20日、ゲーツ国防長官が安全保障関連企業の経営陣グループに、兵器や技術の輸出管理システム改革について語りました。本件は、昨年夏オバマ大統領のお墨付きを得て検討が開始されており、QDRでも一項目として取り上げられています(下記関連記事参照)。
ゲーツ長官が、「冷戦時代の遺物」で「国家安全保障を害するもの」と酷評する現システムの改革の方向性・概要を説明しています。
ゲーツ長官は現在の管理体制を・・・
●最も厳格な輸出管理体制を敷いていると考えられているが、厳格と効果的とは別の話である。(約50年前に形成された)現輸出管理システムは、米国にとって緊要な技術・能力を適切に守ることが出来ず、かつ同盟国等と必要な能力を享有することをほとんど不可能にしている。現行の規則、組織、手続きは、21世紀のテロ・WMD拡散・ならず者国家が取り巻く環境において、我々にとって百害合って一理なしだ。
対応の方向性は・・
●緊要で重要な技術の周りには高い壁を設け、他の部分の壁を低くする。現システムの問題は、無差別に同じ規制を適応し、無数の規制リストが存在することである。
●国務長官、商務長官、国土安全保障長官、DNI、安全保障担当大統領補佐官が国防長官と協力して改革を推進する。
具体的には・・・
●4つの鍵となる「単一single」改革からなる。それは単一の規制品目リスト(export-control list)、単一の輸出許可発行機関(licensing agency)、単一の規制監督協議機関(enforcement/coordination agency)、そして単一のITシステムである。
●現在は、国務省と商務省がそれぞれ作成している2つの輸出規制リストがあるが、これを一つにし、許可機関も一つにする。これにより、米国は緊要で重要な技術や品目、Crown Jewelsに集中し、軍事技術の優位を維持して外国の企業や政府が追随出来ないようにする。
●許可機関が、武器と軍民両用技術双方の管轄権を持つことになる。どの省庁が担当するかは今春中にオバマ大統領が決定する。
●違反者に対しては、違反を抑止できるような厳しい捜査、訴追、刑罰が科せられるであろう。(担当国防次官補は「現在の執行機関であるFBI、沿岸警備隊、国境警備隊などに取って代わるわけではなく、それらの業務の調整を行う」)
●まず第一に単一リストと許可機関を造り、第二に単一のITシステムとレベルに応じた段階的な輸出管理リスト、そして第三に重要な議会としての行動を求めたい(担当国防次官補は議会の承認がなければ「4つの単一」施策は推進できない。容易にすぐ改革が出来るようなものではない)
Holylandは専門家でないので、上記がどのようなインパクトを持つのか判りませんが、日本としてはとりあえず障壁の低下した分野で乗り遅れるわけには行きません。一方で、緊要な選りすぐりの技術には「より高い壁」ができ、F-22の様な例が将来も出てくるのでしょう。要フォローです。
(関連記事)
「武器輸出管理システム改善とQDR」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-09
「QDRの「(軍需)産業基盤の強化」」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-08
(付録)
「Air-Sea Battle Conceptの状況」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-23-1
「QDRから日本は何を読みとるべきか(Ver.1)」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
「(Ver.2)QDRから日本は何を読みとるべきか」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-01-1
「どんな兵器を:Anti-Access環境対応」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-04
「Anti-Access環境への対応コンセプト」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-03
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