ゲーツ長官が空軍へ「最後通牒」

090916-D-7203C-003b.jpg16日ゲーツ国防長官が空軍協会大会(Air Force Association Convention)で行った、非常に明確で力強くバランスが取れかつ知性を感じさせる米空軍保守派への「とどめの一発」演説をご紹介します。中国やロシアの脅威に対するストレートな言及もあり、今後の米国防政策を示唆する部分もありますので、原文をご覧になることを強く強くお奨めします。
(原文)http://www.defenselink.mil/speeches/speech.aspx?speechid=1379 その概要です。少し長くなりますが・・・
冒頭のジョーク?
米空軍編成前の航空戦力推進者アーノルド陸軍大将は、当時のルーズベルト大統領と対立してグアムでの勤務となったが、その事件と同年には同大統領からディナーに招かれた事例もある。政治と軍の間のちょっとした緊張は今に始まったことではない。
空軍への賛辞(戦闘機への皮肉か?)
イラクやアフガンで、A10を擁する74戦闘飛行隊はわずか7ヶ月で記録的な2800ミッションを立派にこなし、214偵察群はプレデターで17000時間もの偵察を行い、爆発物処理のホートン空軍軍曹は7トンもの路肩爆弾を処理する傍ら、爆弾製造犯6人の捕獲にも貢献した。38救難飛行隊は320名もの負傷者を救出し、305救難飛行隊は決死の飛行で陸軍特殊部隊の救助と弾薬運搬をおこなった。C130は不整地への着陸技能を遺憾なく発揮し、整備、警備、医療等の後方支援と相まってイラクやアフガンでの任務をささえ、飛躍的に増える空爆任務を支えている。
空軍は軽攻撃機と輸送機のユニット派遣を検討しているが、安価で現地のニーズにあった検討であり、受け入れ国にも利用可能なアイディアである。無人機の操縦者養成が戦闘機や爆撃機操縦者より多いのも、ISR任務の重要性を踏まえた施策だ。
しかし、我々は現在の戦いにのみ備えているわけではない。20年、30年先をも考えなければならない。
戦闘機問題への姿勢(中国等への脅威認識)
F22のアップグレードのため、今後5年間に6500億円を投入する。また来年度予算案が一端を示すように、F35には4600億円の開発経費と30兆円の調達費を用意している。230機の戦闘機が退役する事を取り上げ「ファイターギャップ(戦闘機不足)」を主張する者がいるが、その主張は時代遅れの見積もりに基づいている。全ての要求は適切なシナリオに基づく潜在的な相手を対象に定義されるべきである。
中国に関して言えば、中国が最初の5世代機を保有する時点で、米国はF22とF35を併せて1000機以上の5世代機を保有するのである。そしてその差は2020年代にも拡大するであろう。技量や兵站部門で言えばより顕著である。昨年米軍は35000回の空中給油を行ったが、ロシアは30回のみである。我がF22とF35のコンビは航空優勢を将来にわたり確保するであろうし、活躍の場が飛躍的に拡大している無人機は5世代機とともに米国の戦いに新たな次元を加えるであろう。
中国の通常戦力の脅威はそれほど恐れる必要はない。しかし、中国の我々の機動を妨げ選択肢を狭める能力に懸念をもつ。サーバー、対衛星・対空・対艦兵器、弾道ミサイルは米軍のプロジェクション能力と同盟国の支援能力を脅かす。特に海外基地と空母機動部隊に対して。これらは足の短い戦闘機の有効性を殺ぎ、いかなる形であれ遠方攻撃能力の重要性を増す。
調達・開発への姿勢(B2を例に)
QDRでも吟味が必要な一分野である長距離爆撃機に関しては私も関心を持っている。我々が繰り返してはいけないのは、B2の様に価格が高騰して計画の1/6以下の数しか調達できないことである。もし仮称でB3を追求するなら、現実に則して開発生産され、当初の計画程度の数が生産されるべきである。全ての主要兵器システムについても、妥当な要求に基づいて、開発経費と納期が予定に沿って進められるべきである。
サイバー対処、宇宙、核戦力と給油機選定について
空軍が担っている衛星を通じた通信確保やGPSが極めて重要。宇宙部門とサイバー対処を一元化した24空軍(http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-08-21参照)に期待する。次期空中給油機の必要性重要性を理解している。選定は空軍の手に戻ってくる。またGlobal Strike Command による核戦力運用部隊の建て直し(http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-08-08参照)に期待する。
●「空軍の父」ミッチェルの先見性を再び
「空軍力の先覚者」であったミッチェルは、世界情勢や技術進歩から航空戦力の重要性を信じ、陸軍や保守派の批判と戦いながら今日の空軍の基礎を築いた。私はミッチェルから受け継がれている空軍の変革への力を信じ、この質を苦しい戦争や紛争の実相を経験した将来の空軍のリーダーや若手幹部に見いだすことを期待している。
正面突破ですね。でもこのようなリーダーがいる組織は強いと思います。たとえアフガンで破れても、遺伝子は引き継がれます。

(付録)QDR対中国の新作戦構想に関する部分(Holyland推定
   → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-05

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