歴代国防長官が先送りし続けた課題
米議会と国防長官は米陸軍に防空投資を優先させよ
基本的には統合で取り組むべき課題との基本的姿勢を示しつつも、歴代の国防長官が先送りしてきた問題で「これ以上の先送りはできない」重要課題だと指摘し、国防長官は米議会の理解を得て「米陸軍に地上機動部隊から防空部隊への適切な資源の移動」を行わせるべきだと主張し、併せて統合で取り組むべき施策について提言しています
背景には、「中国が飛行場の防衛、拡張、強化に多額の投資を行っている一方で、米国はこの分野でほとんど何もしていない」とのHudson研究所の分析結果や、また24年末にAllvin空軍参謀総長とGeorge陸軍参謀総長が本件に関し協議を行ったものの、「空軍と陸軍の役割や任務という枠を超えた更なる検討が必要」との「成果ゼロ」結果しか生まなかった現状があり、
米空軍が敵攻撃による被害を局限するために追求中の航空戦力分散運用構想(ACE構想)はあるものの、現在米陸軍が主力として整備を進めるパトリオットやTHAADのような防空システムは、米空軍が追求する小規模な基地群での運用に対応するにはコストがかかりすぎるとの問題認識があります。以上のような様々な現状の課題を踏まえハドソン研究所のレポートは・・・
ハドソン研究所のレポートの提言概要
●3つの主要な勧告
・能動的防御と受動的防御の両方を備えた強靭なインフラを構築すること
・長距離で運用でき、より長い時間空中に留まれるシステムを配備すること
・中国に防衛手段への投資負担を強いるため、より安価なスタンドオフ兵器やスタンドイン兵器の新型を米軍が配備すること
特にHudsonレポートは以下を重視
●仮に米空軍がACE構想で分散運用を推進しても、中国は十分に分散基地を攻撃する能力があるので、米空軍は航空機格納庫や、燃料および弾薬貯蔵庫などの施設インフラの敵攻撃への強靭性を強化すべき。米軍インフラの強靭性強化により、中国軍により破壊力の大きい高価な兵器を使用させることで、中国軍の攻撃可能範囲を抑えることが期待できる
●上記米軍インフラ強化の代わりに、米空軍は遠距離からのみ活動せよとの主張は正しくない。なぜなら、そんな部隊構築には長期間が必要で、飛行場の受動的および能動的な各種防御能力強化は将来的にも不可欠な要素であるから。
●以上のような投資には大きな資金が必要となるが、その確保策の一つとして、次期政権の国防長官は米議会の理解を得て、陸軍地上機動部隊から陸軍防空部隊への資源移動を進めるべきで、本件は次期国防長官が下す必要のある「最も重要な戦力設計上の決定の一つ」である。歴代国防長官は本件を先送りし続けてきたが、そんな時代ではない
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最近ありがちですが、まんぐーすは以下にURLをご紹介するHudsonレポートの「Executive Summary」を斜め読みし、主に1月8日付DefenseOne記事から本レポートをご紹介していますので、ご興味のある方は是非Hudsonのwebサイトで36ページの現物をご覧ください
年頭6日の記事ではStimsonの「中国ミサイル脅威」関連のレポートをご紹介し、厳然たるこの脅威から目を背けては何も始まらない現状を改めて取り上げましたが、Hudsonのレポートも基本的には同じ問題認識の上に書かれたものです。
Stimsonの中国ミサイル脅威レポート
「日本やグアムの滑走路には期待できない」→https://holylandtokyo.com/2025/01/06/10547/
Kendall前空軍長官の主張
「航空基地防衛任務を陸軍から空軍へ」→https://holylandtokyo.com/2024/11/26/6507/
Hudson研究所のレポートwebページ
→https://www.hudson.org/arms-control-nonproliferation/concrete-sky-air-base-hardening-western-pacific-timothy-walton-thomas-shugart
レポート現物(36ページ)
→https://s3.us-east-1.amazonaws.com/media.hudson.org/Concrete+Sky+-+Air+Base+Hardening+in+the+Western+Pacific+-+Shugart+-+Walton.pdf