米国や欧州が渇望するウクライナ製迎撃用ドローン

1発数億円の迎撃ミサイル枯渇で1機1000~2500ドルの迎撃ドローンを
イラン製攻撃ドローンShahed対策に米がウに緊急支援要請
露ウ双方の技術革新で約6週間毎に陳腐化の激しい攻防開発競争

3月11日付Defense-Newsが、イランの安価な攻撃ドローン「Shahed」による中東湾岸諸国や当地域の米軍展開拠点への攻撃に苦慮した米国が、Shahed等のイラン製ドローン対処に実績のあるウクライナに支援を要請している件に関し、ウクライナのドローン戦術を継続取材している記者による、ウクライナ企業のドローン迎撃ドローン開発や欧州諸国との連携強化を紹介する記事を掲載しましたのでご紹介します

同記者は、本ブログに3月3日付で掲載した記事「ウクライナ最前線で不可避な無人化進行」の「元ネタ」記事の取材執筆記者で、4年近くウクライナの最前線や同国軍事産業界をフォローしてきた女性で、今回取り上げる記事も、取材から得た細かな事象を列挙して全体の雰囲気を伝える内容で、体系的に整理された記事ではありませんが、「世界最先端」を行くウクライナのドローン迎撃ドローン開発の一端として取り上げます。

3月11日付Defense-News記事によれば
●現地時間2月28日に米イスラエルのイラン奇襲航空攻撃で始まった戦いは、開始わずか1週間で、イランが中東所在の米軍基地とイスラエル都市を中心に、中東12か国に500発以上の弾道ミサイルと約2000機のドローン攻撃を行い、迎撃のため米軍等は3日間で800発以上のPAC-3迎撃ミサイルを消費した。攻撃開始1週間後にゼレンスキー大統領は、米軍等のPAC-3発射数は、ウが過去4年間に支援を受けた量を上回ると暴露している
●西側から提供される防空ミサイル数を遥かに超える露の「Shahed」攻撃を受け、ウは自ら防空兵器を編み出す必要に迫られ、ウ企業は偵察や攻撃用に使用していたドローンを改良してドローン迎撃ドローンを生み出した。今ではウ国内20社以上が迎撃ドローンを製造し、ウのドローン迎撃兵器は中東12か国などで世界的争奪戦となっており、米国がウの支援を求めているほか、EUの特使が中東12か国とウ企業の仲介をしているとの報道もある

●ウ製の迎撃ドローンは、多くが個人携行が可能な小型で、大半は赤外線とレーダー追尾とAI誘導を組み合わせ、迎撃最終段階で数秒間の有人誘導するタイプであり、「Shahed」を追跡可能な時速390~540㎞で飛行して、目標に直撃か近接爆破で迎撃する。1機15~38万円程度の価格
●ウ同企業団体は米TV局に対し、例えばWild Hornets社の迎撃ドローンStingは、 2025年5月以降だけで約3900機の露攻撃ドローンを撃墜し、中にはジェットエンジン推進の露ドローンGeran-3や空対空ミサイル装備のShahedも含まれていたとのこと。

●再も低価格なのは、SkyFall社のP1-SUNで、3Dプリント製の機体を使用し1機15万円程度である。最近の改良で赤外線画像追尾機能を付加し、速度も450㎞まで向上させ、4か月間で2500機以上のShahed等の露ドローン迎撃に成功して、イラン攻撃以降、世界中から問い合わせが急増している。
●またUkrspecsystems社のOctopusは、英企業やウ企業15社以上が既にライセンス生産を開始し、NATO 5カ国(独仏伊ポー英)が、Octopusを基礎に安価な改良型迎撃ドローンの共同開発することに合意している注目株である。

●Aero Center社はソフト企業であるDwarf Engineeringと提携し、ウ軍および諸外国向けに、ドローン本体、搭載弾頭やセンサー等ペイロード、更に既存防空システムとの融合に必要なソフト開発を含む、包括的な迎撃ドローンシステム開発パッケージを売り込んでいる
●同社の部門責任者は、「(戦闘ドローンの)重量が100g増えると、航続距離が約2㎞短くなるトレードオフ」に触れ、任務に応じた「機体」「搭載兵器やセンサー」「システム融合」の 三位一体の最適化が極めて重要で、いくつかのウ企業は、西側メーカーが追随できない実戦実績を積んだ迎撃ドローンシステムを提供可能だと述べている。実際、ウ軍は露Shahedの7割を迎撃ドローンで対処し、貴重なPAC-3を弾道ミサイル迎撃に投入可する体制にある

●ただし、露側も日進月歩で攻撃ドローンを改良しており、例えば露の最新攻撃ドローンGeran-5は速度650㎞越えに成功しており、「約6週間ごとに露ウの技術が陳腐化する」と言われるほど技術開発競争は激しい。Aero Center社幹部は「ウは現状に留まることを許されない」と厳しい現実を語っている

●この様にウクライナは、新たな戦場用の全く新しいドローン防空システムを構築し、今、同盟国にその手引書提供を開始している。あるウ企業幹部は「我々に重要なのは、戦争を止め、新たな戦争を防ぐため、ドローン技術提供を通じて強固な同盟関係を気づくことだ」と語り、
●ウクライナ国防省はSNS上にShahedの映像を掲げるとともに、西側諸国に対する様々な防空提案を示し、最後を「Shahedとの戦いを支援可能ですので、弾道ミサイルとの戦いに協力お願いします」との言葉で締めくくっている。
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ウクライナの人々の知恵と粘り、更に自国の戦いを支えるだけでなく、海外にも販路や市場を開拓するたくましさに頭の下がる思いです。

しかし米国は、イランを攻撃した場合の、イランからの弾道ミサイルやドローンによる反撃を、どの程度予想していたのでしょうか? 弾道ミサイルは湾岸戦争時の「スカッド狩り」を振り返り、衛星写真や早期警戒衛星を組み合わせて迅速な対応態勢を準備していたでしょうが、Shahed等の攻撃ドローンを甘く見ていたのではないでしょうか? 

ステルス戦闘機や爆撃機による鮮やかな攻撃で確保した「制空権」や「航空優勢」は、4年ほど前までは、戦場支配や戦い全体の帰趨を大きく左右するものでしたが、今やドローンが飛び交う「低高度制空権」確保の重要性が大きな位置を占め、その世界では「電子戦」や「サイバー戦」がより大きな力を持つに至っています。

ちなみに「Shahed」の航続距離は2000㎞で、上海⇔東京間が約1500㎞で、中国大陸と第一列島線間が約700-900㎞ぐらいです。島国だからと日本は「関係ない」と考えるのは大きな間違いです。

PIVOTによるYouTube番組「ウクライナで見た、最新ドローン兵器」(約33分)
(解説者のウクライナ訪問が2025年秋で、話が既に古い部分があり注意が必要ですが・・・)

同じKatie Livingstone記者による3月3日付記事
「ウクライナ最前線で不可避な無人化進行」→https://holylandtokyo.com/2026/03/03/14057/

ウクライナとドローン関連記事
「目標撃破の8割が無人機で」→https://holylandtokyo.com/2026/01/30/13822/
「米企業はウで試験し備えよ」→https://holylandtokyo.com/2025/09/09/12705/
「クモの巣作戦」→https://holylandtokyo.com/2025/07/14/12101/
「米専門家がクモの巣作戦を」→https://holylandtokyo.com/2025/06/06/11771/
「音響ドローン探知」→https://holylandtokyo.com/2024/10/24/6355/

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