対中国作観で圧倒的に不足する輸送能力補完を狙うも
C-17級の輸送量を海上離発着可能な機体で実現を2年間検討も
1社の提案に絞り実行可能性を煮詰めた「Liberty Lifter計画」終了
「Liberty Lifter計画」は、対中国作戦を支える輸送力の圧倒的不足をカバーする手段を検討する一環で開始され、各種報道から推測すると、海上離着除可能な大型輸送機で、C-17輪送機並みの搭載量100トン程度(M1前車69トン、フル装備兵士100名、担架の患者34名)や、巡航飛行高度3000m程度ながら、高度30m以下の海面近くを飛行すると大きな揚力を得られる「海面効果」利用可能な機体で、低コストの長距離輸送機を追求するプロジェクトだと言われていました。
また荒天下でも活動可能な能力も追求しており、通常の小型ポートの運用限界である「sea sate 3(波高4 feet)」より厳しい、「sea state 4(波高8 feet)」で離着水可能で、補給艦から艦艇への洋上補給が困難になる「sea state 5(波高13 feet)」でも海上活動が可能な能力を狙っているとも報じられていたところでした
具体的には、DARPAが正式名 「Liberty Lifter seaplane Wing-in-Ground Effect」として企業提案を募集し、2023年2月に2社(「General Atomics」と「Aurora Flight Sciences」の2社)と「Phase 1」契約(10億円程度)を結び、1年をかけ技術成熟検討を行わせて機体設計やデモ機製造の計画を提出させ、審査を経て「Aurora」選定しました。
その後、Aurora社と約15億円程度の「Phase 2」契約を結んで更に機体設計や細部仕様を煮詰め、DARPAと同社はシミュレーションと縮小模型テストで海上離着陸飛行機の技術設計を実証し、飛行機に使用する新しい技術と材料サンプルの耐久試験も行った模様です。
構想では、その後搭載量C-130程度のデモ機製造を行い、最終的には搭載量がC-130の約4倍のC-17輸送機レベルの機体として、米軍の「どこかの軍種」と連携し、2027年末から28年初の初飛行に向け開発を進める計画で進められてきましたが、今回「デモ機製造に進まない」決定がなされたということです
DARPA の担当責任者は決定に関し、
●荒波の中でも離着陸可能な飛行艇が製造可能であると確認できた。その際、海洋建造技術と複合材(maritime building techniques and maritime composites)を用いることで実現可能であることが判明した。
●研究結果は、当初の仮説を裏付けた。つまり、現在よりもはるかに安価に、はるかに多くの場所で飛行可能な航空機を製造可能と確認できた。
●(一方で、)海洋建設と航空機認証を融合させるためにさらなる取り組みが必要だ(needs to be done to blend maritime construction with aircraft certification)
(記事によれば、DARPA は現在、産業界や国防省内の関係部署と協力し、これらの技術を他の形で活用する方法を検討中とか・・・)
Aurora 社は決定に際し、
●設計と革新的製造技術の実現可能性を示すことができた。
●予備設計を通じて達成した技術的進歩を誇りにしており、これらの知見を将来のブログラムに応用していく
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米海軍と米空軍が協力を拒否したのが、計画中止の主原因ではないかと邪推しております。
2023年2月に「Phase 1」契約が発表された際に、DARPAが今後の進捗をみて「少なくとも一つの軍種とチームを組んで」と微妙な表現で説明していましたが、運用担当軍種が海か空かぼんやりした、つまり、陸上飛行場が母基地になるのか、湖や海に面した港が母基地になるのかが判然としない、大いに議論が紛糾しそうな輸送アセット開発でした。
また、機体が完成しても、目的地での荷下ろしや陸揚げ後の貨物の輸送が相当に難しそうで、機体の「革新」はありそうでも、現場が苦労しそうなアセットで、「受け入れ可能性」が「?」との印象でしたので、きもありなん・・・との感想です
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「候補 1社に絞る」→https://holylandtokyo.com/2024/05/31/5910/
「大型水上離着陸機の候補2社発表」→https://holylandtokyo.com/2023/02/15/4268/
同じ流れの検討
「艦艇攻撃用に改良のGPS誘導JDAM試験」→https://holylandtokyo.com/2022/05/13/3219/
「対中国にC-130用水上着陸フロート開発」→https://holylandtokyo.com/2021/10/13/2296/

