:Collaborative Combat Aircraft)への理解を深めるため、長々とご紹介いたしましたが、まんーすが痛感するのは「CCAをどのように使いたいのか」「どのように運用するのか」との根本の運用要求が曖昧なまま、「無人機を使わないと、米空軍が非難されるからとりあえず検討しよう・・」的な雰囲気を強く感じます。

「有人機の存在ありき」の発想から抜け出せない限界も強く感じます。だから対中国航空作戦の大前提となる大課題、「根拠となる滑走路が確保困難」から目を背けたまま、やみくもに前進しようとしている感がぬぐえないのです。

レポート現物(約40ページ)
https://www.mitchellaerospacepower.org/app/uploads/2025/03/Logistics-While-Under-Attack-Key-to-a-CCA-Force-Design-WEB.pdf

Stimson Center による当然の帰結レポート
「日本やグアムの滑走路には期待できず」→https://holylandtokyo.com/2025/01/06/10547/

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