トランプ発言「核実験を再開する」を学び考える

大統領の29日発言に関し次期米戦略軍司令官候補者が議会で
本件に関する基本事項・概要をメディア報道から整理

追加速報

エネルギー長官・・・「(大統領が言及したのは)核爆発を伴わない臨界前実験」

11月2日、ライト米エネルギー長官が「FOX ニュース」の番組に出演し、トランプ大統領が
10月29日のSNS発言と30日の大統領専用機内での発言で言及した「核兵器の実験(再開)」
は、核爆発を伴うものではないと補足説明しています。

ライト長官は具体的には、「我々が話しているのはシステム試験のこと。いわゆる臨界前実験(爆発に至らない、爆発前段階に関する実験)で、核兵器の他のすべての部分が正しく機能し、核爆発を起こすことができるかのテスト」、「実験は新しい(核爆弾)システムの一部を対象に、従来のものよりも優れていることを確認するもの」、「(核爆弾)システム(全体の一部)の試験」との表現で語っています。

そして更に専門用語が理解できないメディア記者からの、「核実験場がある西部ネバダ州の住民がきのこ雲を見ることがあるのか」との質問には、「そうした心配はない」と答えています。

また、米国は 1992年以降、核爆発を伴う実験を行っておらず、臨界前核実験については1997年から計34回行っており、直近ではバイデン前政権が2024年5月に実施しているとのこと。
//////////////////以下はオリジナルの11月4日付記事////////////////////////

トランプ大統領が10月29日の習近平との会談直前にSNS上で「対等な立場で」「核兵器実験を開始する」と発信し、同30 日にアジア歴訪から帰国途中に大統領専用機内で「米国は他国より多数の核兵器を保有しているが、核実験を何年も前に停止(最後の爆発試験から 33年経過)し、今は行っていない。しかし、他国が核実験を行っている以上、我々も核実験を行うのが適切」と発言したことが、

米軍の核兵器運用を担当する次の米戦略軍司令官(Strategic Command commander)候補の同コマンド副司令官 Richard Correll 海軍中将に対する上院承認質疑の場でさっそく取り上げられ、軍人として回答可能な範囲で対応していますので、10月30日付 DefenseOne 記事が掲載した、同中将議会証言内容や民主党と共和党の議員の反応とともに、同記事が紹介する関連情報をご紹介します。

米国の核実験に関する事実関係や一般事項
●大統領は30日に「試験場を保有しており、細部は発表されるだろう:We have test sites, it will be announced.」と述べたのみで、いつ、どこで、どのような試験を行うのかについては不明確
●米国内で核実験実施可能な場所は、ラスベガスの北西約 90kmの「Nevada National Security Site」1か所のみ

●Correll中将は議会証言を補足する提出書面で、「フルスケールの核兵器実験を必要とせず、保管核兵器の品質を保証可能な、理論的裏付けに基づく備蓄核兵器管理ブログラム (Stockpile Steward ship Program)を信頼している」と説明
●2024 年にロスアラモス国立研究所の核兵器専門家は国営ラジオで、「核実験の費用と労力と時間負担をかけてまで、確認すべき核兵器に関する疑問は無い」と語っている

民主党議員の意見
●米国は爆発実験なして核兵器の安全性と信頼性を確保可能な備蓄核兵器管理ブログラムを有し、このブログラムはスパコンによるシミュレーション、非爆発実験、そして物理学理論に基づいている。我々は敵国よりも備蓄核兵器の信頼性確保面で優位に立っている
●米国は核実験から新たに得るものはほとんどなく、核実験の再開は、核拡散防止に向けて何十年も苦労して勝ち取った進歩を犠牲にする
●ネバダ核実験場は、1951年から 1992年にかけ、米国の大部分の核爆発実験が行われ、ネバダ州は今もその影響に苦しんでいる

共和党議員の意見
●一定に基準に基づく定期的な検査は、米軍に対する極めて妥当な要求だ。核兵器であれ通常兵器であれ、あらゆる実験は利点をもたらし、決意と抑止力の強いメッセージを送ることもできる
●前政権下では、全く逆の効果を生んだ。バイデンが中露との緊張が高まるのを避け、ICBMミニットメンIIの定期発射試験までも中止してしまったからだ

米戦略軍司令官候補の Correll 海軍中将の証言概要
●司令官に承認されれば、私の任務は軍事的助言を提供することであり、ICBMの試験であれ、核兵器の保証関連試験であれ、あらゆる試験やテストに関し情報を提供し、委員会や政策担当者と協力する
●特に核兵器実験についてデータに基づいた助言をご希望であれば、ご希望に沿った情報提供をお約束する。なお関連情報は機密扱いであり、関連情報を扱うことが可能な特別上院会合の開催をお願いしたい

●ロシアや中国の反応を予測するつもりはない(私の任務ではない)(would not presume to predict a response on the part of Russia or China)
●戦略軍司令官は管轄下にある兵器の精度と有効性の維持に関し責任を有しており、その維特に関して専門家を投入して必要な試験や分析を行い、目的を達することが司令官の任務である。私は常にデータに基づき、幸直で誠実な助言を提供してきたし、その姿勢は今後も変わらないし、抑止力の維持に関し不可欠な要素である
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トランプ大統領の「start testing our Nuclear Weapons」「We have test sites」発言が、具体的に何を意味するのかは「it will be announced」事ですから、発表を待つしかないのですが、

民主党議員や米戦略軍司令官候補の Richard Correll 海軍中将が言及している、信頼に足る「備菩核兵器管理プログラム(Stockpile Stewardship Program)」が存在するのであれば、トランプ大統領が言及した核実験は、共和党議員が言う「決意と抑止力の強いメッセージを送ること」が目的のものとなるのでしょう。

核実験関連の記事
「核兵器あれこれ」https://halylandtokyo.com/2023/08/02/4916/
【上記記事内のエピソード一例】→1951年から 1963年の間に、ラスベガスから約60NM離れた核実験場で計200回の核実験(3週間に一度の頻度)が行われたが、核実験によって発生する「キノコ雲」がラスベガスから視認できたので、ラスベガスは「Atomic City」の名で町を宣伝し、カジノやホテルは「核実験キノコ雲見学」を売り物に観光客を呼びこんだ

「米国の備蓄核兵器に関する一考察」https://holylandtokyo.com/2011/03/06/9644/
設計寿命を大幅に超えた米軍備蓄核兵器の課題を分析した防衛研究所一般課程学生(女性1等空佐)の 2011年の卒業論文(優秀賞受賞)の紹介記事

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