本日は経済週刊誌・週刊ダイヤモンドの15日付オンライン版に掲載され大きな話題を集めている--世界のLNG市場に価格破壊 米国発「シェールガス革命」の衝撃--について取り上げます。図とグラフは、石油天然ガス・金属鉱物資源機構の市原路子主任研究員が公表されているスライドを使っています。
シェールガスとは、左図のように泥土が堆積して固まった岩の層に閉じ込められているガスで、これまで採掘が難しいことから非在来型の天然ガスと呼ばれていました。この非在来型には他に、CBM(コールベッドメタン:Coalbed Methane)たタイトガスサンドがあります。この非在来型ガスは、近年のガス価格高騰を受け採掘が試みられ、採掘技術改革も行われてきました。
特にシェールガスは、米国では膨大な量が埋蔵されていたが採掘が難しく、放置されていました。ところが90年代を通じた技術進歩で硬い地層からガスを取り出す技術が確立されたことで、数年前から開発が一気に進んだようです。
「シェールガス革命」と称されるこの大増産により、米国の天然ガス輸入見通しは大幅に下方修正されました。米国エネルギー省は2004年の見通しで、2025年の輸入依存度を28%と試算していましたが、2009年時点では2030年の依存度でもわずか3%と大幅低下しています。左図は非従来型の米国内の生産量見積もり。茶色がシェールガス、青がタイトガス、緑がCBM
また、米国天然ガスの確認埋蔵量はわずか3年で2割以上も増加しました。
これに伴い、米国の天然ガス相場は08年7月の13.69ドルをピークに、09年9月には2.4ドルまで急落しました。この結果、行き先を失ったLNG(液化天然ガス)が、激安LNGとして欧州市場に流入。世界的不況によるガス需要の減少も追い打ちをかけ、世界のガス市場は大混乱に陥ったようです。
天然ガスを人質に欧州に強気で臨んでいたロシアの独占天然ガス企業ガスプロムは昨年、西欧向け輸出が3割減少する羽目になっています。また昨年に巨大なLNG基地を完成させ、今年中には世界最大のLNG輸出国となるカタールでは、当て込んでいた米国需要が吹き飛びました。ちなみにカタールの最大のお得意さまは日本です。
当然、ロシアに虐められてきた英独仏をはじめ欧州各国は、ガスプロムの呪縛から逃れようとわれ先にとシェールガス探査に着手している模様です。しかし現時点では、技術面で米国のDevon社がリーダーのようです。
中国にも北米の「シェールガス革命」上陸の兆しが報じられています。2009年11月10日、細部は不明ですが、石油のShellはPetroChinaと「四川盆地富順(Fushun)-永川(Yongchuan)鉱区頁岩気(シェールガス)共同評価協議」を調印し、共同スタディーを開始した模様です。
勿論、日本の総合商社もこの地殻変動に商機を見出し、参戦を始めています。
昨年12月15日、住友商事は「全米最大のシェールガス生産地であるテキサス州バーネット・シェール・フィールドにおいて、中でもコアエリアと呼ばれる地域で天然ガス優良権益の開発生産プロジェクトに参入する」、と日本企業として初めて参画することを明らかにしました。
他の総合商社も参入の機会をうかがっており、三菱商事は韓国ガス公社と組んで、シェールガスの開発をねらっている模様です。
図やグラフを引用させてもらった市原主任研究員は「LNGの価格メカニズムが変革期にきている」と指摘されており、今後もLNGは買い手市場が続き、最大のLNG輸入国の日本も恩恵に浴する可能性が高まってきたと分析しています。
(付録)QDR対中国の新作戦構想に関する部分(Holyland推定)
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-05
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