前線部隊の要望を米議会が拾いDIUが動く異例の流れ
16候補機種から 4機種に絞り試作契約へ
試作機をどの軍種が担当するか未知のまま突き進む
何といってもこの片道無人攻撃機導入「Artemis」プロジェクトの特徴は、米太平洋軍や欧州軍現場部隊からの低コスト使い捨て攻撃ドローンを求める要望を参考に、米陸海空海兵隊ではなく、ウクライナ支援のため米議会が約50億円の予算で、安価で長射程のドローンを特定し、テストするよう指示したことに事業が由来している点です。
米議会の指示を受けた国防省は、2024年8月にDIUへ迅速な対応を指示し、DIU は具体的な要求を「使用可能な周波数帯が限定される環境下でも妨害電波等をかわし飛翔&通信可能で、多様なペイロードに対応可能で、迅速に発射可能」と設定し、わずか3か月で16の有望な提案を集めて12月に最初の提案説明を受け、今回試作段階に進む4つの提案に絞り込みました。
4つの提案は、米国の2社(Dragoon 社と AeroVironment 社)と、安全上の配点から名称非公開のウクライナ企業2社からのもので、今後 DIUは今年4~5月にデモ展示テストを経て、迅速に最終的な選定結果を発表予定とのことです。
DIUの担当責任者はDefense-Newsの取材に対し、提案要求は航続距離50km以上としていたが、最終候補4機種は航続距離約 100kmの2機種と1000km以上の2機種の2つのタイプとなっており、DIUが要求した「探知追跡が困難で、双方向通信経路が複数あり、任務計画ソフトを具備し、数時間で新装備やソフトを導入可能なモジュール式」と説明しています
また価格についで同担当責任者は、1機 300万円以下を想定しているが、大型の候補はセンサーや他サブシステムを含めると 1000万円近くになると現時点で見積もっているようですが、「安価に大配備」を目指したプロジェクトの具体的兵器調達数は現時点では未定だということです。ただ、例えば候補のウクライナ企業は、現時点でも月産200機ペースでウクライナ軍用に候補機体を製造しているとのことです
以上のように、具体的な攻撃ドローン調達は順調に見ますが、問題は米議会が要求元であることから、当該ドローンを前線配備するための「移行パートナー」や「受け皿となる軍種」が現時点で存在しないことだとDIU担当者は語り、米軍のいづれかの軍種に購入を受け入れてもらえるような優れた装備として完成させることが至上命題だと、「Artemis」プロジェクトの特異性と難しさを語っています
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このDefense-News記事から、まんぐーすが学んだのは・・・
●米太平洋軍や欧州軍前線部隊は、安価な片道攻撃ドローンを強く欲している
(そうなのに、各軍種は当該兵器の予算要求をしていない魔訶不思議)
●短期間に16もの候補機体が応募するドローン産業の群雄割拠状態
(結構盛りだくさんな要求を提示しているにもかかわらず)
●1機数百万円~1千万円程度で、相当な能力の無人攻撃機が調達可能なことetc.
●戦時下のウクライナ企業が堂々と選定される実力を持っていること
加えて、「戦いの実相が、驚くべき速度で変化している」ことを改めて強く感じさせられる記事でした。
ウクライナ関連で考えること
「米はウの迅速新技術導入に学べ」→https://holylandtokyo.com/2025/03/07/10847/
「ウ開発の音響ドローン探知装置」→https://holylandtokyo.com/2024/10/24/6355/
「低性能でも大量のEW兵器連携に」→https://holylandtokyo.com/2024/06/24/5992/
「ウで戦問機による制空時代は終焉」→https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/

