VOICE12月号が「中国経済」特集

voice中国.jpg年末に向け、中国の今後を占う企画がテレビ・雑誌で盛んに取り上げられるようになりました。この世界的な不況の中、中国に頼らざるを得ない切実な現実と、本当にどうなるんだとの不安感がこれら特集記事や番組の背景にあるように思われます。
そんな中、PHPの提言誌VOICEの12月号が「2010年の中国経済」特集を組んでいます。
楽観論と悲観論が併記されていて勉強になるのですが、全般的には楽観論が表面的で、悲観論はより理論的に精緻、との印象です。また楽観論の方でも、不安材料が多くあることを指摘しています。
ただ、22日夜9時から放映されたNHKスペシャル「チャイナパワー第1回電影革命(映画産業の隆盛)」や第2回の予告編を見たり、自動車産業の友人の話を聞いたり、中国の市場としての魅力、人材の豊富さ、激しい競争等々を見ると、紆余曲折を経つつも右肩上がりの基調には違いないものとの思いを持たざるを得ません。頭の中を整理するつもりでVoiceの記事を紹介してみます。
門倉貴史BRICS経済研究所代表(楽観論)
voice門倉.jpg中国の金融機関はサブプライム等に手を出して無かったため損害が軽微。実質の個人消費は堅調に推移。特に沿岸大都市部のニューリッチ層の台頭・増加により旺盛な消費を支えている。国家が土地を保有しているため、公共投資の施策化が迅速で効果が早い。「汽車下郷」「家電下郷」の勢いだけでなく個人消費拡大の余地は大きい。2010年の上海万博が起爆剤となり二桁成長も。出口戦略は慎重に。民族対立不安。米国10に対して中国市場はまだ1.5程度
胡鞍鋼 清華大教授(楽観論)
voice胡.jpg中国政府の迅速な「中国新政」4兆人民元の投資効果が現れ、各種指標が好転している。国際比較でも中国の回復が最も早く、アジアや世界を牽引している。雇用創出も目標の75%を達成、しかし大卒者の内定が7割弱で厳しい。投資も好調「政府が号令、市場が駆動」です。内需拡大のため都市・農民所得とも11%と8%の伸び。個人消費が経済成長に寄与する比率も近年7%程度づつ上昇。53%程度。輸出依存度も08年から減少傾向。中国新政で自信回復、回復軌道。ただ、内需拡大成功にはまだ時間と政策が必要。
●上野泰也みずほ証券エコノミスト(悲観論)
voice上野.jpgいわば「サイボーグ」経済の中国は極めていびつ。歪な人口構成に不十分な社会保障制度は個人消費の足かせ。「汽車下郷」「家電下郷」は需要の先食い。依然成長の柱である輸出の見通しは暗い。4兆元の投資の3.8兆は地方調達だが確保が困難な状況。財政赤字がGDP比3%を越える勢い。消費や輸出が伸びないのに投資が暴走増加している。鉄鋼、素材、新エネルギー分野も過剰。基礎となる経済統計への疑念。金融政策に連動した株式市場の異常な乱高下。少数民族問題。急速な高齢化(50年には61%高齢者)
●柯隆・富士通総研主席研究員(悲観論)
voiceかりゅう.jpg市場経済に移行した中国では、本来であれば民間企業が牽引役になる必要があるが、依然として非効率な国有企業が主役である。主要な民間企業はIT関連と不動産開発のみ。4兆元の財政出動の公共工事のほとんどを非効率な国有企業が落札している。預金の8割をもつ国有銀行の融資先も国有企業だけだ。2012年に景気対策と上海万博関連投資が一巡したときが危ない。粉ミルクにメラミンを混入していた国営トップ企業は、もうけ優先のモラルが崩壊した国営企業の「氷山の一角」である。
そのほか、宮正弘氏は、政府が戦略的に人民元の強化を図り、日本円を脅かすとの見通しを語り、財部誠一氏は、四川省のイトーヨーカ堂を例に、リスクが多く世界一難しい市場で勝つノウハウを教示しています。がむしゃらなところは日本も忘れてはなりませんね

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