大将だけでなく将官全体の1割削減も指示
現在の米軍全体の将官数は約800名で、大将は44名
動画で「これは高級幹部らを罰するための削減ではない。分別のある削減を通じて、戦略的な即応能力と運用効率を最大化するための慎重な審議を重ねた結果の方向性だ」との語り、指示文書(MEMO)でも「(上記ポスト削減で、)リーダーシップが最適化・合理化され、余剰の戦力構造を撤廃することにある」と狙いに言及し、
「不必要な官僚機構に縛られることなく、優れた上級リーダーを育成することにつながる」と述べ、軍事官僚組織で最もセンシィティブな「将官ポストとその数」にメスを入れることへの理解を求めています
今後の具体的なポスト削減の進め方や時間的スケジュールについて国防長官は明確に言及していませんが、動画の中で国防長官は「削減の多くは戦闘部隊の統合によるものだ」、「国防省が戦闘指揮官のポストを再評価する前に、各軍種はまず自軍の組織内ポストを削減する必要がある」と各軍種内での検討を促し、
また別の部分では「人員削減は二段階で実施され、第一段では現在のポストの軍種構成を見直し、第二段で統合指揮計画の戦略的見直しを行う」、「我々は肥大化した司令部から兵士へと資源を移すつもりだ」とも説明しています。これは例えば、空軍大将が現在は、米北方軍、米輸送軍、米サイバー軍に配置されることが慣例となっていますが、この見直しを含む可能性を示唆しています
本件に関しメディアの中には、「国防長官は一部の戦闘司令部の統合または廃止を検討している。例えば、独立した米アフリカ軍の廃止や、米北軍と米南方軍の統合などが挙げられる」、「戦闘司令部の統合に伴い、統合参謀本部の関連職も削減される可能性がある」、「米中央軍や米欧州軍の司令官を含む一部の戦闘司令官は近々退役するタイミングにあり、一定期間、空席となる可能性もある」と報じているところもあります
なお、動画の中で国防長官は本指示の意義につき、「1983年の Goldwater-Nichols 法以来、最も包括的な見直しになる」、「同法律は、戦闘指揮系統、計画、訓練、地理的責任範囲、任務、そして作戦責任における世代交代を象徴するものだった」と、米軍の「変革を象徴」する一歩だと位置づけています
ただ、この指示には米議会の民主党重鎮から直ちに疑問の声が上がっています。
例えば、上院軍事委員会のJack Reed筆頭理事(民主党)は、「私は常に国防省の効率化を求めてきたが、厳しい人事的判断は事実と分析に基づくべきだ。十分な根拠もなく、経験豊富な多くの将官ポストを削減することは、軍隊の『効率性』を増すどころか、むしろ軍を麻痺させる可能性がある。指示には明確な根拠があるようには見えない」と、米議会への説明を求めています。
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軍事官僚組織の中で最も機微な話題である「将官ポストとその数」について、事前に根回しがほとんどない状態で「月曜日」に発表されたものと推察いたしますが、新しい国防長官による制服組への「真正面からの挑戦状」とも言えます
米陸軍改革に関する4月30日公開の国防長官指示(明日記事アップ予定)でも、主要司令部の統廃合やポスト削減に踏み込んでおり、今後この改革の流れは他軍種にも波及しそうです。このブログで主に取り上げる米空軍に関しても、「F-47」導入決定を「飴」として、「ムチ」に相当する厳しい改革が待ち受けているのでしょう。
米軍の改革関連
「米陸軍改革を指示」→https://holylandtokyo.com/2025/05/08/11496/
「米空軍大改革を一時停止」→https://holylandtokyo.com/2025/02/12/10817/
ヘグゼス国防長官をご紹介
「上院で承認獲得へ熱弁」→https://holylandtokyo.com/2025/01/16/10611/
「国防長官候補へグゼス氏紹介」→https://holylandtokyo.com/2024/11/14/6539/

