2月1日に発表された2010QDRにはこれまでたびたびご紹介してきたように、ハイブリッドな戦いに備えた「rebalance」と「reform」をキーワードにした各種変革・改革への取り組みが語られています。rebalanceが軍の態勢や将来の装備体系に関するものであると考えると、reformはそれを支える国防省や米連邦政府の業務や対外政策に関する改革とも取ることが出来ます。(写真は、6日米イージス艦Deweyの進水式のホスト役で挨拶するマレン統合参謀本部議長夫人デボラさん)
そこで今日と明日はQDRの中では合計僅か3ページ強の分量(QDRのp81-84)ですが、日本にとっても含蓄深く、かつ影響もチャンスも含んだ「産業基盤の強化(Strengthning the Industrial Base)」と「米輸出管理システムの改革(Reforming the U.S. Export Control System)」の概要を紹介します。本日は「産業基盤の強化」です。
「産業基盤の強化」の部分の概要は・・・
●冷戦当時に形作られた産業構造の変化を指向しなかったため、20世紀型の兵器生産に囚われ、今日の安全保障環境が望む多様で柔軟性に富むシステム開発が十分でない。
●国防省と米国には、一貫し現実的で長期的な産業基盤の構造変革への戦略が必要。変化には長期間を要する。議会の協力も必要である。
●長期にわたり、軍需産業は少数の独占的企業からなるものと見られてきたが、それは正しいことではない。ユニークな企業もあるが、産業基盤全体によって支えられている意識が必要。また革新的な開発は、軍需産業だけでなく、一般市場、小規模軍需産業や大学研究機関でも行われることにも留意。
●小規模ながら特異な技術を持つ企業や一度失われたら再生が困難な技能が失われないような配慮が必要
●ベンチャー資金によって新装備研究がスタートし、市場に負債をしながら開発が行われることを当然と考えてはいけない。国防省は、自身の要求事項や長期投資計画を明らかにしなければならない。
●国防省は今後、軍需産業だけでなく広く一般企業も含めた産業基盤を活用した開発プログラムを立ち上げる。また、開発プログラム途上の問題点の把握や修正に包括的なアプローチを行う。
●外国企業の参入を公平に扱い、協力関係の深化による革新で21世紀の脅威に対応する。
上記改革の試金石となるのが危機にあるF-35開発プログラムの管理であり、次期空中給油機の機種選定にあるのですが、両方とも最初から壁に突き当たっています。しかし目指すところは全く正論正当で、世界中の安全保障関係者もこの方向を期待していることでしょう。
日本としては、衰退著しい防衛産業活性化の触媒として利用したいところですが・・・・。
(付録)
「どんな兵器を:Anti-Access環境対応」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-04
「Anti-Access環境への対応コンセプト」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-03
「QDRから日本は何を読みとるべきか」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
「Joint Air-Sea Battle Conceptは平成の黒船」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-09
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