21日付ワシントンポストが米・NATOアフガン軍のマクリスタル司令官(McChrystal)報告書をすっぱ抜いて話題になっていますが、「増員がなければ負ける」との単純な記事が多いので、少し細部を紹介します。
ウォーターゲート事件の報道でピューリッツァー賞受賞のボブ・ウッドワード(写真)による記事は、国防省の依頼で一部が削除されたようですが、深刻な現実を物語っています。現物はワシントンポストHPhttp://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/09/20/AR2009092002920.html?wpisrc=newsletterをご覧下さい。
●最も脅威な反政府組織はQSTである。彼らは主要地域に「影の政府」をたて、住民の意見を聞いてヒトを入れ替え、独自の裁判まで行ってムスリムのアイデンティー保護を訴えており、勢力は大きく、拡大している。次にHQN、これはパキスタン領内からの援助を得ており、アルカイダやパキスタンの武装組織と関係が深く、アルカイダの復興をねらっている。3つ目はタリバン内で鉱物資源の利権をねらうグループである。
●麻薬は武装組織の重要資金源であるが、それだけでなく、パキスタンを根元とする資金の流れを立たないと彼らの活動の妨害にはならない。パキスタン国軍情報部ISIからも資金の一部が流れている。
●アフガン新戦略の基本方針「タリバン等の掃討より、住民の保護を優先する」ことが十分徹底せず、不正規戦の基本である「地域住民の信頼を得る」ことや「住民を第一に考えること」の重要性が正しく実行されていない。装甲車の中や砦の中ばかりにいてはだめだ。住民とリスクを共有する意志がないと作戦は成功しない。
●2011年12月までに、現在の9万人から13.4万人への増員が必要。
●NATO軍はアフガン住民の保護に積極的でなく、自軍の防護に囚われて住民との物理的・心理的距離を離す事になっている。我々は軍事的に負けるのでなく、我々自身を壊している。NATO軍は、アフガンの文化・政治システム・経済をほとんど理解しておらず、タリバン等がいかに住民に影響を与えているかを考慮していない。
●アフガン社会に蔓延する腐敗がアフガン社会全体の不信感を増長している。弱体な政府機関、悪質なブローカーの横行、高官による権力の乱用、腐敗の拡大などにより、アフガン住民の政府支援意識はほとんど無い。
●刑務所入所者の約1/6を占めるテロ・不正規分子が、普通犯罪の入所者を洗脳してタリバンやアルカイダへ引き入れており、アフガンの刑務所は今やテロ活動の温床・発起場所となっている。
●熱心でない反乱分子に対しては、通常の生活に戻れるよう就職斡旋や身の安全確保といったインセンティブを与えて足を洗わせることが必要。
マクリスタル司令官の新戦略の背景には、反政府勢力対処用の陸軍・海兵隊の新マニュアルがあります。禅問答のような内容を含む同マニュアルに関しては「米陸軍・海兵隊が「禅」の思想を」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-05-24 もご参考に
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